岩谷桃助改造計画
最終確認の為に緊急会議を開くべく三人には俺の部屋に集まってもらった。
「ゴホン、皆に集まってもらったのは他でもない、我々のこれからの方針について話し合おうと思ったからだ」
俺の仰々しい物言いに戸惑う仲間たち。
「話し合いって何を話すの?鬼退治の事?」
「いい質問だ、マメ芝くん。だがこれから話し合うことはそんなくだらない事ではない。もっと崇高で壮大な事だ、厳かな気持ちで聞くがいい」
「ハア、どうせまた女の事でしょ?」
大きくため息をつきながら、呆れ顔のハルカス。
「シャラーップ‼そこ、静かにしなさいハルカスくん、私語は慎むように」
「鬼退治の事でないのであれば、何を話すのでしょうか?」
「よくぞ聞いてくれた、つばめくん。これから話し合うことは我々にとって最も大事なことだ。だがその前にみんなに一つだけ確認しておきたいことがある」
三人は俺の言っていることがわからないようで思わず顔を見合わせる。そこに俺はズバリと質問をぶつけたのである。
「これは全員に聞くが今後、お前たちは〈俺と付き合ってもいいな〉という気持ちがほんの少しでも、心の片隅にでもあるか?」
一瞬、俺の心に緊張感が走る。だが彼女らの答えは、そんな俺の気持ちを踏みにじるものだった。
「ないよーーー」
「あり得ないわね」
「考えるまでもありません、否です」
こいつら、一秒も考えずに即答しやがった……だが、ここで感情的になってはいけない、俺は気持ちを切り替えるべく、冷静な対応を見せる。
「オーケー、オーケー。予想の範囲内だ、クールにいこう。では次の質問だ。
今後お前たちは〈俺と付き合ってもいいな〉と、心変わりする可能性が僅かでもあるか?」
「全然ないよーーー」
「天と地がひっくり返ってもあり得ないわね」
「笑止」
俺は波立つ気持ちを無理矢理落ち着かせ、冷静さを装う。
「オーケー。オーケー、全て想定内だ、何の問題も無い、ノープロブレムだ。
お前らの気持ちはよっっっくわかった。さて、ここで本題に入るとしよう。
俺は何が何でも幸恵さんと付き合いたい、お前らはそれに協力して欲しいのだ」
「何で?」
「嫌よ、面倒臭い」
「協力する意図がわかりかねます、却下で」
こいつらは本当に……ダメだ、落ち着け、感情的になるな、ここは冷静に……
「まあ、聞け。お前らはそれぞれ自分に合った男を探しているのだろう?ならば協力し合えばいいじゃないか。
俺もお前らの男探しに協力する、お前らは俺に協力する
お互い助け合い、協力し合っていけば目標達成も効率よくできるというモノだ。悪くない話だろ?」
俺は口八丁手八丁で丸め込みにかかる。こう言っては何だがこいつらはあまり物事を深く考えないでその場の流れで行動する傾向がある
つまり結構チョロいのだ。口説くことは無理でも俺の口車で丸め込むことならば造作もないはずだ。
「確かに、みんなで協力し合うというのはいいかもしれないね、モモの言う通りかも」
「まあ、トウスケは戦闘力は低いけれど口はうまいし機転もきく。私だけだと相手を探すのもかなり苦労しそうだし
伴侶探しに協力してくれるのは正直ありがたいわね」
「私は岩谷さん以外の男性とはまだしゃべることも出来ません。
そういう意味では岩谷さんの協力なしでは今後かなりの困難が予想されます。わかりました、協力しましょう」
「ありがとう、俺も全力でお前らに協力するぜ、俺たちは仲間だからな‼」
ふふふふふふ、本当にチョロいな、こいつら……
こうして俺たちは相互協力体制を築き幸恵さんとの交際、そして結婚へのハッピーロードを突き進むこととなったのである。
「で、何をすればいいの?」
「そうね、協力と言っても具体的に何をしたらいいのか、教えてちょうだい」
「私にできる事であれば」
よしよし、いい感じだ。だが具体的に何をするのか?と問われると案外むつかしいな。
そうだ、まずは基本に立ち返って……
「そうだな、お前らに協力して欲しいのは〈女性視点〉についてだ。
俺は今まで な ぜ か モテなかった、だが原因があるから結果があるのであって、俺にはモテない要因があったと推測される。
だから俺のどこをどう修正すれば女の子にモテるようになるのか、女性視点で指摘して欲しいという事だ。
お前らも 〈一応〉女だしな」
「嫌な言い方」
「やたら上から目線で、気に入らないわね」
「岩谷さんの言い方、実に不快です」
「シャラーーーップ、だまらっしゃい‼私語は厳禁だ、建設的な意見だけ伺おう、異論反論は認めない」
断固とした決意が俺を厳格な人間へと成長させた。
三人はまだ納得しきれていない様子だが、一応考えてくれているようだった。こうして
【岩谷桃助改造計画】は着々と進んでいった。しばらくしてまずマメ芝が手を上げる。
「はい、マメ芝さん、意見をどうぞ」
「モモの治した方がいいところだよね?だったらモモはもっと速く走れるようになるといいと思う
跳躍も足りないし、力もない、反射神経も鈍いし、素早さも足りない、何より弱すぎる。
鼻も目も耳も顔も悪いし、もっと強くなるように鍛えればいいと思います」
