第一話「裏切りは基本」
生きていれば常に人からの評価がつきまとう。例えそれが口に出されていようが、一瞬頭によぎっただけでも、一度評価されてしまえばそれを覆すのは難しい。だから人は常に良い評価を、イメージを持たれようとする。だが俺に言わせてみればそういう行為は実に利己的な行為だ。結局は人からの"評価"を気にしているに過ぎないのだ。では、俺の生前の評価はどうだっただろう。そんなものはとっくにわかっている。俺の人からの評価は「人でなし」だ。だから、電車のホームから突き落とされた時も「あぁ、俺は誰かの恨みから殺されたのだな」くらいにしか思わなかった。常に他人を蹴落とし続けた代償だろうとすぐ理解できた。
目の前が少しずつ明るくなっていく。なんだ、何かおかしい。俺は電車に轢かれた、普通なら今頃ぐしゃぐしゃのはずだ。(無論今まで電車に轢かれたことなどないのだからおかしいかどうかも分からないのだが)右手で近くにあったものを握りしめる。ざらざらとした手触り、どこか懐かしい匂い、それが土だと気づくのに時間はかからなかった。「これは、、森の中か?」徐々に感覚を取り戻しつつある耳に意識を集中すると、木々が風に揺れる音が聞こえてくる。どういうことだ?俺は会社からの帰り道で駅のホームにいたはず...とにかく、ここがどこか確かめなくては。ポケットの中に何か入ってなかったか。スーツのポケットをゴソゴソしていると近くから人の声が聞こえてきた。
「ま、待ってくださぁい!もう一回!もう一回だけチャンスをくださぃ〜!」
「もう何回も言っただろ!お前は追放だよ!働かないヒーラーなんてうちのパーティにいらねえんだよ!」
どうやら男女が喧嘩をしているようだ。助かった、この際誰でもいい、とにかく自分がいる場所を把握しなくては。私はなんとか立ち上がり、声のする方へ近づき、茂みから膝立ちで覗き込む。すると先ほど何かを嘆願していた少女が男にしがみついていた。
「私田舎に病気のお母さんがいるんですぅぅ!このパーティ追放されたら仕送りとかどうするんですかぁ〜!」
少女は白髪で、まだ17歳ごろといったところだろうか。なぜこんなところに。だがそれよりも俺が驚いたのは。
(あれは、、コスプレか?)
少女は魔法使いのような帽子をかぶっており、とても普段出歩くような格好に見えない。
「残念だけど、仕方ないのよ。こっちだって命がかかっているんだから。」
どうやら2人だけでなく複数人いたようだ。落ち着いた様子の女性が白髪の少女を諭す声が聞こえてくる。だが皆一様に奇妙な格好をしている。
「もう行こうグレイス、この辺まで来れば魔物は出ない。こいつも1人で帰れるだろ。」
一番背丈のあるヴァイキングのような格好をした男がしがみつかれている剣を持った男に話している。
「あぁ、そうだな。とにかくお前はクビだ!いいな!」
「ひぅっ!」
白髪の少女は軽く突き飛ばされる。そしてそのまま置いて行かれてしまったようだった。
泣きじゃくる少女を見ていて俺ははっと我に帰る。
(そうだ、俺は自分のいる場所を知りにきたのだった。)
俺は少女に近づいていく。
「すまない、少し聞きたいんだが。」
「ひぐっ!」
別に足音を消していた覚えはないのだが、泣いていた少女は気づかなかったらしい。こちらを見て固まっている。
「ああ、別に俺はただここがどこか知りたかっただけで...別に君を傷つけるつもりは」
そこまで言ったところで突然周りの茂みからゴソゴソと音がし始める。獣だろうか、だとすればまずい最近は熊なんかに殺されたという話をよく聞く。俺は茂みの方を睨む。だが、茂みから出てきたのは人だった、ただし黒ずくめのナイフを持った集団。
「へへ、動くなよ」
その中の1人がナイフをこちらに向けながら言う。
「金目のものを置いていきな、そしたら命は見逃してやる」
「なっ!」
まさかこの令和の時代にこんな古典的な犯罪者がいるとは。警察を呼ぼうと考えたがこの状況で呼べるはずはなかった。逃げるにも集団から逃げ切れるほどの体力は今はない。そもそもここがどこかすら分からないのだ。
「おい!聞いてんのか!」
「きっ聞こえてますぅ」
少女は完全に参ってしまったらしくずっと俯いている。この少女が助けてくれるなんかことは期待できない。なら俺が自らの命を守るために取れる行動は...
「..分かった..渡そう」
俺は黒ずくめの男に告げる。
「へっ、話が早くて助かるぜ、、で?なにをくれるんだ?」
黒ずくめの男がにやけながら俺を見る。
「あぁ、俺が渡すのは...この少女のペンダントだ。」
「...へ?」
少女は俺を涙混じりに見つめる。これが俺と白髪の少女、ミカとの出会いだった。
初めまして、かなりえずきです。初めての小説投稿なので、温かい目で見守ってもらえると幸いです。感想やアドバイスなどもぜひお願いします!これからも気が向いたら投稿していきます!




