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奈落の果ての冒険譚  作者: 黒瀬雷牙
第六章 無限樹海編

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盗賊団殲滅作戦

 アジトの入口が見えてきたその時、突然、地鳴りが響き渡る。


「罠だ!」


 イグニスの叫びと共に、巨大なデビルコングが密林の影から飛び出した。七層のボスモンスターが、盗賊団の罠として送り込まれたのだ。


 鋭い爪が空を切り裂き、怒りに満ちた咆哮が響く。


「俺たちが引き受ける!」


 イグニスとマーテルは素早く前に出て、デビルコングの注意を一身に受け止める。イグニスの風の矢が猛獣の動きを封じ、マーテルの土魔法が正確にダメージを刻んだ。


 他の者たちはアジトの進入準備を急いだ。


 アジトの奥に潜む盗賊団は、七芒星の新メンバーたちが守りを固めていた。


 だが、No.4の白刺繍の盗賊はアルガードの鋭い剣技に圧倒され、No.5の黒刺繍の盗賊はヒルダの無慈悲な一撃に倒れた。


 No.6の赤刺繍の盗賊は怪力と重盾のガイアに弾き飛ばされ、No.7の青刺繍の盗賊は戦術家ダリウスの冷静な鞭捌きに翻弄される。


 彼らの戦闘は冒険者側の圧倒的な実力で、まるで勝負にならなかった。


 マチルダの指揮のもと、ジャン、エリス、フローレンス、マリー、アニサが盗賊団を次々と倒していく。


 一方、クロスは因縁の相手と対峙していた。

 ペイル――彼の胸には誇らしげに銅色の刺繍が輝いている。七芒星の新たなNo.3として、確固たる地位を示す証だ。


「クロス……ようやく決着をつける時が来たな」


 ペイルは静かな声で言ったが、その瞳は凶暴に燃えている。


「お前を斬れなかったあの時の屈辱、今度こそ晴らしてやる」


 クロスは剣を握りしめ、冷静に返す。


「裏切り者のお前を許すつもりはない。だが、俺も成長した。四年前とは違うんだ」


 互いに間合いを詰める。ペイルの動きは以前よりも鋭く、素早い。だがクロスの眼は揺るがない。


 まずペイルが高速の斬撃を放つ。クロスは盾を掲げて防ぐ。金属が火花を散らす。すかさず反撃に転じ、剣先がペイルの腕を切りつけた。


「さすがだな、成長してる」


 ペイルは微笑む。だが、その笑みは冷酷だった。


 次の瞬間、ペイルは魔力を纏った刃を振り回す。魔法の斬撃がクロスの防御を切り裂き、傷が広がる。

 だがクロスは踏み込み、剣と盾で猛然と攻め返す。


 二人の攻防は激しく続き、床を蹴る音、武器がぶつかる音が響き渡る。血が飛び散り、息が荒くなる。


「今の俺は…四年前の俺とは違う!」


 クロスの声が震える。


「なら見せてみろ、その成長を!」


 ペイルは叫び、最後の全力斬りを放つ。クロスはそれを受け止め、全身の力を込めて剣を押し返した。

 互いの力が激突し、地面が揺れる。


 数秒の睨み合いの後、クロスが一気に間合いを詰める。


「これで終わりだ!」


 一閃、剣がペイルの胸元を貫いた。ペイルは目を見開き、やがて膝をつく。


「く……くそ……クロス……お前が強すぎた……」


 クロスは剣を引き抜き、冷たく言い放つ。


「お前はもう終わりだ」


 ペイルは倒れ込み、意識を失う。


 闘いは終わった。


 しかし、クロスの胸には重い疲労と複雑な感情が渦巻いていた。因縁に決着はついたが、奈落の戦いはまだ終わらないのだから。


【奈落 第七層 獣人の集落】


 薄暗い森の中、リゼルグとアルカトラが獣人の集落を包囲していた。


「狡猾な奴らめ、冒険者が盗賊団の本拠地にいる間に、こちらを叩くとは」


 獣人騎士が皮肉を言う。アルカトラは鋭い眼差しで獣人騎士たちを睨みつける。


 盗賊団のNo.2となったアルカトラはかつてはNo.5だったが、他のメンバーの死亡と、その実力と才覚で昇進を果たしている。


 二人の襲撃は容赦なかった。斬撃と魔法が森の静寂を引き裂き、獣人騎士団は必死に応戦した。


「皆、俺たちの守るべき場所だ! 絶対に許すな!」


 獣人騎士団のリーダーが吠え、仲間たちも奮起する。


 戦いは激烈を極め、多くの獣人騎士が倒れたが、最終的にリゼルグとアルカトラは撤退を余儀なくされる。


「これ以上は無理か……だが、充分報酬は得た」


 リゼルグは不敵に笑いながら、アルカトラと共に暗闇へ消えた。誰も気づかぬまま、集落にあった金目の物や、珍しい秘宝は奪われていた。


【奈落 第七層 作戦本部】


 激しい戦闘を終えたアルガードたちが、疲れた表情で集まっていた。その時、深い樹海の奥から、ボロボロの装備をまとったイグニスとマーテルがゆっくりと姿を現す。


「すまない、遅くなった」


 イグニスの額には汗がにじみ、息を切らしている。


「デビルコング…なんとか討ち取りましたが、かなり手こずりました」


 マーテルは傷だらけの腕を押さえながら、表情を歪めつつも確かな声で告げた。


 アルガードが険しい顔で二人を迎える。


「無事で何よりだ。お前たちがいなければ、こちらももっと危なかったかもしれん」


 マチルダが頷き、すぐに2人の傷を回復させる。


「これで全員が揃ったな」


 ガイアが拳を固く握りしめる。


「獣人騎士団の被害は大きい…… でも、仲間の倒れた姿を目の当たりにしながらも、彼らは必死に踏みとどまった」


 ヒルダが静かに語る。


「村の復興には時間がかかる。私たちもできる限り協力しましょう」


 マーテルが続ける。


「奴らがこのまま放置されるわけにはいかない。次の戦いに備え、準備を急ごう」


 ガイアが力強く拳を握る。


「この総力戦、全ての力を尽くす時が来た」


 ダリウスが皆の目を見渡しながら宣言する。それぞれが決意を新たにし、これからの激戦に備えた。

キャラクター紹介 No.35

【獣人騎士団】

第七層の樹海を守る獣人たち。鋭い感覚と強い戦闘力で盗賊団の襲撃に立ち向かう。

仲間思いで誇り高く、何度も困難を乗り越えてきた。冒険者たちの大切な味方だ。


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