表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/24

首輪はどこにつけるもの?

「い゛や゛だぁぁぁ! ごしゅじん、すてないでぇぇぇ!」


 目から次々と涙をこぼし、口からはとんでもないことを叫ぶポン子。

 この状態じゃ、誤解だと言ったところで聞いてくれそうにもないぞ。


「もうわがままいわないからぁ! いうことちゃんときくからぁ!」


 ポン子は懺悔の言葉を口にしつつ、さらに大きな声で泣きじゃくる。

 まいったな、どうすれば泣き止むんだ? いないないばぁか? さすがに子ども扱いしすぎか。 じゃあ、おやつで釣るか? しかし今何も持ってないしな。 ワイロ? でんでん太鼓?


【ポン子が】泣いてる妖獣を泣き止ませる方法を教えろ下さい part3【泣き止まない】


 だめだ、混乱してわけわかんなくなってきた。


「もうごしゅじんのくつしたうめたりしないからぁ!」


 いったいどうすれば! って、ん? なんだって? 

 ポン子の言う事に耳を傾けてみると、まだ罪状告白は続いていたらしい。

 どうやら俺が知らない余罪が、他にもいくつかあるみたいだ。とりあえず、この場は流しておくが、帰ったらじっくり問いただす必要がありそうだな。


 そう、帰ったら……帰った……ら?


 俺はあたりを見渡すことで、ようやくここがどこだか思い出した。

 そうだ、ここは公園だ。そんなところで大声を出せば、当然ご近所さんや道行く人の目につく。


「お? 別れ話か?」

「男のほうが女の子捨てるみたいよ」

「ママー、あのひとたちなにやってるのー?」

「しっ、見ちゃいけません」


 野次馬連中はこちら見ながら、ひそひそと好き勝手なことを言っている。

 今日は本当によく人の目を集める日だ。もちろんいい意味ではなく。

 とりあえずこれ以上好奇の目で見られるのはごめんだ。ポン子、この際泣き止まなくて良いから場所を変えよう。

 ほら、そんな腕につけた首輪なんかいじってないで。

 ……ポン子さん? その首輪をどうするおつもりで?


「くびわもちゃんとつけるからぁ!」


 ギャー!


 ポン子は、首輪を本来あるべきところ(人間的にはあってはならないところ)につけると、泣きながら訴えてくる。

 人前で! 首輪!


「おい、女の子に首輪つけさせたぞ!」

「ママー、あのひとn」

「ダメよ! あなたにはまだ早いわ!」


 もうだめだ、死にたい。ってか、ママさんは見てないで、子供つれてさっさと帰れよ!

 こうなったら、多少なりともインチキな手を使うしかないだろう。右手のヒーリング効果を使えば、ポン子も落ち着いてくれるはずだ。


「大丈夫、捨てたりしないから。だから泣きやもう、な?」


 頭を撫でながら、優しく語り掛ける。効果はばつぐんのようで、ポン子は、徐々に落ち着いてくる。


「……ほんと?」


 ポン子は目に涙をためながら、上目遣いで俺を見る。


「あたりまえじゃないか。大事な『家族』なんだから。ポン子の聞き間違いだよ」


 家族の部分を強調する。ここが本来一番言いたかった部分だしな。

 ポン子はしばらく潤んだ瞳で俺を見つめていたが、俺が嘘を言っていないと判断したのか、Tシャツの袖で目をゴシゴシとふいてから、


「じゃあ、だっこして」


 とこれまたとんでもない要求をしてきた。

 なぜ今だっこ? 犬のときだって、だっこして家までつれて帰ったことなんてないじゃないか。それに、もうわがまま言わないんじゃなかったのか?


「きょうだけ! きょうだけだから!」


 体をくっつけたり、袖を引っ張ったりしながら駄々をこねるポン子。体をくっつけるのはアンジェのまねか? いけないぞ、そういう悪いことばかり覚えちゃ。

 とはいえ、これまただっこするまで言う事聞かなそうだしなぁ。

 そうだ、妥協案としておんぶを提案しよう。おんぶならそこまで恥ずかしくないし。

 まあその前に……。

 俺は野次馬連中に一睨みくれてやる。野次馬連中は蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。ふう、とりあえず、これにて一件落着!(某お奉行風に)



「すぅ……すぅ……」


 俺の背中でポン子は静かに寝息を立てる。

 おんぶしてあげた直後は、喜んでじたばたしていたが、すぐにおとなしくなり、しまいには寝てしまった。妖獣になって、慣れない体で暴れまわって、泣いたり笑ったりして。そりゃ疲れるよな。


「ごしゅじん……ポン子は……ポン子だよ……」


 ポン子は気持ちよさそうな寝顔をさらしながら、むにゃむにゃと寝言を言っている。


「人の苦労も知らずに気持ちよさそうにねむっちゃってまぁ」


 愚痴をこぼしてみたものの、自分の顔がほころんでいるのは、自分でも分かる。

 まあ、家族だからな。これくらいの苦労は屁でもない。

 それに、さっきの寝言を聞く限りでは、ポン子も今の自分の姿に不安があったみたいだし。

 そう考えてみると、『ご主人じゃない』に過剰反応するのもわかるし、だっこをせがんだのもなんとなくわかる気がする。

 たぶん、俺の体温を感じることで、俺がポン子をどこかに置いてったりしないことを、実感したかったのだろう。

 まったく、ポン子が不安を抱えていたのに、それに気付いてやれなかったなんて。

 これからは、もっとポン子のことちゃんと見てやらないとな。


 よし、今日はお詫びとして晩飯を奮発してやろう。といっても、買い置きのもので何か作るか、出前を取るかの二択なんだよな。今、ポン子を置いて、買い物に行くわけにもいかないし。

 買い置きは冷凍食品しかないしなぁ。ご飯とおかずを山盛りにしてあげればいいか? でもそれだと栄養バランスが……。


「ようやく帰ったか、待ちくたびれたぞ」


 俺の晩飯考察は、家の前に立っているちびっ子に中断された。

 

 犬神 めるくだ。

 

 どうやら神様は、今日の厄介事をこれで終わりにはさせてくれないらしい。はた迷惑な神様だ、と思ったが、俺はめるくを促し、家に入れてやることにした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