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第十二話 典型的ブラコンお姉さん

このゲームを始めて数週間経った。レベルも順調に上がり、風景のリアルさに驚嘆しながら進めて行っている。

風の噂だと、攻略組とやらが西方面のボスを突破したらしい。予想通り敵が状態異常の攻撃を多く持っているらしいが、その分素の強さが微妙だという。私は保留だ、状態異常は好きじゃない。その先には小さめの村と、先のステージ…砂漠があったらしい。ますます行きたくない。


かくいう私は、現在ある問題に直面している。


実は…防具がまだ初期装備だったのだ。






「なぁ…ハクアってどこか抜けてる?」

「………うっさい」


前に知り合った唯一のフレンドであるアクトと一緒に商店街区画を歩いている。何でも、良い装備を作ってくれる人を紹介してくれるらしい。


「………当たらなければどうということはない」

「どこの赤い三倍の人だよ…それで瀕死になった人は誰だっけ」

「………知らない」


つい目をそらす。自分は回避が得意な上に、まだ敵の攻撃が遅いのだ。前にうっかり足を滑らせて攻撃を受けなかったら、しばらく気が付かなかった気がする。

…よく考えたら、直撃を受けたのはあれが初めてだった。大体の敵の攻撃はかすっただけで、金の馬のダメージは風圧だったし。


「まったく…おっと、ここだ」


他愛ない会話をしながら歩いていると、とある建物の前で立ち止まった。随分裏道にあるが…ここが例の人が経営している店らしい。

「華林党」…おいしそうな名前だ。

まず知り合いのアクトが入るべく扉を開く。


「すみませーん…」

「アックトちゃぁーん!!!」

「ひでぶっ!?」


…何か綺麗なお姉さんがアクトに飛びつき、そのまま一緒に吹っ飛んで行った。

その地点で悟った…あ、この人も濃いな、と。


「もう、ゲームの中でくらい遊びに来てくれたっていいじゃない」

「だぁー!!引っ付くな姉貴!!」

「不足してた弟分を補充してるのよ~」


驚いた、どうやら姉弟らしい。しかも典型的なブラコンと見える。

…何だかいたたまれないけど、とりあえずジト目でアクトを睨む。


「………私という者が居ながら。別の女性とイチャイチャ」

「違う、変な事言うな!それにからかってるだろ、顔見れば分かるぞ!!」


…なんと、彼には私の表情が分かったらしい。何が起きても無表情が崩れない事で有名な私の表情を、だ。会って数日なのに…さすがは主人公体質だ


「むふふ~…あら?アクト、また女の子捕まえてきたの?」


ようやく私に気付いたのか、意識をこちらに向けてくる。アクトには抱き着いたままだが。

…やっぱり「また」なのか。きっと属性持ちの個性的な子が揃ってるに違いない。いつか会いたいものだ。


「………ハクアです」

「あらご丁寧にどうも~、私はカリンよ」


見た目は蒼くて長い髪の「ないすばでぃ」な女性だ。

…会う女性は皆羨ましい体型をしている。と言っても知り合ったのは二人だけだが。

無論体型を変えている可能性はあるのだが、自然な動きがそう感じさせない。それに勘も言っているし、おそらく現実でもこんな体型なのだろう。

…別に妬ましくはないが、ネタとして睨みつけておく。どこをとは言わないが。


「あらあらうふふ…で、アクトちゃん。この子が依頼人?」

「ちゃん付けはいい加減やめてくれよ…そう、そいつが初期装備のまま忘れてた間抜けな…あぶなっ!?」


いらない事を言ってそうだったので、ナイフを顔に向けて投げる(無論カリンさんんに当たらないように)が避けられた。実は先日投擲スキルを獲得したのだ。戦闘に本格的に組み込むのは難しいので、ぶっちゃけネタ用だ。


「ふむふむ…良いわ、交渉に移りましょう」


少し雰囲気が真面目になる。

…いい加減アクトを離してあげたらどうだろうか







「なるほど、回避型の剣士ね…となると、AGIにボーナスが付くのがいいかしら?鎧はダメね。でも近接だから、ある程度の防御も欲しいわね…」

「………金馬の素材ならある」

「あー…あれは軽防具には使いづらいのよね…」


現在、素材とにらみ合いながら相談している。基本は手持ちに残っている素材を持ち寄るが、足りない分はお金を払えばくれるのだそうだ。


「………ブラックウルフなら」

「始まりの草原のエネミーだから、性能はどうしても低くなっちゃうけど…大丈夫?」

「………問題ない、攻略を急いでもいないから。」


別に自分は高性能の防具を求めてはいない。攻略組でもないから、徐々に強くしていけば良い。それに、防具にはあまりこだわらない。いざとなれば、肉壁さんに同行してもらえば良い。

何を感じ取ったのか、アクトが訝しげな視線をよこしてくる。気にしない。


そんな考えをしている間に、カリンさんは使う素材も決めたようだ。

製造においては、レシピとは別にいくらか素材を追加したら、性能が変わったりする。色々ぶちこめば良いわけではなく、相性が大事なんだとか。

…こんな制御が難しそうなシステム作った運営さん本当にお疲れ様です。

さて、そうなれば最後は値段交渉だ。


「………値段は?」

「うーん、そうねぇ…アクトのお友達らしいし、割引価格でこれくらいはどうかしら?」


提示された値段は…正直破格だ。完全な生産職は、主にこの製造行為で稼ぐのだから、普通はもっと高いのだけど…お友達価格って言ってたし、お言葉に甘えよう。


「………お願いします」

「うん、交渉成立!可愛く仕上げてあげるわよ!」

「………目立つのは止めてください」

「え~、絶対可愛いのに~…」


実は、見た目は製造時にある程度なら弄れたりする。素材次第ではフリルとかつけまくってフワフワにするのも可能なのだ。絶対嫌だけど。


「わかったわ…明日を楽しみにして頂戴ね!」

「期待してていいぜ、姉貴は結構レベル高いからな」

「………ありがとうございます」


作ってくれるカリンさんと、紹介してくれたアクトには感謝しておかなければならない。お礼を言って、頭を下げた。


その後はまたカリンさんがアクトに抱き着いたり、今度はこっちに抱き着いてきたりと色々騒がしかったが、防具の問題は無事解決したのであった。


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