5話「作戦開始」
「断られてしまいました...」
ミカはしょんぼりし、机の木目に沿って指でなぞっている。
「レイアさんとは幼馴染で、村にいた頃冒険者にならないかって誘ってくれたのも彼女だったんです」
「ずいぶん嫌われていたようだが」
俺は先ほどまでレイアが座っていた席を見る。レイアは話が終わると他の人とさっさと出て行ってしまった。どうやら依頼があったらしい。
「その、まだ私が来たばかりの頃、一緒にパーティを組んで....私がやらかしまして、周りの人からもはっきりわかるぐらい嫌われちゃいました」
確かに先ほど2人が話している時周りが静かになった気がしていたが、話の成り行きがどうなるか野次馬が聞いていたのだろう。
「まて、ミカがそのレイアから嫌われているのは周知の事実なのか?」
「えぇ、まあ」
「そうか....」
これは使えるぞ。俺は思わずにやける。互いの仲が悪いがために依頼中もめあいになり、そしてミカが不幸にも死んでしまう。不仲が周りにもバレているなら喧嘩で死んだと俺が言っても疑われないだろう。
(完璧なプロセスではないか)
もめあいの原因になるようなことは俺にでも起こせるだろう。そしてミカが死んだことを理由に盗賊の元まで行かずに帰ってくる、完璧だ。そうと決まれば。
「ミカ」
「はい?」
彼女は顔を上げる。
「レイアを必ず仲間にしよう」
「本当にやるんですかぁ?」
ミカが杖を掴みながら俺を見上げる。
「あぁ、まずはミカ達のよりを戻さないといけない」
俺達は街の近くのダンジョンと呼ばれる洞窟に来ていた。先ほどレイア達が向かった場所だ。どうやらレイアはいわゆる初心者救済のようなことをしているらしく、今も初心者2人を連れて魔物を狩っているらしい。
「いいか?もう一度作戦を言うぞ」
俺はあまり乗り気でないミカに枝をもち、地面にダンジョンの図を描き説明する。レイアの入ったダンジョンはすでに攻略済みのため簡単に図面が手に入るのだ。だが、それを買う金があるはずもないので、売り物を見てなんとなく記憶してきた。
「まずミカが別の階層から魔物を複数連れてくる。その間俺はレイア達を尾行しそして...」
俺は光る玉を鞄から取り出す。
「この玉で居場所を知らせることが出来るんだよな?」
「そうです...」
この玉はなけなしの金で購入したものだ。どうやら冒険者から見れば一般的なものらしい。
「そしてレイア達が苦戦したところを俺達が助ける。ミカの回復魔法を使ってな。つまり、恩を売るわけだな」
我ながら即興にしては悪くない作戦だ。
「でも、そんな騙すような真似していいんでしょうか?」
「ミカ」
俺は真剣な顔で話す。俺のその顔を見てミカもハッと姿勢を正す。
「いいか?実は君はもうレイアの中では許されているかもしれない」
「へ?そうなんですか?」
「だが、向こうはそれを言う機会を見失っているだけなんだ。だから、その機会を俺たちはこれから作りに行くんだよ」
ミカはなるほどといった顔で俺を見る。今ならこいつに壺を売りつけたり、変な保険を契約できそうな気がする。
「だから、俺たちは決して騙すわけじゃない」
俺はミカの肩をガシっと掴む。
「むしろ君は友達思いのことをしているんだ!」
「友達...思い...」
いや、土地ぐらい売りつけれるんじゃないかな。俺はそう思いながらだんだんと自信に満ち溢れていくミカの顔を見ていた。




