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ロリ巫女美少女 ハルカス

マメ芝という仲間を得た桃太郎こと岩谷桃助は鬼退治という第二の目標を達成すべく大きな村に向かって着実に歩みを進めていた。


「ねえモモ、鬼を退治するって話だけれどモモの強さじゃ無理じゃないの?」


「大丈夫だ、まだ仲間が増える予定だから」

 

俺の言っている意味が理解できないのだろう、マメ芝はキョトンとしていた。


まあ無理もない、〈桃太郎の話では、そうなっている〉というのが根拠である以上


もし理由を求められても説明のしようがない。〈そういうモノだから〉という論理性の欠片もないフワッとした説明になってしまうからだ。


 林道に入りここを抜ければ村までもう少しというところまで来た時。


マメ芝が急に立ち止まり、真剣な表情で何やらキョロキョロと辺りを見回し始めた。


「どうした?」


「人の臭いがする、誰か近くにいるみたいだよ」

 

臭い?そんなもの俺には全く感じなかったがマメ芝は犬神族だ、常人の俺より何倍も鼻が効くのだろう。


「ふっふっふ、よく気がついたわね」

 

木の影から顔を出したのは、白い髪を後ろで束ねた美少女だった。


男子が好む衣装ランキングで常に上位に入るという巫女装束〈当社調べ〉に身を包み


涼しげな目が何ともキュート。年の頃は十六歳ぐらいだろうか?


背は低く、150cmあるかどうかといったところだ。


マメ芝とは違って凹凸の少ないスレンダーなボディだが、これはこれでいい。将来性に期待といったところか。


「アンタ、今、何か失礼なことを考えているでしょう?」


「ど、どうしてわかった。君は超能力者か?」

 

まさか心を読まれた⁉︎この子にはそんな能力があるのか?だったら声に出さなくてもいいという訳だな


ならば方法は簡単だ、俺は心の中で叫んだ〈彼女になってください〉と。


「私は超能力者ではないわ、陰陽師よ」


「陰陽師?安倍晴明とかで有名な、あの陰陽師か?」


俺の問いかけに巫女装束の美少女は驚きの表情を浮かべ再び口を開いた。


「晴明様を知っているの?私は安倍晴明様から数えて二十七代目の正当なる陰陽師、安倍春粕よ」


「アベノハルカス?何だよ、そのキラキラネームはwwwウケ狙いか?」

 

思わず吹き出してしまった。女性の名前を笑うとか印象最悪だろうが、でもこれって不可抗力ですよね?


「人の名前で笑っているんじゃないわよ‼︎盛大に草まで生やして。


女性に対する繊細さとか配慮とか全くないようね、いかにもモテなさそうな男だわ」

 

言葉のナイフが俺のハートに突き刺さる。俺は心に致命的なダメージを受けた、貴重な吉備団子をここで使うか?でもこれって心のケアに効くのだろうか?


「それで、オンミョージのハルカスちゃんは何がしたいの?」

 

マメ芝の問いかけに対し、ハルカスは不敵に笑う。


「いいわ、答えてあげる。私は一族の命運をかけて、将来の伴侶を探しているの。


あと〈オンミョージ〉とか、カタカナ表記はやめてちょうだい、何か馬鹿みたいだし」

 

一族の命運?将来の伴侶?どこかで聞いた話だな。そう、つい最近どこかで……


「じゃあ私と一緒だ‼︎私たち仲良くなれるかもね、よろしくハルカスちゃん」

 

急にフレンドリーな態度で抱きつくマメ芝、嬉しそうにハルカスの顔をペロペロと舐め始める。


ここで一つ提案なのだが、それ、俺にもやってくれないかな……


「ちょ、ちょっと、何よ、急に、馴れ馴れしいわね。初対面の人間にどんな距離の詰め方してくるのよ、離れなさいってば‼︎」

 

嫌がるハルカスを気にすることもなく頬をすり寄せ、目一杯の親しみを見せるマメ芝。


だが俺はあえてこの状況を静観した、これはハルカスが仲間になってくれる流れだ、実に僥倖と言えよう。


俺はこの光景をあえて生暖かく見守ることを決意する。そして静かに懐からスマホを取り出し、二人のやり取りを見守りながら、そっと動画撮影を開始した。


「全く、何なのよ……」

 

ようやく落ち着いたハルカス、彼女と向き合うために抱き着いているマメ芝を引き離しハルカスの話を聞いてみることにした。


「それで、君は花婿を探しているの?」


「まあ、そんな感じよ。私は一族の二十七代目なのだけれど正式に跡を継ぐためにはちょっと欠点というか


足りないところがあって、それを補うために伴侶を探しているの」


ハルカスは目を伏せ深刻そうな表情でボソリと言った。


「そうか、それは大変だね。でも気にすることはないよ、胸が小さい事は欠点ではない


考え方によっては長所でもあるんだ、だから将来性も込みで成長に期待というか……」


「どこの話をしているのよ‼︎胸の大きさとか、関係ないわよ‼︎」

 

なぜか怒らせてしまった、女心は難しい。でもこれはやってしまったか?


