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会議 授業中にて

 校庭に集まった飼い主および妖獣の皆さんは、事件の首謀者が泣きながら逃走してしまったので、ぞろぞろと校門から出て行く。

 そして、残ったのは、目留駈高生徒とそのペットだった妖獣たち。

 もう始業のチャイムは鳴ってしまったので、妖獣たちを家に置いてくる時間などない。

 ということで、緊急措置として、体育館に妖獣たちを集め、待機させることになった。

 集まった妖獣たちを見て目を丸くしているポン子に、


「ここでおとなしくしているんだぞ」


 と念を押しておく。


「わかった」


 とこっちを向かずに流すように返事をするポン子。

 おおかた遊び相手がたくさんいる、とか思っているんだろう。

 なにせ、ざっと見積もっただけでも80は超える妖獣がいるし、体育館ならこれだけの数がいても、余裕で走り回れるだろうしな。

 まあ、ほどほどにしといてくれよ、ポン子。

 これだけの数がめいめい好き勝手な行動をとれば、収拾するのは至難の業だからな。と妖獣たちを見渡しながら苦笑いしていると、あることに気がついた。

 

 ミーちゃんがいない。

 そういえば、あの騒動の中、変化したとき以外は全然存在感がなかった。一体どうしたのだろうか。


「演説の最中に先生たちが保健室に運んで行ったわよ。見てなかったの?」


 見てないな。いったいどのあたりだ?


「ちょうど、りょー君が感極まって、ポン子ちゃんに抱きついた、感動のシーンのあたりよ」


 意地悪い笑顔で教えてくれる香苗。

 ああ、あの時ね。そりゃ見てないですわ。って、保健室? どこか悪いのか?


「私も最初は心配だったんだけど、運ばれてるときに顔見たら、気持ちよさそうに寝てたわよ」


 さすが、ミーちゃん。あれだけのことがあっても眠り続けるとは、大物だな。


 さて、ポン子を置いてくることに色々と不安があったが、授業が始まったらそうも言ってられない。

 1時間目はよりによって国語で、俺は昨日の騒動のせいで宿題をやってない。学期はじめに提案された席替えによって、俺の席は窓際の一番後ろになったのは運がよかった。目立たないようにして、当てられる前に片付けなくては。

 どうせみんな同じだろうと思ってたのに、香苗は余裕そうだし、他の大体のやつも問題なさそうだ。

 俺と同じ境遇のはずの将弘はすでにあきらめたようで、俺に話しかけようとこっちを向くし。(不幸にもやつは俺の前の席だ)

 おい、目立つだろ、あてられたらどうするつもりだ!


「大丈夫、そのときは見せてもらうから」


 と将弘はとなりの女子のノートを覗いたが、サッと隠されてしまった。


「ま、なんとかなるだろう」


 肩をすくめて、本格的に俺と話す体勢に入る。のんきなもんだ。その精神だけならすでに政治家クラスだな。


「そりゃどーも。それで、例の神様のことだが」


 と将弘にしてはまじめな顔をする。

 めるくのことか。何かしら力はもっているみたいだが、そんなに警戒しなくても良いんじゃないか?  今日の演説だって別に厳重警戒態勢ってわけでもなさそうだったし。


「あいつを刺激しないように、私服警官が何人もまぎれてたんだよ。なんせ警察犬も妖獣化してたしな」


 なるほど、警察犬もペットとみなされたわけか。よく分からんな、神様の基準は。


「それで、俺はあいつについて色々調べてみようと思うんだ」


 おい、危ないことするなよ? おまえになにかあったら親父さん悲しむぞ?


「まあ、調べるといっても図書館や役所にある資料をあさってみるくらいだよ」


 なら大丈夫か。

 それにしてもやけに熱心だな。まあ、親父さんの役に立ちたい、と思う気持ちは立派だと思うが。


「それだけじゃない。俺の大事なアンジェラミアのためにも、この事態は一刻も早く解決しないと」


 どういうことだ? 将弘は妖獣化したペットを元に戻したいのか?

 俺はどんな姿だろうが、ポン子はポン子なのだから、別にどっちでもいいと思っているのだが。


「よく考えてみろ。もうすでに情報統制がなされているんだ。いずれ妖獣の市外への移動は禁止されるだ

ろうし、ひどくなれば外出禁止令が出るかもしれない」


 なるほど、確かにポン子たちが外を歩けなくなるのはかわいそうだな。


「それにもし、国のお偉いさん方が妖獣を危険と判断したら、一緒にいられなくなるかもしれないぞ。親父は一市長だからな。そんな結果になったら止める権限は持ち合わせてないし」


 そんな深く考えていたのか。俺はてっきり女の子がたくさん見れてラッキー、ぐらいにしか考えてないかと思ってたよ。(超失礼)


「いや、それとリスクを天秤に乗せて、目から血を流す思いで決断したんだけどな」


 なんだかんだで将弘は将弘だったな。目から血を流す思いて(汗)

 だがまあ、ポン子と離れ離れになるのは絶対に嫌だからな。俺も何かできることがあれば協力しよう。


「お、やる気になったか。お前には適任な役があるぞ。それは……」


 それは?


