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奈落の果ての冒険譚  作者: 黒瀬雷牙
最終章 それぞれの明日編

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ベテラン達のその後

【魔法学校】

 マチルダとマーテルは、魔法学校の教員として教壇に立っていた。かつては戦場で命を賭けて戦った二人も、今では若き魔法使いたちに「魔法の正しい使い方」と「責任ある力の行使」を伝える日々を送っている。


 瘴気が無くなったことで、魔力を持って生まれる子供の数は激減した。それでも学校には、強大な力を秘めた若者たちが集まる。マチルダは落ち着いた声で授業を進め、実践演習では的確な指導で生徒たちを導く。マーテルは明るく、しかし厳格に魔法の危険性を伝え、笑顔と叱咤で生徒たちの心を引き締めた。


 授業の合間、二人は静かに互いを見やる。奈落での戦いを共に生き延びた戦友として、そして教師として、確かな信頼がそこにある。教え子の小さな失敗にも、二人は決して怒らず、正しい道へ導くために手を差し伸べる。その姿に、生徒たちは自然と敬意を抱く。


 夕暮れ、校舎の屋上から広い空を見上げ、マチルダは微かに微笑む。


「私たちも…ずっと、守るべきものがあるのね」


 マーテルも静かに頷き、教え子たちの声を遠くに聞きながら、未来へ続く魔法の道を見据えていた。かつて奈落で戦った日々の記憶は遠くにある。それでも二人の胸には、仲間たちとの絆と、魔法を正しく伝える責任がしっかりと根付いている。


【冒険者ギルド】

 奈落の戦いから数年。ヒルダは冒険者ギルドの最高責任者として日々を過ごしていた。ギルドでは、奈落の秘宝や異世界への探索任務に挑む冒険者たちをサポートし、危険な任務が安全に進むよう取り計らっている。


 その傍らで、イグニスは深層のSランクやAランクの依頼を、いまだに頻繁に受け続けていた。理由はただ一つ、ギャンブル資金を稼ぐためである。


「イグニス、またそんな無茶な依頼を受けて…本当に懲りないのね」


 ヒルダはため息をつきつつ、イグニスの背中を見守る。


「へへ、だって資金が足りねぇんだよな。そんで、任務は大体こなせるし」


 イグニスは軽く肩をすくめ、笑いながら返す。任務に対する油断は微塵もなく、むしろ手際よくこなしてしまう。


 ヒルダは小言を言いながらも、イグニスの働きぶりを黙って認めるしかなかった。ギャンブル好きで自由奔放な性格だが、深層任務の実力は確かであり、ギルドの運営にも不可欠な存在である。


「…まったく、しょうがないわね」


 ヒルダは軽く苦笑しつつ、今日もイグニスの任務準備を整える。冒険者たちの安全を見守りつつ、イグニスのやんちゃな日常も、彼女にとってはもう一つの戦場のようなものだった。


 そして、ギルドの掲示板に目をやると、最新の冒険者ランキングが貼られていた。


 ◇ 冒険者ランキング・最新版 ◇

 1位《天弓》イグニス=イッシュバーン

 2位《羅刹を倒した勇者》クロス=ユグフォルティス

 3位《一撃必殺》グラド=バルド

 4位《氷のアルテミス》リラ=グリーンウッド

 5位《赤の女勇者》マロン=アルバトロス


 上位2人はしばらく変わっておらず、3位以下は新たに現れた若手たちの入れ替わり。アルガードをはじめ、トップ冒険者のほとんどが引退し、かつて奈落で死闘を繰り広げたメンバーの中で、いまだ奈落に挑むのはイグニスとクロスだけである。


 ヒルダは目を細め、掲示板をじっと見つめた。


「でも…さすがは、イグニスね。相変わらず自分のペースでトップを取るのね」


 そのとき、3位と4位の冒険者がギルドの掲示板前に歩み寄ってきた。


「おっ、ランキング更新か」


 グラド=バルドは腕組みし、凛々しい顔で掲示板を見つめる。


「イグニス……絶対、追い抜いてやるからな!」


 その声には自信と挑戦心が溢れていた。


 一方、リラ=グリーンウッドは冷静にグラドのつるつる頭を軽くパチンと叩く。


「ちょっと、失礼だし恥ずかしいからやめて?」


 グラドは照れ笑いで頭をかきながら、少し大人しくなる。


「す、すまん……つい勢いでな」


 リラはグラドに向かって軽く頭を下げる。


「私のせいで気を悪くさせたらごめんなさい。でも彼、素直なんです」


「はは、気にするな。勢いが大事なのは分かってるさ」


 イグニスも笑顔を見せ、二人の若手冒険者のやり取りを微笑ましく見守った。


 ランキング掲示板の前で、ふと視線を下げたヒルダの横に、ひときわ小柄で明るい冒険者が立っていた。赤いマントを翻し、元気な笑顔を浮かべる少女――


 マロン=アルバトロスだ。


「ランキング、ついに5位か…!」


 マロンは掲示板を見上げ、少し誇らしげに息を吐く。かつて病に苦しみ、長らく生きることすら諦めていた時期もあった。しかし、七年前、アルガードからジャンの手に渡った百薬の水で病を克服。今では立派な冒険者として、自分の力を証明するまでになっていた。


 年齢は22。若き冒険者ながら、すでに第五層への到達経験を持つ実力者だ。体格こそ小柄だが、素早い身のこなしと鋭い判断力で、危険な任務でも、着実に成果を上げてきた。


「兄貴、きっといつか追いつくんだから!」


 心の中で兄・ジャン=アルバトロスを思い浮かべ、マロンは拳を握る。ジャンは第七層で子どもたちと穏やかに暮らしながらも、かつて奈落で共に戦った仲間たちの背中を守り続ける存在だ。その強さと優しさに憧れ、マロンは自らの力で兄の背中を追いかけようとしていた。


「よし、もっと鍛えなきゃな」


 マロンは掲示板から目を離し、軽く背筋を伸ばす。ギルド内を歩く冒険者たちの熱気、仲間たちの笑顔、そして自分の力を試す任務への期待――すべてが彼女を前へと押し出す。


 ヒルダはそっと微笑み、マロンの後ろ姿を見送る。まだ若いが、確かな意志と努力で己を磨き、兄の背中を追う赤い冒険者の姿。今日もギルドは、こうして新たな希望と挑戦に満ちていた。

キャラクター紹介 No.45

【グラド=バルド】

通称《一撃必殺》。

若き冒険者で、奈落探索後に急速に頭角を現した新星。ランキングでは現在3位に位置しており、トップのイグニスやクロスを追い抜くことを常に目標としている。

性格は真っ直ぐで熱血。挑戦心が旺盛で、勢いに任せて行動することも多いが、素直さと純粋さから周囲に好感を与える。時には無邪気な失敗をして周囲を笑わせることもあるが、決して悪気はない。

見た目は凛々しい顔立ちだが、つるつるの頭がトレードマークで、仲間から軽くツッコまれることも多い。戦闘スタイルは圧倒的な一撃を誇る近接攻撃型で、瞬発力と判断力に優れ、戦場で敵を圧倒する力を持つ。

リラ=グリーンウッドとは行動を共にすることが多く、冷静なツッコミ役としての彼女とのコンビネーションで、能力以上の活躍を見せることも。

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