「そうだよ、モモ。女の子の胸の大きさとか、そんな事どうでもいいじゃん」

 

大きな胸を揺らしながらマメ芝は語る、それを恨めしそうな目で睨みつけるハルカス。


「そのでっかい胸で、この男をたぶらかしたの?さっき貴方〈私と一緒〉とか言っていたけれど、貴方たちは夫婦なの?」


「いや、その〜、俺たちは……友達以上、恋人未満というか 元カノというか……」


「違うよ、私とモモは、単なる仲間だよ。一緒に鬼退治に行く途中なの」

 

俺が必死に匂わせで乗り切ろうとしたのに即座に否定するマメ芝。こいつは本当に男心というやつをわかってくれない。


「それに私は胸の大きさでたぶらかしてはいないよ、モモはたまに私の胸をチラチラ見てくるけれどね」


「見てねーし、全然見てねーし‼︎」

 

ヤベ、バレていたのか。


「ふ〜ん、そうなんだ……単なる仲間なんだ……」

 

意味深な言葉を口にしながら、こちらをジッと見てくる。もしかして俺にもワンチャンあるのか?


「それで、君の欠点というか、どんな伴侶を探しているの?」

 

そうだ、それこそが最大の問題。この内容によっては俺にもチャンスがあるはずだ。


「実は……私は、その……が……少し……くて……」

 

ハルカスはボソボソと恥ずかしそうに答えるが声が小さすぎて何を言っているのか聞こえない。


「えっ、小声すぎて聞こえないよ」


「だ か ら 私は頭があまり良くないの‼︎だから頭のいい伴侶を探しているという訳‼︎こんな事、乙女に何度も言わせないでよ」

 

赤面しながら恥ずかしそうに、そして若干キレ気味に話す姿は何とも言えない可愛さがあった。


「私も‼私もあまり頭良くないよーー‼︎」

 

なぜか嬉しそうに同調するマメ芝。ややこしいから君は黙っていてくれ。


ここで俺はさりげなくフォローにまわりハルカスの好感度を上げる作戦に切り替えた。


「頭が良くないって、どうしてそれが一族の命運を揺るがす欠点になるの?


女の子はちょっとおバカくらいが可愛いと思うけれど。俺はそっちの方が好きだな」


「アンタの好みとかどうでもいいわ。実はね、私の母は人間ではなく妖怪なのよ」

 

辛そうにカミングアウトするハルカス。この世界で妖怪の子供とかさぞかし生きづらかっただろう。


俺ならば珍しい属性持ちということで逆に愛せるが。


「そういえば、安倍晴明の母親は狐の妖怪だったという説がある。それに似た感じなのかな?」


俺がゲームで知った知識をひけらかすとハルカスは驚いた顔で俺を見た。


「よく知っているわね、その通りよ。晴明様の力の源はそこにあるともいわれているわ


だから私の父である第ニ十六代目陰陽師、安倍魔巣苦は自分の伴侶として妖怪を嫁に迎えたの」

 

そんな過去があったのか……それにしてもアベノハルカスの父親が、アベノマスクってwww 


ダメだ、ここで笑ってしまったら全てが台無しになってしまう。こらえろ‼︎


「じゃあ、ハルカスちゃんのお母さんも狐の妖怪なの?」

 

マメ芝の問いかけにハルカスはゆっくりと首を振る。


「違うわ、私の住んでいた伊勢の国には残念ながら狐の妖怪はいなかった。だから私のお母様は狐ではなく、猿の妖怪なの」

 

何と、ここで猿につながるのか⁉そういえばよく見てみるとハルカスの巫女装束のお尻の部分から猿のしっぽが生えているのに気が付いた。


「私の母は凄く力のある妖怪だった、だから私もその妖力を引き継いでいて陰陽師の二十七代目を継ぐだけの妖力はあるのだけれど……


お母様はその……あまり頭がよくなかったの。自由奔放な人で、とにかくじっとしていない人だったわ。


私はそういう性格ではないのだけれど、その……頭の悪さは引き継いでしまったようで


二十七代目を引き継ぐには少し頭が足りないのよ。陰陽師には覚えることが一杯あるから……」

 

