3話「目標は大事」
冒険者登録は意外とすんなり終わった。どうやら今冒険者は人手不足らしく、俺のような身元不明の人間でも登録できた。(ミカが説得してくれた部分も大きいが)
「これが冒険者カードです!」
受付の女性から俺の名前が書かれたカードを渡される。カードには大きくDと書かれている。
「これはDランクという意味か?」
「はい、そうです!ランクはDからSまであります。ちなみに私はCランクです」
ミカは隣で書類を書きながら答える。盗賊集団"アライグマ"の討伐依頼を発行しているのだ。俺は何気なく書類を覗き込む。
「...おい」
「はい?」
ミカは書類を覗き込んでいた俺を見る。
「なんだこの報酬の部分の"後払い"っていうのは」
この世界に来たばかりの俺でもわかる。具体的な数字のない報酬など誰も食いつくはずがない。
「いや、でも今私お金ほとんど持ってませんし...」
そういえばこいつ最初に会った時に仕送りがどうこう言っていた気がする。
「まて、じゃあ俺へのお礼はどうなる」
「もちろんします!....いつか」
俺は頭を抱えた。
「ミカさん、ちょっといいですか?」
ミカが先ほどの受付嬢に呼ばれた。
「ミカさんに連絡がありまして...そのグレイスさんのパーティから脱退通告書が届いています」
ミカの顔が引きつる。
「....分りました、受理します」
ミカは小さな声で答えた。その後、受付嬢はミカを気遣うようにそっと離れて行った。ミカのペンを持つ手は震えていた。
「私、実家がスレイヴっていう田舎にあるんです。」
ミカが俺に話し始めた。
「それで2人の弟がいて、お母さんは女手一つで私たちを育ててくれたんです。でも一年前にお母さんが病気になって、それで薬代を稼ぐために私は冒険者になったんです。私にはちょっとだけ魔法も使えましたし...でも、私の魔法は弱いので、パーティからも追放されて、それで...」
ミカの目から涙がこぼれ落ちる。
「こんなんじゃダメだって思っても、どうにもならなくて、でもお金も送らないといけなくて..」
途中から嗚咽混じり、その悲しさが伝わってくる。
だが、俺は全く聞いていなかった。いや、全くというのは語弊があるか、脳の3%ほどの機能を使ってミカの話を聞いていた。残りの97%は何に使っていたかというと、ミカをいつ見限るか考えるのに使っていた。当たり前だ、初めて会った時から抜けたやつとは思っていたが、まさかここまで後先考えていないとは。だが、この世界のことはなんとなく理解した、もうこいつは必要ない。それに盗賊の元へ行くなど自殺行為に等しい、俺の命のためにもこいつは見限るべきだ。俺は薬草でも取りながらその日その日を生きていけばいい。
「ミカ、話が」
「でも!」
ミカが俺の話を遮り喋り出す。
「私、またパーティを組めて嬉しいです!だって、これからやり直していけばいいですもんね!」
「いや俺は...は?パーティ?」
「はい!もう申し込みもしておきました!あ!ちなみにパーティは三ヶ月は絶対に脱退できません!そんなことはないとは思いますが....」
ミカはキラキラした目で言う。
「勘弁してほしい」
「っ!そうですよね!ハヤトさんが脱退とかするはずありませんもんね!」
本当に勘弁してほしい。くそ、俺はこんな足枷をつけて生きていかなければいけないのか?三ヶ月もこんな足枷を...
「なあ、ミカ」
「なんです?」
ミカが聞きかえす。
「もしもの話だが、もし依頼の途中にパーティメンバーが死んだ場合はパーティはどうなるんだ?」
「あぁ、その場合は特に、あ、でも私たちは2人ですからパーティは無くなっちゃうかもしれませんね。でも!そうならないように頑張ります!」
「そうか、仕方ないよな」
俺は笑う、そうだ仕方ない、もし依頼の途中で"事故で"ミカが死んでしまっても。
「ミカ。頑張ろうな」
「はい!」
さあ頑張ろう、目標はまずこの足枷を外すことだ。
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