「却下だ、そんなものは鍛えてすぐにどうにかできるモノじゃないだろうが。
それとマメ芝お前どさくさに紛れてさりげなく顔も悪いとか言っていなかったか?」
ダメだ、まあ考えてみればマメ芝は脳筋タイプだからな、知的な俺とは合わなかったのかも知れない。
続いてハルカスが手を上げる。
「はい、ハルカスさん、どうぞ」
「トウスケは女に見境がなさすぎるのよ、浮気者を好きな女はいないわ。
いい男になりたいのであれば、もっと女の子に誠実に向き合うべきだと思うの」
おおーーー、何かそれっぽい意見だ、これは期待できそうだぞ。
「じゃあ、女の子に誠実に向き合うには具体的にはどうすればいい?」
「そうね……まずは女のわがままを笑って聞いてくれるだけの度量を持つことね。
例えば〈私が甘いものを食べたい〉と言ったら、すぐに持ってきてくれるとか
いつでも〈君は最高にきれいだよ、ハルカス〉と言ってくれるとか、まあそんな感じよ。
それにトウスケはもう少し顔がよくないと駄目ね、私はもっとシュッとした感じの顔が好みかな。
そもそもトウスケは足も短いし何となくダサいのよ。
それと体全体的に筋肉量が足りないと思う。私はね、筋肉モリモリの男が好きなの、どちらかというと細マッチョというか……」
「ストップ‼単にお前の理想を語っているだけじゃないか⁉しかも随分と都合のいい、何が細マッチョだ、ふざけるな‼」
俺が意見を否定し一蹴すると、ハルカスは少しすねたような仕草を見せる。それはそれで可愛いのだが今はそういうのはいらない。
さて、最後に残ったのはつばめか……でもつばめは意外とまじめだし、案外的確な意見を出してくれるかもしれないな。
「じゃあ、最後につばめ。俺がモテるために改善した方がいい所を述べなさい。はい、どうぞ」
「えーっと、そうですね……岩谷さんは女性を見るとニヤニヤといやらしく笑うところが嫌いと言いますか
生理的に受け付けないというか、不快というか、笑顔が気持ち悪いというか、よくわからないけれど嫌いというか……」
「それって、あなたの感想ですよね?」
ダメだ、こいつらじゃあ一ミリも参考にならん。
「わかった、じゃあ議題を変えよう。俺が幸恵さんの心を揺さぶるような場面を考えるからお前らはその時
女としてどう思うか?を答えてほしい、それならできるな?」
「わかった」
「仕方がないわね、答えてあげるわ」
「激しく気乗りしませんが、これも試練だと思ってやってみます」
う~ん、イマイチ不安だが感想を言うだけだし、これならば大丈夫だろう。
「よし、じゃあ、そうだな……幸恵さんは薬師らしいので、薬草採取で森から帰ってきた彼女を家の前で待っていた俺。
疲れ切った彼女に優しく微笑みかけ、一輪の花を渡す……
どうだこのパターンは、結構いけるんじゃね?じゃあマメ芝から、幸恵さんの気持ちになってその時の感想を述べよ。はい、どうぞ」
「えっ?そうだね……何で、この人、私の家の前で待っているの?
なんか気持ち悪いんですけど、今後付きまとわれても嫌だし、お役所に届け出ようかな?」
「誰がストーカーだ‼それじゃあ俺はまるっきり変質者か犯罪者じゃねーか⁉」
「だって、思ったことを言えって、モモが……」
「もういい、マメ芝に聞いた俺が馬鹿だった。じゃあ次、ハルカス」
俺は気を取り直しハルカスに話を振る。
「今度は、そうだな……疲れ切った幸恵さんの耳元に、甘い愛の言葉をささやく俺。
その時彼女は気づくのだ、胸の奥からこみあげてくる熱いものを……さて、これを何と呼ぶのでしょうか?はい、答えなさい、ハルカス」
「そうね……嘔吐物かしら」
「馬鹿野郎、俺が耳元で囁いた時にこみあげてくるモノがどうしてゲロなんだよ‼乙女の淡い恋心だろうが‼」
「仕方がないじゃない、疲れている時にトウスケに耳元で何か言われたと想像したら、気持ち悪くなったのだから。
気分が悪くなった時にこみあげてくるモノと言えば、嘔吐物か吐しゃ物しか思いつかなかったのよ」
何なのだ、こいつら?もういい、こうなると望み薄だが一応つばめにも聞いてみるか。
「これは俺のいた世界の鉄板だ。彼女が壁に背を預けているとき、俺は右手を壁に〈ドン〉付け、顔を近づけて愛をささやく。
さあ、この時の感想を述べなさい。はい、つばめさん、どうぞ」
「気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、どうしてそんな気持ちの悪いことをするの?
お願いだから止めて、そんな気持ちの悪いものを私に近づけないで、一体私が何をしたというの?だれか助けて……」
「俺の顔は汚物か⁉ある意味お前は本当にブレないな‼」
全く不毛な時間だった。さて、これからどうしたものか?と途方に暮れていると、部屋の外から声が聞こえてきた。
「あの、すみません、幸恵ですが……」
思わぬ来客に俺の胸は高鳴り興奮を抑えきれない。俺は考えるよりも早く脊髄反射で部屋のふすまを開けた。
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