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奈落の果ての冒険譚  作者: 黒瀬雷牙
第一章 旅の始まり編
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蘇る鉄の剣

 クロスは、錆びついた鉄の剣をなんとか再生できないかと考え、古文書を読み漁っていた。やがて一つの記述が目に留まる。


「朽ちた装備は、鉱石を用いれば鍛冶屋で修復できることがある」


 その一文に望みを託し、鉄鉱石を二つと錆びた剣を手に、街の鍛冶屋を訪れる。


「こいつを直すには、あと鉄鉱石が三つ。それと手間賃が1,000Gってところだな」


 鍛冶屋の親父が鼻を鳴らしてそう言った。だがクロスの手持ちは、わずか200G。持っているアイテムをすべて売っても、死人剣士の遺骨で100Gがいいところ。到底足りない。


「……奈落で稼ぐしかねぇな」


 決意を固めてギルドに足を運び、掲示板を見つめていたところ、背後から声がかかる。


「クロスさん、奈落行くんやね?」


 振り向くと、そこにはマリーの姿があった。


「ああ。鉄鉱石を探しがてら、金も稼ぎたいんだ。マリーも行くなら、一緒にどう?」


「あ、もちろん! こっちこそ、よろしゅうお願いします!」


 他に仲間も見つからず、二人はすぐに依頼を選び、奈落へ向かうことになった。


 …………

 【死人剣士の遺骨を四つ納品】

 報酬 600G

 …………


「遺骨はひとつ持ってる。あと三つ集めればいいな」


「はよドロップしてくれたら、ええんやけどなぁ」


 奈落へ向かう道すがら、クロスはマリーに話しかける。


「マリーはどうして奈落に?」


「うちの父は神父でな、村で病気が流行ってるんよ。なんとか治したくて頑張っとるんやけど……うちは、その手助けがしたいん。『百薬の水』っていう、どんな病にも効く水を探してるんよ」


「そうか……俺は、両親を探してる。生きてるかは分からないけどな」


「……それぞれ理由があるもんなぁ」


 命を賭けて奈落に挑む者には、皆それぞれの理由がある。それが覚悟となり、深淵を踏破する力になるのだ。


【奈落 第一層 遺跡エリア】


 今回は入口からモンスターの襲撃に見舞われたが、二人は落ち着いて撃退した。


「クロスさん、動きがキレてきたなぁ」


「マリーこそ、あのメイス強いな。回復も助かってる」


「いやいや、うちなんかまだまだやよ。クロスさんのフォローがあるからやし」


 順調に死人剣士を倒していき、ついに目的の遺骨を手に入れる。


「よし、これで揃ったな」


 道中、宝箱も見つかり、素材やアイテムもいくつか手に入れた。


 街に戻ると、ギルドで報酬600Gを受け取り、二人は300Gずつ分け合った。アイテムの分配も済ませる。


「鉄鉱石、うちの分も持ってってええよ。剣、直したいんやろ?」


 マリーが自分の分も差し出してきた。


「いいのか?」


「うん、大丈夫やよ(^^) それで剣が強うなるんやったら、うちもうれしいし」


 クロスは感謝の意を込めて、残りのアイテムと100Gを彼女に渡す。


「これでフェアってことで」


「えっ、こんなにも……ありがとなぁ、クロスさん!」


 信じるべきは、共に戦う仲間。クロスはそう感じていた。


 だが、剣の修復に必要な鉄鉱石はあと一つ。金もまだ足りず、食費を考えれば休んでいる暇はない。


 それからクロスは「二日潜って一日休む」生活を続けた。時にはジャンやマリーと再会しながら、少しずつ成果を積み上げ――


 ついに鉄鉱石と1,750Gを揃えた。


「おっちゃん、頼むぜ!」


 鍛冶屋に材料と費用を渡すと、親父は頷いた。


「任せな、明日の朝には仕上げてやる」


 剣を預けたクロスは、その日は奈落を休み、久々に街でのんびりと過ごした。


 《翌朝》


 完成した剣を受け取った瞬間、クロスは歓声を上げた。


「やったぜ! ありがとう、おっちゃん!」


 ギルドへ向かうと、マリーの姿があった。


「おはよう、マリー。今日も一緒に行くか?」


「おはようさん、クロスさん。うちは今日はちょっと奥まで行ってみようと思っててな、『百薬の水』に一歩でも近づきたいんよ」


「この剣の力を試したいからな。どこまでも付き合うよ」


 そこへ、もう一人の声が加わる。


「私も行くわ。人食い草の体液が欲しくてね」


 エリスが合流し、三人で奈落へと向かうことになった。


 …………

 【猫人間の牙を2つ納品】

 報酬 600G

 …………


 三人は装備も整い、以前よりはるかに頼れる仲間となっていた。


【奈落 第一層 遺跡エリア】


 エリアに入ってすぐ、アンデッドの襲撃に遭う。どうやら彼らはレベルに関係なく襲ってくるようだ。


 続く道中、群れるゴブリンや魔力草を落とす冬虫夏草が立ちはだかる。


 激しい戦いの中で、三人は息を合わせ、確実に敵を撃破。魔力草はエリスが丁寧に回収する。


 一段落ついたところで、三人は小休止を取った。静けさの中、クロスは新たな剣を手に立ち上がる。


「さあ、もうひと踏ん張りだな」


 深まる奈落の闇の中、三人の足取りは少しずつ、しかし確かに前へと進んでいく――。

キャラクター紹介 No.9

【鍛冶屋の親父】

サンライズシティの鍛冶屋を一人で営む職人。

無愛想でぶっきらぼうだが、その腕は一級品。特に鉄製の装備修復と強化においては、街一どころか、ギルドの幹部も密かに頼るほどの凄腕。

普段は渋い顔で「手間賃だ」と高額を吹っかけてくるが、マリーには何かと甘く、こっそり材料や手間を“サービス”しているらしい。彼女が店に来ると、なぜか声のトーンが1.2倍高くなり、笑みすら浮かぶ。

クロスは気づいていないが、今回の剣の修復費用も、実はかなり割引されていた。

「へっ……世話の焼けるガキどもだ。だが、道具に恥じる戦い方だけは、するなよ」

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