8話「人生は結構うまくいかない」
「早く....ミカ....」
サイクロプスの拳はかなり重いらしく、レイアの盾はみしみしと音を立てている。
「こ、腰が抜けて..」
ミカはその場から動けずにいる。
「っ!君と言うやつは!!」
レイアもかなり限界らしい今にも潰れてしまいそうだ。その姿を俺は傍観していた。なぜなら思ったよりも魔物の方が優勢だったからだ。
(さっきレイアが飛び出して行った時は魔物が瞬殺されるかと思ったが、意外とあの魔物強いんだな)
偶然殺したい相手が2人に増えたところだったので、その2人がまとめて消えてくれるのは俺にとっても都合が良かった。
(じゃあ、俺はこのままダンジョンを出て....)
出口の方向に踵を返す。するとまた俺の横を風がよぎって行った。今度はレイアではない、初心者3人組の1人が放った矢だった。
矢はサイクロプスの腕に刺さった。
「ひまり....!」
レイアが盾で守りながら言う。
「レイアさん!今のうちに!」
ひまりと呼ばれた少女が弓を構え、2本目の矢を放つ。次の矢はサイクロプスの足に刺さった。あまり効いている様子はないが。気をそらせるには十分だった。
「はあぁ!」
レイアがサイクロプスの拳を跳ね返し、ミカを抱えて俺たちのところへ戻ってくる。サイクロプスは先ほどの衝撃でひっくり返った。
「すまんな、君たち」
レイアが3人組に言う。ひまり達は照れくさそうに笑う。
「レイアさんに教えてもらったからですよ!」
その場が少し和やかな雰囲気になった...神崎ハヤトという男を除いて。
(何してくれとんじゃクソガキィィィ)
神崎ハヤトという人間の人生のなかでここまで計画通りに物事が進まないことは初めてだった。だがすぐに思い直す。
(落ち着け、神崎ハヤト...何も変わらない..このまま元の作戦を履行すれば良いだけだ...)
俺はミカの方を見て合図を送ろうとする。だが、彼女は思い詰めており、ぶつぶつと何かを呟いていた。
「私のせいで...私のせいで...」
するとひっくり返ったサイクロプスが起き上がり、ミカ達を仕留めるため向かってこようとしていた。
「ミカ!しっかりしろ!」
ハヤトの声にミカがハッとする。
「ハヤトくん....?一体何を!?」
レイアがハヤトを見る。
「ミカ、落ち着くんだ、君は何も失敗していない、君には..俺たちには目的がある...そうだろ?」
俺はミカに本来の目的を思い出させようとした。レイア達に怪我をさせ、恩を売るという作戦。
「本来の....目的...」
だがその言葉は彼女にハヤトの思惑とは違う形で届いていた。私の目的は...ペンダントを探して...違う!もっと大事なこと...。彼女の頭には約一年前の出来事が浮かんでいた。震える自分の手、自らの誤射のせいで怪我をしてしまったメンバー、治癒しきれず流れ続ける血、必死に仲間を運ぶレイア。もうそんなこと...起こさせない!
「やるぞ!ミカ!」
ハヤトのダメ押しの声により、ミカは覚悟を決める。
「レイアちゃん!」
ミカは大きな声で言う。レイアはミカを驚いて見つめる。
「私が魔法を使って、サイクロプスを倒す!レイアちゃん達を絶対に助けて、誰1人傷つけさせない!」
神崎ハヤトはミカを殴りそうになったが、自らの理性がギリギリでそれを止めていた。
結構小説を書くのにも慣れてきました。感想や反応をいただけると励みになりますのでお願いします。




