宴の夜
【奈落 第七層 宴の夜】
一行は村へ戻ると、隣村の獣人たちも招いて賑やかな宴を開いた。
アニサが黄金の果実と神聖の湧水をふんだんに使った料理を振る舞い、その味わい深さに皆の表情が和らぐ。
「うわあ、これは…最高やな!」
マリーが笑顔で箸を動かし、隣村の獣人たちもその美味しさに感嘆の声をあげる。
復興作業に励んでいたマチルダ、ガイア、ダリウスも宴に加わり、クロスたちの白王との戦いの話に耳を傾けた。
「本当に白王と渡り合ったんか?それは想像以上だわ…」
マチルダが驚きを隠せず言う。クロスは静かに語り始めた。
「白王は圧倒的な力を持ち、何度も俺たちを押し返した。でも、その戦いの中で父さんたちの面影を感じたんだ」
エリスが続ける。
「それに、白王はこれまで一度も倒されたことがない。だから神獣の肉の話は間違いだとわかったわ」
その事実に、宴の空気が一瞬で引き締まり、参加者全員が深い尊敬の念を抱いた。
「聖域の守護者でありながら、俺たちに試練を与え、そして力を認めてくれたんだ」
ジャンが拳を握り締め語る。
隣村の獣人たちも、これまで遠く感じていた白王の存在がぐっと身近になったように静かに頷いた。
宴は夜遅くまで続き、仲間たちは新たな絆を深めながら、これからの困難に備えて力を蓄えた。
隣村の夜が静かに更けていく中、焚き火の炎が揺れる。ガイアとフローレンスは並んで腰を下ろしていた。
最近の騎士団の様子や奈落の過酷さについて話し合う二人。ガイアは肩をすくめて言う。
「最近、王国でもいろいろ動いてるみたいやな。俺たちがいない間に、色々と変わってきてる」
フローレンスは微笑みながら答えた。
「はい、まだまだ先は長そうですね…」
二人は何気ない話を続けながら、それぞれの胸にある不安と希望を感じ取っていた。
やがてガイアが真剣な表情で切り出す。
「なあ、フローレンス……この奈落の調査が終わったら、どうしたい?」
フローレンスは少し間を置き、穏やかに答えた。
「私は……普通の生活がしたい。騎士としての務めを果たした後は、平和な日々を二人で歩んでいけたらって」
ガイアは微笑みを返し、決意を込めて言った。
「なら、俺と付き合ってほしい」
突然の言葉にフローレンスは一瞬息を呑んだが、落ち着いた声で答えた。
「はい……私も、ずっとそう思っていました。これからも騎士として、そして一人の女性として、共に歩んでいきたいと」
二人の間には言葉以上の温かい想いが静かに流れた。
過酷な旅路の中で見つけた、小さくとも確かな絆が二人の心を満たしていく。
一方、焚き火の揺らめきが辺りを柔らかく照らす頃、獣人騎士のリサナが静かにジャンに近づいた。
「人間にも、こんなに逞しい者がおるとはな」
その声は落ち着いているが、力強さがあった。リサナは筋肉質で引き締まった身体に、美しい顔立ちと豊かな胸を持ち、酒に酔った色香が漂っている。
酒の勢いも手伝い、彼女の言葉と仕草にジャンの心は揺れた。夜の静寂の中、二人は自然と距離を縮め、やがて熱く身体を重ねた。
《翌朝》
朝の柔らかな光が宿の窓から差し込む中、クロスはダリウスに声をかけられて目を覚ました。
「おい、クロス。昨日は羽目を外しすぎだぞ」
ダリウスは少し呆れたように言う。マチルダとエリスは昨夜のことを思い出し、少し引いた様子で顔を見合わせる。
しかしダリウスはニヤリと笑いながら続けた。
「でもな、マリーと俺はめっちゃ楽しんでたぜ」
酔った二人がクロスを煽り、「結婚するなら誰がいい?」と聞き、酔っているクロスは酒が「エリス一択!!」と宣言してしまっていた。ちなみにクロスは覚えていない。そんな和やかなやり取りの中、アニサが話を切り出した。
「黄金の果実、父のレストランにも届けたい。サンライズシティの皆にも、料理を食べてもらいたいから!」
それを聞き、クロスは仲間たちに目を向けた。
「わかった。じゃあ一度、サンライズシティに戻ろう」
こうしてクロスたちは、獲得した貴重な食材を携えて再び街へ帰路についた。
「…おい、ジャン、元気ないけど二日酔いか?」
「…まぁ…そんなところだ」
獣人族は肉体だけでなく性欲も人より強く、結局ジャンは眠れなかった。
キャラクター紹介 No.38
【獣人騎士リサナ】
獣人騎士団の一員。冷静で頼れる戦士。仲間を守るために命を賭ける。
強さだけじゃなく、思いやりも持ち合わせている。樹海の守り手のひとりだ。