「妖獣が無害であると証明することだ!」


 ……ん? 妖獣を元に戻したいんじゃなかったのか?


「それは最終防衛ラインだ。最悪の事態から話せば、お前も乗ってくれると思ってな」


 なるほど。将弘にしてはなかなかの策士っぷりだ。


「まあな。んで、妖獣が無害だと証明できれば、元に戻す必要はない。アンジェラミアは、あの、体の、ままだ」


 ええい、まじめになったりエロ路線に走ったり、相変わらず忙しいやつだ。それと興奮するな、うっとおしい。ちょっとまじめだと思ったらすぐこれだ。

 だいたい、簡単に言うがそんなこと易々と出来るわけが……。


「いや、お前はただ妖獣と仲良くしてくれるだけでいい。いざというときに言うことを聞くようにな。お前、動物に好かれるタイプだから、なんとかなるだろ?」


 要するに、俺に妖獣たらしをやれと?

 んで、姿が変わっても今まで通りちゃんと人間の言うことを聞きます、って証明するのか。

 なんかやだなぁ。せっかく言葉が通じるようになったんだし。


「いやべつにみんな友達とか、みんな彼女とかそういう関係押しでも良いぞ」


 いや、みんな彼女て、モフトとかオスだぞ?

 まあ、妖獣は家族だ、とポン子と俺の関係を見せて主張するぐらいならできそうかな。


「ほんとポン子ちゃんのこと好きだな。姿も変わったことだし、いっそ付き合ったらどうだ?」


 ちゃかすな将弘。ポン子は家族だからそんなんじゃないし、第一ポン子は三歳だぞ?

 犯罪だろフツーに。


「それは犬のときの年齢だろ。人間の歳に換算すればちょうどいいじゃないか。うちのアンジェラミアは七歳だが換算すると7×5で三十五歳くらいだぜ? ちょうどあそこのおばさんくr」


「あら、ずいぶんと楽しそうな話をしているわねぇ」


 しまった! 話に熱中しすぎて周囲の警戒を怠っていた。

 目の前には、笑顔ながらもその中に般若が見て取れる国語教師 (さんじゅうごさい)がいつの間にか立っていた。

 恐るべき地獄耳。しかし、これは……まずい。


「それだけ余裕があるなら当然宿題は全部済んでいるんでしょうねぇ? じゃあ全部答えてもらおうかしら? お わ か いお二人さん?」


 知っている、俺達が宿題が済んでいないこと知っている上で言っているぞ、このババア。

 あ、いや、心の中とはいえババアとか汚い言葉を使うとポン子がまねするからな。訂正しないと。

 


 Take2

 知っている、俺達が宿題が済んでいないこと知っている上で言っているぞ、このおば……じゃなかった国語教師は。

 ってこんなこと考えている場合じゃない!

 どうしよう! だれか、この状況から俺を救ってくれるやつはいないのか!

 ……いませんよねー。おとなしく雷が落ちるのを待つしかなさそうだ。


 俺が覚悟を決め、国語教師 (さんじゅうごさい)が裁きの雷を落とすべく口を開こうとしたその時、教室の戸を何者かが勢いよく開けた!


 ポン子だ!

 おお、俺のピンチを察知し、駆けつけてくれたんだな!本来はやってはいけないことだが、今回は特別に許そう。よくやったぞポン子!

 おかげで、教室全員(国語教師さんじゅうごさい含む)の注目がポン子のほうへ向いた。

 これで、後は何か教室を抜け出せそうな口実を作ってくれれば……。


「ご主人!」


 真剣な顔のポン子。

 これは何か事件があったに違いない。

 いやー、すいませんね先生。宿題はやってきているのですが、いかんせんポン子が大事な用事があるみたいなので。

 ほら、ポン子どうしたんだい? 言ってごらん?(気の利いた口実を)


「おしっこいきたい!」


 もじもじしながら緊急だと訴えるポン子。

 うん、いやまあ、抜けられそうだからいいんですけどね。

 ……かくして教室内は爆笑の渦に巻き込まれ、俺は本日二度目の顔から出火タイムを味わうこととなった。


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