お前、俺の事見えてんの?
転校生が来た。
それだけの、よくある日常のはずだった。
ただ一つだけ違ったのは——
そいつに、見えてはいけないものが見えてしまったこと。
まあ、だからといって何かが劇的に変わるわけでもない。
……たぶん。
「みんなー、座れ。チャイム鳴ってんだろー。」
そう言いながら、担任がいつもより機嫌よく朝礼を始める。
今日も浅田先生は美しい……。
すると扉がピシャリと開き、クラス全員の視線が彼に集中した。
扉を勢いよく開けた割におろおろと扉を閉め、ぶつぶつと謝罪の言葉を述べている。
「今日から転校してきました。真壁と申します。これからよろしくお願いします。」
そう言い彼は100度の角度でお礼をした。
やばぁ……。
みんなくすくすと笑いを堪えながら拍手を送り彼の様子を伺っている。
「じゃあ、その空いてる席に座れ。」
担任が指した指の先には俺がいた。
……は?
「え、そこには人が座ってますよね?僕の席はほんとうに、あそこですか?」
真壁はごもっともな質問を先生にした。
「何言ってるんだ。早く座れ。」
登校初日に怒られる転校生はさすがに見てられないので、俺は真壁に席を譲った。
「あの……。すみません。」
「いや、大丈夫だよ。俺、幽霊だし。」
そうである。俺は幽霊なのだ。
「えぇっ?!」
真壁はそれはとてもとても驚き、椅子から落ちてしまった。
「おうおう、何やってんだよ。大丈夫か?」
鈍臭いなぁ。こいつ。
「あぁ、大丈夫です。ありがとうございます。」
そう言い彼は困惑で顔を歪ませた。
「あ、あとお前。俺に返事すると、独りで話してるヤバいやつになるから気をつけろよ。」
これは大切な忠告だ。肝に銘じておけ。
「あぁ、はい……。すみません。」
ナヨナヨしてるなぁ。
男ならもっと胸張ってけよ!
熱くなれよ!
もどかしい思いを押し込む身体がないのだが、押し込め、窓の外を眺める。
相変わらず浅田先生は綺麗だし、毎日この時間に学校横を散歩しているおじいちゃんも健在。
うーん、今日もいい日だ。
昼休みになり、真壁が教室を離れたのでついて行ってみる。
「なんなんですかこれ!おかしくないですか、俺幽霊なんて初めて見ました。
でも、ってことはあなたは亡くなっているんですね……。」
まあごもっともな意見だ。
「うーん、そうだな、なんで俺だけ見えるか、教えてやろうか?」
そう言い放課後、広瀬家の前にまで案内した。
「結構歩きましたよー、で。ここは何かあるんですか?」
そう聞いてくる真壁を無視した。
俺は壁をすり抜け庭に転がっている俺の生身に入り込んだ。
その体で立ち上がって真壁に華麗なウインクをプレゼントしてやった。
すると真壁は
「なんですかそれぇ……。」
そう言い、泣き崩れた。
……まぁ、こんなもんよ。
頑張れ真壁。




