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奈落の果ての冒険譚  作者: 黒瀬雷牙
第七章 憎悪の羅刹編

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暗闇の対峙

【奈落 第八層 クリスタルヴィレッジ 夜】


 静寂に包まれた雪原の村は、結界の淡い光に守られ、穏やかな時間が流れていた。

 だが、その静けさを破るように、雪の音とは異質な「ザザッ、ザザッ」という不気味な擦れる音が、吹雪の中から忍び寄る。


 闇の中から、骨と腐肉、錆びた鎧に身を包んだ無数の死霊たちが次々と姿を現す。

 赤黒く光る瞳は、憎悪と怨嗟の炎を宿し、まるで生者を貪り尽くさんとする悪鬼の群れだ。


「怨憎会苦……全てを呑み込め」


 ヘティリドの冷たく低い声が闇を震わせると、無数の死霊たちは一斉に結界の光を襲った。


 結界の光は波打ち、焦げ付くように黒く染まり、一部が破られたその隙間から死霊が雪原へと侵入する。


「敵襲だ!全員、急いで迎撃だ!」


 鋭い咆哮を上げながら前線に立つのは、かつて“紅蓮騎士”と称されたガルド。炎をまとった巨大な大剣を豪快に振るい、二体の骸骨兵士を一刀両断にする。

「紅蓮の炎で焼き尽くせ!」と叫ぶその声は、凍りついた空気を切り裂いた。


 後方で弓を構えるリィナは、かつて“白鷹射手”の異名を持つ狙撃手。風を読み、矢を風のように放ち、死霊の眼球を正確に貫く。

「狙いは外さないよ!」と静かな自信を滲ませる。


 セラフィナは“氷紋魔女”の異名を誇る魔法使い。

 結界の維持を担いながら、氷の弾丸を連射し、押し寄せる死霊の群れを削り倒していく。

「結界が崩れれば村は終わりよ。絶対に守り抜く!」と呪文を唱え続けた。


 死霊たちは次から次へと這い出し、戦場は炎と氷、そして鋼の音が響き渡る地獄絵図となる。村の冒険者たちは、それぞれの得意分野で死霊に立ち向かう。


 しかしそれでも戦況は激烈を極めた。倒された骸骨兵が雪に崩れ落ちても、そこから新たな死霊が這い出す。


 闇の影を裂くように走るクロス、光の魔法で仲間の支援を続けるマリー、豪快に斧を振り回すジャン、冷静に魔法と剣を操るエリス、そして剣技と直感で戦うフローレンス。


 激しい攻防の中、村の未来を懸けた一進一退の死闘が幕を開けたのだった。


 フローレンスは敵の刃を冷静に受け流しながらも周囲の状況を見据えていた。


(この動き……どこかで見覚えがある)


 戦線の端、結界の破れ目近く。

 雪影の中に、地面と溶け込むような影が揺れ動く。


 フローレンスの瞳が鋭く光った。


「……アルカトラ」


 影縫いのアルカトラは、気づかれたことを察すると、薄く笑みを浮かべ闇の奥へと姿を消した。

 吹雪は一層強まり、村の夜は深く、そして暗く沈んでいった。



【奈落 第八層 クリスタルヴィレッジ 路地裏】


 雪が静かに舞う狭い路地裏で、フローレンスは息を潜め、影縫いのアルカトラを追い詰めていた。


「動くな、アルカトラ!」


 ゆっくりと振り返る黒衣の女。

 凍てつく瞳がフローレンスを射抜く。

 胸元に輝く七芒星の刺繍は、かつての黒から銀色に変わっていた。


「……刺繍が変わっている。奴もまた、力を増しているのだな」


 フローレンスの背筋に冷たい緊張が走る。


「察しがいいわね、フローレンス。四年前の因縁、今こそ決着をつけましょう」


 炎の剣と闇の短剣。二人の因縁の対峙は、今まさに戦端を開こうとしていた。



【奈落 第八層 クリスタルヴィレッジ 広場】


 その頃、アルガードは緊迫した面持ちで村の広場を見渡していた。

 遠くで銃声が響き、一人の冒険者が倒れ込む。


「リゼルグの動きだ……奴が村に姿を現したか」


 鋭い視線で周囲を警戒しながら、仲間に告げる。


「ここからは一瞬の隙も許されない。絶対に見逃すな」


 戦いの序章が、静かに幕を開けていた。



【奈落 第八層 クリスタルヴィレッジ 暗がりの広間】


 ヒルダは闇に紛れ、凄まじい憎しみのオーラを確かに感じ取っていた。


「これは……何という禍々しい気配!」


 瞳が冷たく鋭く光る。足取りは乱れず、一歩一歩静かに進む。


 やがて薄暗い広間に辿り着くと、そこには黒衣の男——ヘティリドが悠然と立っていた。


 ヒルダの気配を察した男はゆっくりと振り返る。


「ほう…俺を見つけるとは、それなりに手練れか?」


 その声は冷酷に響き渡り、勝利を確信したような嘲笑を浮かべていた。


「俺は奈落六大将が一人、憎悪の羅刹・憎しみのヘティリド。お前たちに死刑宣告を告げる」


「奈落六大将…だと!?」


 憎しみの炎を宿す瞳が、闇夜に鮮烈な光を放つ。ヒルダは拳を固め、静かに応じた。


「だが、深層に踏み入れた時点で覚悟はできている!」


 戦いの火蓋は、今まさに切られようとしていた。

キャラクター紹介 No.39

【紅蓮騎士 ガルド】

元“紅蓮騎士”として名を馳せた豪傑の戦士。

炎を纏う巨大な大剣を軽々と振るい、凍てつく奈落の雪原エリアで猛威を振るう。

剛毅かつ情熱的な戦闘スタイルで仲間たちを鼓舞し、その炎は絶え間なく敵を焼き尽くす。

かつての“紅蓮騎士”の誇りを胸に、苛烈な奈落の戦いに挑み続ける。

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