第七層踏破
【奈落 第七層 樹海エリア】
重厚な木々が生い茂る森の中、空気が重く震えている。地面が微かに揺れ、遠くから唸り声が響いてきた。
「来たぞ、デビルコング!」
巨体を揺らし、巨大なゴリラ型のモンスターが姿を現す。分厚い筋肉と鋭い牙、拳を振り上げるたびに地面が割れるほどの威圧感だ。
「みんな、油断すんな!連携を崩すな!」
クロスの声に、ジャンとフローレンスが前衛を固める。マリーは光の魔法で仲間を強化し、エリスは冷静に風と氷の魔法で支援。クロスは的確に戦況を見極め指揮を取った。
デビルコングの猛攻が始まる。巨体の拳が森の木々を薙ぎ払い、地面を震わせる。ジャンが盾で受け止め、フローレンスが素早く斬り込む。
「行くぞ、フローレンス!」
炎をまとった剣が鋭く振り下ろされるが、デビルコングの頑強な皮膚がそれを受け止める。しかし、マリーの光魔法が仲間の動きを加速させ、エリスの冷気魔法が巨体の動きを鈍らせた。
「今だ、みんな!」
クロスの合図で一斉攻撃。ジャンの斧が豪快に振り下ろされ、フローレンスの炎の斬撃が続く。エリスの氷が追い打ちをかけ、マリーの光が全員の力を底上げする。
激しい攻防の末、デビルコングは重い咆哮を上げて倒れ込んだ。
静寂が訪れ、仲間たちは息を整えながら互いの健闘を称え合う。
【獣人の村】
戦いを終え、村へ戻ったクロスたち。アニサは村の復興とレストラン経営を両立させる決意を固めていた。
「ここで村の皆と一緒に頑張るわ。だからまた、会う日までな」
アニサの瞳には力強い覚悟が宿っている。
クロスは真っ直ぐに彼女を見つめた。
「アニサの夢、応援する。俺たちも負けてられないな」
その後、マチルダ、ガイア、ダリウスにも挨拶を済ませる。
「みんな、ありがとう。次の戦いでも頼むぞ」
ガイアが力強く頷き、マチルダも穏やかな笑顔で応えた。ダリウスは冷静に一言。
「無事で何よりだ。俺たちも後方から支える」
それぞれの決意が交わり、次の層へ進む覚悟が固まった。
【第七層と第八層の間 安全地帯】
転移魔法陣の前で、エリスが足を止める。
「第八層は雪原エリアよ。ルメナリア大図書で調べておいたけど、常に吹雪いてて気温は氷点下。防寒装備なしじゃ命が危ないわ」
「なら一度サンライズに戻って準備を整えよう」
クロスの言葉に、マリーも頷いた。
「毛皮のコート、仕入れなあかんな」
そうして彼らは、第八層へ挑む前に一旦地上へ戻る決断をした。
【サンライズシティ 冒険者ギルド】
ギルドに立ち寄ったクロスたちは、冒険者ランキングの掲示板に目をやった。
◇ 冒険者ランキング・最新版 ◇
1位《最強の男》 アルガード=ドラコニス
2位《白銀の戦乙女》 ヒルダ=グランリオナ
3位《天弓》 イグニス=イッシュバーン
4位《光の神に愛されし者》 マチルダ=トワイライト
5位《斧勇者》 ジャン=アルバトロス
上位4人は、グレンの死以降しばらく動きを見せていない。その隙間を埋めるように、ジャンがマーテルを追い抜き、5位に食い込んでいるのだ。
これはジャンが、目標とするアルガードの背中を追い、強くなり続けた結果である。
ランキングを見て、クロスは改めて気を引き締めた。
「俺たちも負けてられないな」
【奈落 第十層 神殿エリア】
荘厳な石柱が天を貫く神殿の闇の中、六大将・不安のシャスエティは冷静にリゼルグとアルカトラを見据えていた。彼らは盗賊団ブラッドムーンの生き残りで、数多の冒険者を壊滅させた強敵だ。
シャスエティは静かな声で言葉を紡ぐ。
「リゼルグ、お前の野望はよく知っている。だが、我々六大将の枠組みを超えた動きは慎むべきだ」
リゼルグは冷たい笑みを浮かべ返す。
「シャスエティ様、私は己の復讐と野望のために動いている。六大将の力も利用できれば使うまでだ」
アルカトラが静かに頷く。
「我々の恨みは深い。特に冒険者達の支えとなっているアルガードとヒルダは必ず葬る」
シャスエティは微笑を浮かべながら、含みのある言葉を投げる。
「協力は認めよう。ただし、覚えておけ。俺が全てを見通していることを」
その時、背後から新たな気配が忍び寄る。
六大将・憎悪のヘティリドが人目をはばからず、直接リゼルグに近づいた。
「シャスエティを介さずに言わせてもらうが、俺はお前の策に賭ける。共に第八層にて、アルガードとヒルダはもちろん、歯向かう冒険者たちも容赦なく討つために協力しよう」
リゼルグは冷静にその言葉を受け入れ、僅かに微笑んだ。
「ありがとうございます、ヘティリド様」
神殿の闇の中、陰謀は一層深まり、奈落の支配を巡る駆け引きが激化していく。
ーーー 第六章 無限樹海編 完 ーーー
ボスモンスター紹介 No.7
【デビルコング】
第七層の主は、純粋な怪力タイプの巨大なゴリラ。
木を折り、岩を砕くその腕力はものすごく、武器を使わず拳だけで戦う原始的な強さを持っている。