顔を赤らめながら恥ずかしそうに話す姿ははかなさと寂しさを感じさせ、思わず〈守ってやりたい〉という言葉が頭に浮かんできた。

 

そんな時、彼女は俺を観察するようにじっとこちらを見つめてきたのである。


「な、何?俺の顔に何か付いている?」

 

こんな時にド定番のテンプレ台詞しか出てこない自分の語彙力の無さに腹が立つ。


「あなた、さっき清明様の事に詳しかったわね?それなりの知識も持ち合わせているようだし、もしかして頭いいの?」

 

キタキタキタキターーーーー‼ これは恋の予感、見た目は少しロリっぽいが、そこもまたチャームポイントといえよう。


天真爛漫のマメ芝と違ってこちらはツンデレキャラといったところか?


とにかくこんな美少女が彼女になってくれるならば、ぶっちゃけ鬼とかどうでもいい。


体中の細胞が叫んでいるのだ、このチャンスは逃してはならない、と。


「まあ、そうだね。俺、頭はいい方だと思うよ」

 

もちろん嘘である、成績は常に中の下、地元の三流大学に入学した俺が頭脳明晰なわけがない


だがこの際そこは問題ではない。この世には〈優しい嘘〉というモノが存在する


〈嘘も方便〉や、〈嘘から出た誠〉ということわざもある。


つまり〈相手を思っての嘘であればそれは正しいことである〉と日本政府がお墨付きをくれているのだ


後ろめたい事は何もない。俺は自分にそう言い聞かせた。


「あなた……マメ芝だっけ?あなたとこの男は付き合ってはいないのよね?」


「うん、付き合っていないよ、〈彼女になってくれ〉とは言われたけれど」

 

ちっ、マメ芝の奴、余計なことを。交際期間一時間弱で元カノ面か?ヤレヤレ、モテる男は辛いな。


「じゃあ、もし私とこの男が夫婦になっても、何の問題も無いのね?」


「はい、問題ありません‼」

 

俺は反射的に答える。


「アンタには聞いていないわよ、ていうか、どうしてアンタが答えるのよ?」


「しまった、つい……」

 

俺は慌てて自分の口をふさぐ、焦りは禁物だといくら考えても


こんな美少女が俺の彼女になってくれるチャンスなど二度とない、そう思うと気が気でないのだ。


いやいや、チャンスは二度目だろ?とか、そういう無粋な突っ込みはこの際野暮だと言っておこう


そんな諸君に私から一言、馬にけられて死んでしまえ。


「でも私は頭があまり良くないから貴方が本当に賢いのか、それを調べる術を知らない。嘘を言っている可能性もあるし……」

 

そうだよ、わからない事はわからないままでいいんだ。そのまま愛に身をゆだねればいい、俺がそっと抱きしめてあげるから。


「わかるよーーー」

 

なぜかマメ芝が元気よく手を上げる。


「わかるって、どういうことよ?」


「私はね、鼻と耳と目がすごくいいの。だから体温の上昇や、心臓の鼓動、呼吸の早さ、汗のかき方、表情の変化などでその人がどんなことを思っているか、大体わかるよ」

 

何と、マメ芝は動くポリグラフ。人間うそ発見器だったとは⁉


男にとってつくづく余計な能力を持ちあわせていやがる……


いや、でも、待てよ?それを逆に利用すれば……


「わかった、じゃあ俺が嘘をついていないと証明するよ、マメ芝、頼むぜ」

 

俺は〈わかっているな?〉とばかりにウインクすると、マメ芝は大きくうなずいた。


「何だか、よくわからないけれど……じゃあ試しにやってみてよ」

 

ハルカスから正式にゴーサインが出た。ここでマメ芝が打ち合わせ通り俺に有利な判定を下してくれれば


俺とハルカスは晴れて夫婦に……ムフフフフフ、ダメだ、喜びが抑えきれない。


「あっ、モモの体に異変が出たよ、どうやらいやらしいことを考えているみたい」

 

その瞬間、全身の血の気が引いた。


「あっ、やべ、バレた って、考えて要るっぽい、よ」

 

次々と弁護人に対して不利な証言を提出するマメ芝、何か思っていたのと違うぞ?


