盗賊団殲滅作戦
アジトの入口が見えてきたその時、突然、地鳴りが響き渡る。
「罠だ!」
イグニスの叫びと共に、巨大なデビルコングが密林の影から飛び出した。七層のボスモンスターが、盗賊団の罠として送り込まれたのだ。
鋭い爪が空を切り裂き、怒りに満ちた咆哮が響く。
「俺たちが引き受ける!」
イグニスとマーテルは素早く前に出て、デビルコングの注意を一身に受け止める。イグニスの風の矢が猛獣の動きを封じ、マーテルの土魔法が正確にダメージを刻んだ。
他の者たちはアジトの進入準備を急いだ。
アジトの奥に潜む盗賊団は、七芒星の新メンバーたちが守りを固めていた。
だが、No.4の白刺繍の盗賊はアルガードの鋭い剣技に圧倒され、No.5の黒刺繍の盗賊はヒルダの無慈悲な一撃に倒れた。
No.6の赤刺繍の盗賊は怪力と重盾のガイアに弾き飛ばされ、No.7の青刺繍の盗賊は戦術家ダリウスの冷静な鞭捌きに翻弄される。
彼らの戦闘は冒険者側の圧倒的な実力で、まるで勝負にならなかった。
マチルダの指揮のもと、ジャン、エリス、フローレンス、マリー、アニサが盗賊団を次々と倒していく。
一方、クロスは因縁の相手と対峙していた。
ペイル――彼の胸には誇らしげに銅色の刺繍が輝いている。七芒星の新たなNo.3として、確固たる地位を示す証だ。
「クロス……ようやく決着をつける時が来たな」
ペイルは静かな声で言ったが、その瞳は凶暴に燃えている。
「お前を斬れなかったあの時の屈辱、今度こそ晴らしてやる」
クロスは剣を握りしめ、冷静に返す。
「裏切り者のお前を許すつもりはない。だが、俺も成長した。四年前とは違うんだ」
互いに間合いを詰める。ペイルの動きは以前よりも鋭く、素早い。だがクロスの眼は揺るがない。
まずペイルが高速の斬撃を放つ。クロスは盾を掲げて防ぐ。金属が火花を散らす。すかさず反撃に転じ、剣先がペイルの腕を切りつけた。
「さすがだな、成長してる」
ペイルは微笑む。だが、その笑みは冷酷だった。
次の瞬間、ペイルは魔力を纏った刃を振り回す。魔法の斬撃がクロスの防御を切り裂き、傷が広がる。
だがクロスは踏み込み、剣と盾で猛然と攻め返す。
二人の攻防は激しく続き、床を蹴る音、武器がぶつかる音が響き渡る。血が飛び散り、息が荒くなる。
「今の俺は…四年前の俺とは違う!」
クロスの声が震える。
「なら見せてみろ、その成長を!」
ペイルは叫び、最後の全力斬りを放つ。クロスはそれを受け止め、全身の力を込めて剣を押し返した。
互いの力が激突し、地面が揺れる。
数秒の睨み合いの後、クロスが一気に間合いを詰める。
「これで終わりだ!」
一閃、剣がペイルの胸元を貫いた。ペイルは目を見開き、やがて膝をつく。
「く……くそ……クロス……お前が強すぎた……」
クロスは剣を引き抜き、冷たく言い放つ。
「お前はもう終わりだ」
ペイルは倒れ込み、意識を失う。
闘いは終わった。
しかし、クロスの胸には重い疲労と複雑な感情が渦巻いていた。因縁に決着はついたが、奈落の戦いはまだ終わらないのだから。
【奈落 第七層 獣人の集落】
薄暗い森の中、リゼルグとアルカトラが獣人の集落を包囲していた。
「狡猾な奴らめ、冒険者が盗賊団の本拠地にいる間に、こちらを叩くとは」
獣人騎士が皮肉を言う。アルカトラは鋭い眼差しで獣人騎士たちを睨みつける。
盗賊団のNo.2となったアルカトラはかつてはNo.5だったが、他のメンバーの死亡と、その実力と才覚で昇進を果たしている。
二人の襲撃は容赦なかった。斬撃と魔法が森の静寂を引き裂き、獣人騎士団は必死に応戦した。
「皆、俺たちの守るべき場所だ! 絶対に許すな!」
獣人騎士団のリーダーが吠え、仲間たちも奮起する。
戦いは激烈を極め、多くの獣人騎士が倒れたが、最終的にリゼルグとアルカトラは撤退を余儀なくされる。
「これ以上は無理か……だが、充分報酬は得た」
リゼルグは不敵に笑いながら、アルカトラと共に暗闇へ消えた。誰も気づかぬまま、集落にあった金目の物や、珍しい秘宝は奪われていた。
【奈落 第七層 作戦本部】
激しい戦闘を終えたアルガードたちが、疲れた表情で集まっていた。その時、深い樹海の奥から、ボロボロの装備をまとったイグニスとマーテルがゆっくりと姿を現す。
「すまない、遅くなった」
イグニスの額には汗がにじみ、息を切らしている。
「デビルコング…なんとか討ち取りましたが、かなり手こずりました」
マーテルは傷だらけの腕を押さえながら、表情を歪めつつも確かな声で告げた。
アルガードが険しい顔で二人を迎える。
「無事で何よりだ。お前たちがいなければ、こちらももっと危なかったかもしれん」
マチルダが頷き、すぐに2人の傷を回復させる。
「これで全員が揃ったな」
ガイアが拳を固く握りしめる。
「獣人騎士団の被害は大きい…… でも、仲間の倒れた姿を目の当たりにしながらも、彼らは必死に踏みとどまった」
ヒルダが静かに語る。
「村の復興には時間がかかる。私たちもできる限り協力しましょう」
マーテルが続ける。
「奴らがこのまま放置されるわけにはいかない。次の戦いに備え、準備を急ごう」
ガイアが力強く拳を握る。
「この総力戦、全ての力を尽くす時が来た」
ダリウスが皆の目を見渡しながら宣言する。それぞれが決意を新たにし、これからの激戦に備えた。
キャラクター紹介 No.35
【獣人騎士団】
第七層の樹海を守る獣人たち。鋭い感覚と強い戦闘力で盗賊団の襲撃に立ち向かう。
仲間思いで誇り高く、何度も困難を乗り越えてきた。冒険者たちの大切な味方だ。




