第十話 新たな出会い、初めての共闘
さて、恒例の周囲の地理説明だ。
ここグランセル王国からは、東西南北4つのルートがある。
南は始まりの草原とはじまりの街への道…自分が通ってきた道だ。
東は森林地帯だ。おなじみゴブリンなどが出るらしい。
西は湿地帯。毒沼とかあるらしい。状態異常が非常に怖い。
北は山岳地帯。なんとゴーレムなどもいるらしい。おそらく一番厳しい地帯だ。
難易度で言うと、北>西>東>南と考えるのが無難であろう。ちなみに南以外はまだボスも見つかっていないらしい。
…今の所北はスルーだ。こっちは物理攻撃しか持っていないので、情報通りなら雑魚にすら苦戦するだろう。となると西か東になるのだけど…
「………東」
何となくテンプレなゴブリンを見たい気もする。西は情報をほとんど持ってないので、後回しにしても良いだろう。
そう思い、前回作ったロングソードを握りながら西へ向かうのだった。
視点変更 とあるプレイヤー
「くそ、くそっ!」
「ゴブ、ゴブッ!!」
現在、俺は絶体絶命な状況に陥っている。
「よりにもよって一人の時に、こんな数に囲まれるって…!」
ここはグランセル王国から東に行った場所にある「魔の森」だ。ゴブリンなどの妖魔が多く生息している。こいつら一体一体はそんなに強くない…が、こうも群れられるときつい。
軽く見渡しただけでゴブリンが10…いや20はいるかもしれない。
「やるしかない、か」
やるだけやろう、ただでデスペナルティを受けるのは癪だ。
そう覚悟を決め、剣と盾を握りなおしていると…
「ゴブゥッ!?」
「……え?」
突然ゴブリン集団の一部が吹き飛んだ…と思ったら、小さな人影が高く飛び上がり、近くに着地した。
その人物は白く長い髪をたなびかせた無表情な少女で…剣を振って呼びかけてきた。
「………困ってるみたいだから、手伝う」
「え?……お、おう!助かる!!」
ありがたい…この状況で助けに入ってくれるとは!
これは負けるわけにはいかないな!
気合を入れ直し、名も知らぬプレイヤーとの共闘が始まった…
視点変更 ハクア
…何だか一人で囲まれてるプレイヤーがいたので、助太刀に入ることにした。何となくだ。
「………せい」
「ギエッ!?」
後ろから来たゴブリンの攻撃をかわして斬り倒す。相手も強くなってはいるが、こっちはボスをソロで倒したのだ。これくらいはどうとでもなる。
もう一人の方はというと…
「【挑発】!こっちだ!!」
盾持ち片手剣のタンク型戦士のようだ。敵のヘイトを集める「挑発」というスキルで、壁になってくれている。攻撃力も大分ありそうだし、壁専門ではなく併用型だろうか。スムーズな動きを見るに、結構パーティー戦慣れしているようだが…
「………何故ソロでこんな囲まれて」
「知らないよ!気づいたら囲まれてたんだ!」
「………そう、【ソニックブレイド】」
先日手に入れた斬撃を飛ばす新しいスキル「ソニックブレイド」であちらに注意が向いたゴブリンを2体まとめて倒す。
うーん…ここは森の中でも結構浅い場所だ。故に結構弱いゴブリンしか出ないのだけど…たまにこうやって大きな群れに遭遇しちゃうこともあるのだろうか。そして引き当てたこの人はかなり運が悪いと見える。そう言ってる間に、自分の周りの敵は片づけた。
「おっしゃあ、これで最後!ハイスラッシュ!」
どうやらあちらも片付いたようだ。初めての他プレイヤーとの共闘は、意外とあっさり終わった。