「そんな事ないよ、嫌だな、マメ芝~、ちゃんと判定してくれよ、ハハハハハハ」

 

乾いた笑いしか出なかった。ハルカスはジト目でこちらを見ている。マズいぞ、これは何とかしないと……


「混乱しているよ、どうやってここから挽回しようかと、色々考えているっぽい。どうやら邪な事を考えているっぽい」

 

お前は実況スレ民か⁉俺はまぶたの筋肉が引きちぎれるほど全力でウインクを繰り返し必死でアイコンタクトを送ると


マメ芝は〈わかっているよ〉とばかりに無言で大きくうなずいた。


「まあいいわ、私にとって重要なのはあなたの頭がいいかどうか?だから。そのほかの事は気にしていないわ」

 

ハルカスはサラリと言ってのけた。何と寛大な少女だ、やはり君こそマイハニー‼さらばだ、マメ芝、君の事は忘れないよ。


「じゃあ、私から改めて質問させてもらうわ。あなたは頭がいいですか?」

 

ハルカスが真剣な表情で問いかけてきた、俺にとってこれはプロポーズに等しい。


「はい〈キリッ〉」


「心臓がバクバクしているし、手のひらに汗を大量の汗をかいています。嘘でーす」

 

俺は思わずマメ芝を睨みつけた。この時の俺は、おそらく鬼の形相をしていたに違いない。


「どうしてそんなにマメ芝を睨むの?モモの言う通り、ちゃんと正直に答えたじゃん」

 

俺の思いはマメ芝にはきちんと伝わっていなかったようだ、これが男と女とのすれ違いというやつか?


女を理解するというのは本当に難しい。

 

この後もマメ芝流うそ発見器による尋問は続いた。結果は皆様の想像通りである。


またもや彼女作るという一大プロジェクトに失敗した俺はその場で崩れ落ち、絶望の中で涙にくれた。


そんな俺をハルカスは冷静な表情で見下ろす。


「何も泣くことないじゃない、そんなに私と結婚したいの?」


「はい、したいです」


「そ、そう……私とあなたは初対面だと思うけれど、全く躊躇がないのね?


でも、そこまではっきり言われたら女としては悪い気はしないけれど


残念ながら私は二十七代目陰陽師を継ぐためにどうしても頭のいい男と結婚しなければいけないのよ、あきらめて」


「嫌です」

 

惨めに食い下がるがハルカスは小さくため息をつき、少しあきれ顔で口を開いた。


「結婚は無理だけれど、貴方たちの協力はしてあげるわ。私も陰陽道の修行の最中だったし将来の伴侶を探したいと思っているから」


「お陰陽道の修行?」


「ええ、私は妖力は高いのだけれど術の制御というか、細かいところが苦手なの。だから練習しているのだけれど、中々上手くいかなくて……」

 

改めて周りを見まわしてみると何本もの大木が鋭利な刃物で切り裂かれたように倒れていた。


これが陰陽師の力⁉こんな小柄な少女がとてつもない凄い力を持っているのだと再認識させられ、思わず息をのむ。


「あと、その……食べ物を分けてくれないかしら、ここ数日、まともな物を食べていなくて……」

 

顔を赤らめ、恥ずかしそうに話すハルカスはものすごく可愛かった。


「じゃあ、このキビ団子を」

 

おいしそうにキビ団子をほおばるハルカス。強がっていた先程までとは違いその姿はまだ幼い少女の面影を残していた。


「ありがとう、感謝するわ。あなた達、鬼退治に行く途中だったそうね?じゃあ私も手伝ってあげるわ、感謝しなさい」

 

感謝されながら、感謝を強要されるという不思議な経験をした。


「で、私は貴方たちの事をどう呼べばいいの?」


「私はね、芝・犬之守・マメ。マメ芝と呼んで‼」


「俺の名は岩谷桃助、モモでもトウスケでも好きに呼んでくれ」


「わかったわ、じゃあ私はこれから貴方たちの事を、トウスケとマメ芝と呼ぶことにする、よろしく……」

 

照れ臭そうに視線をそらしながら右手を差し出すハルカス、こういうところは本当に可愛い。


「ああ、これからよろしく、ハルカス」


「よろしくね、ハルカスちゃん‼」

 

こうして俺たちに新しいメンバーが加わった。

 


頑張って毎日投稿する予定です。少しでも〈面白い〉〈続きが読みたい〉と思ってくれたならブックマーク登録と本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです、ものすごく励みになります、よろしくお願いします。

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