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奈落の果ての冒険譚  作者: 黒瀬雷牙
第六章 無限樹海編

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さらなる高みへ

【奈落 第七層 樹海エリア 集落の訓練場】


 木漏れ日が揺れる樹海の中、クロスたちはそれぞれ別の場所で訓練に励んでいた。


 フローレンスとジャンは、重盾戦士ガイアの指導のもと、近接戦闘術を磨いている。


「前に立つ者の責任は重い。守るだけでなく、敵の動きを読んで攻撃のチャンスを作れ!」


 ガイアの声が響き渡る。ジャンが力強く斧を構え、フローレンスは素早い斬撃を放つ。


 一方、エリスとマリーは白魔道士マチルダのもとで、攻撃魔法や補助魔法の詠唱練習に集中していた。


「詠唱の安定は命取りよ。焦らず、ゆっくりと魔力を流し込むこと」


 マチルダが手本を示し、エリスが氷の結晶を浮かべる。マリーはこっそり関西弁の訛りを直されるが、気にせず笑みを浮かべた。


 クロスとアニサは、戦術家ダリウスの指導を受けている。


「戦場は動くパズルだ。地形と敵の癖を見極めて、有利な位置を取れ」


 ダリウスの言葉に、クロスは真剣なまなざしを向けた。


 訓練の締めくくりには、獣人騎士団との6体6の模擬戦闘が控えていた。

 現地の騎士たちは、訓練生たちの成長を見極めるために容赦ない攻撃を仕掛けてくる。


 息を切らしながらも、クロスたちは仲間と連携を取り、厳しい戦いに挑む。


  初めのうち、クロスたちは獣人騎士団との模擬戦闘で文字通りボコボコにされた。

 鋭い斬撃に防御を崩され、狡猾な戦術に翻弄される。息も絶え絶えに、森の土を浴びて倒れることも珍しくなかった。


 だが、毎日の厳しい訓練と繰り返される模擬戦を経て、彼らの技量は飛躍的に向上していく。

 フローレンスはガイアの指導で剣と盾の連携が格段に進化し、ジャンも盾役としての判断力と反射神経を磨いた。


 エリスはマチルダの厳しい指導のもと、氷魔法の詠唱速度と威力を増し、マリーも補助魔法に加え、上級光魔法をも自在に操るまでに成長した。

 訛りの指摘は未だ無視しているが、彼女の魔力制御は格段に安定していた。


 クロスとアニサはダリウスの戦術的指導を受け、戦場での立ち回りや連携技術を磨いた。

 敵の行動パターンを読む力は格段に上がり、緑深い樹海での戦闘でも柔軟に対応できるようになっていた。


「いいかクロス、仲間を守るために動ける奴が、本物の冒険者だ」


「はい!」


 ダリウスはクロスを後のリーダーと見極め、己の全てを惜しみなく伝えた。


――そして、訓練開始から約一年が経とうとした頃。


 クロスたちは再び獣人騎士団と対峙したが、今度は互角以上の実力を見せつける。

 鋭い突きや斬撃、魔法の援護が連動し、獣人騎士たちを驚かせた。


「お前ら、成長したな……!」


 獣人騎士団の指揮官が感嘆の声を上げる。


 さらに、樹海の奥深くでは、かつて彼らを苦しめたアビスタイガーや人食い大蛇を、クロスたちは軽々と討伐してみせた。

 激しい咆哮も、鋭い牙も、彼らの結束と力の前ではもう恐怖の象徴ではなかった。


「この調子で行けば、盗賊団(ブラッドムーン)も、怖くはない」


 マリーが笑みを浮かべる。


 この一年で培った技と絆は、まだ見ぬさらなる試練を乗り越えるための確かな力となっていた。


 一年の訓練期間、その間にも盗賊団(ブラッドムーン)はじわじわと力を蓄えていた。

 クロスたちの戦いで数度の打撃を受けたものの、彼らは巧妙に潜伏し、樹海の奥深くに新たな大規模アジトを築き上げていた。


 だが、その暗躍の影響は大きかった。

 拠点を探る上級冒険者や獣人騎士の数名が命を落とし、樹海の緑に鮮やかな血の染みが増えていく。


 森の静寂は次第に緊張と恐怖に包まれ、村人たちも不安を募らせていた。


【奈落 第七層 樹海エリア 密林の高台】


 濃密な葉陰の中、ガイアとダリウスは密やかに獣の気配を探っていた。


「奴らの気配がこの先、濃くなってるな」


 ガイアが低く呟く。


「訓練での経験が活きてる。慎重に、だが確実に近づこう」


 ダリウスが頷き、手にした細身の剣の刃先を鋭く光らせた。その時、遠くから聞こえる火の気配と複数の足音。


「……まさか、あれが新たな拠点か?」


 ガイアが指差す先、樹海の奥深くに広がる開けた空間。そこには密かに築かれた木造の砦が、重々しくたたずんでいた。


盗賊団(ブラッドムーン)の本拠地か……」


 緊張の色を滲ませながらも、二人は決意を固める。


「これを潰さなければ、この層に平穏は戻らん」


 二人は互いに目を合わせ、戦いの準備を始めた。


【奈落 第七層 樹海エリア 作戦本部】


 樹海の奥深く、獣人集落に設けられた臨時の作戦本部。重厚な木製のテーブルを囲み、各層の代表が顔を揃えていた。


 深海峡谷の調査を終えたイグニスとマーテルが、疲れた表情ながらも鋭い目で資料を見つめる。


盗賊団(ブラッドムーン)の勢力が想像以上に拡大している、第七層を拠点に、六層のルメナリアにも窃盗や強盗殺人が起こっていた」


 第八層を調査していた王国騎士アルガードと、熟練戦士ヒルダも席につく。


「こちらの調査でも、盗賊団の痕跡が深刻だ。放置すれば、最奥に最も近い集落、クリスタルヴィレッジは崩壊する」


 アルガードの鋭い声に、ヒルダが頷く。


 クロスらのパーティも合流し、皆の緊張が高まる。


「今や、この樹海での戦いは我々だけの問題ではない。全層の代表が結集し、総力戦に臨む時だ」


 ガイアが重々しく宣言する。作戦の詳細が詰められ、緻密な連携と準備が進められていく。


「また、六大将の一角が何らかの力を貸している可能性もある……皆、警戒を怠るな」


 狡猾な盗賊団を討ち果たすため、各々が持てる力を結集する時が迫っていた。

キャラクター紹介 No.34

【龍鞭のダリウス】

戦術家として知られる冷静沈着な鞭使い。

数々の戦場を経験し、戦況を読み解く洞察力と的確な指示で仲間を導く。

独特の技と連携戦術を駆使し、クロスたちの成長を支える重要な存在。

一見クールだが、仲間想いの一面も持ち合わせている。

今後も戦術の妙技で物語のカギを握ること間違いなしだ。

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