村長のおもてなし
屋敷の中に案内されると広々とした部屋にいくつもの美術品が飾られていた。
中には教科書で見たことがあるような物まで見受けられる。これは相当な成金だぞ。
「いやいや、遠路はるばるよくお越しくださいました。こんな辺鄙な村ですので、何のお構いもできませんが」
そう言いながら明らかに高級そうなお菓子を出してくれた村長さん。
だが俺はナメられたくは無いのでそのお菓子には手をつけず余裕のふりをした。
しかし、ふと横を見ると三人の女どもは〈我先に〉と言わんばかりに貪るようにお菓子を食べていた、もう何もかもが台無しである。
「はっはっは、どうやらお嬢様方はお菓子がお気に入りのようだ、何でしたら、もっと持って来させますが」
「いえ、それには及びません。我々は……」
だが、俺の言葉を遮るように三人が割り込んでくる。
「本当に?じゃあ後三つちょうだい‼︎」
「私は二つでいいわ」
「じゃあ私は四つで」
台無しである、もう何もかも……
馬鹿女どもが一通りお菓子を貪り尽くした後、ようやく落ち着いて話をすることができた。
「私たちは鬼の被害が出ているという話を聞いて鬼退治に来ました。
ですが鬼がどこにいてどれだけいるのか何も知らなくて。鬼に関する情報が知りたくてこの村に寄ったのです。何か知っているのであれば教えてください」
「そういう事であればまさに丁度よかった。鬼の被害を受けているのはこの村です」
おっと、いきなりドンピシャかい。まあ歩き回って探す手間が省けたので助かるが。
「鬼達にどういった被害を受けたのですか?」
「ええ、その前に。この村には特別な土と特別な製造法で作られる陶器があります。
それが都で大評判となり高額で取引され名産となると、村にも莫大なお金が入ってきました。
この村に活気があるのはそのためです。村の繁栄のために私は粉骨砕身で働き、村民と村の未来のために……」
なぜか鬼とは関係ない村長の自慢話を長々と聞かされる羽目に。
ひとしきり自慢話をした村長さんは一息ついて再び語り始めた。
「鬼が現れたのはつい最近です。突然この村に鬼が来襲し、村は騒然となりました。
逃げ回る村人、恐怖にかられる女子、泣き叫ぶ子供、慌てふためく男どもをしり目に、私は立ち上がったのです。
〈村人達よ、戦え。我らの村を守るのじゃ‼〉と。
そして私の指揮の元、我々は勇敢に鬼たちと戦いました。
私の諸葛孔明がごとき采配と源義経を思わせる獅子奮迅の活躍により何とか鬼たちを撃退しましたが、十人を超える負傷者を出してしまったのです」
事の成り行きをしんみりと話す村長さん、だがなぜか素直に聞くことができない
話の中にかなり盛っていると思われる自分語りがちょくちょく入っているからだろう。そして話は続いた。
「幸い私の神采配により死者は出なかったものの鬼が村人に与えた衝撃は少なくありませんでした。
だから私は村人を励まし共に手を取り合って村の発展に努めてきました。
ですがその後も鬼による被害は後を絶たず、ほとほと困り果てていたところなのです」
話のところどころに変な演出が入っているせいで全てを鵜呑みにすることはできないが
村が鬼に被害を受けているというのは確かだろう。そしてどうにもこの村長さんは胡散臭い。
「わかりました、そういうことでしたら我々が鬼を退治してみせましょう」
「おおーーー、そうですか‼それは心強い、鬼どもはこの村から5kmほど離れた島に生息していて、皆からは【鬼が島】と呼ばれています」
「なるほど、了解しました。ですが我々はまず鬼たちと話をしてみようと思っています」
「鬼どもと話ですか、それはまた、なぜ?」
村長は驚きの表情を浮かべた。
「はい、鬼を力でねじ伏せるのは簡単です。しかし何事も力だけで解決すれば後々遺恨が発生し更なる火種になるかもしれません。
ですから、できれば話し合いによる平和的な解決を模索し、それでも鬼が応じないのであれば致し方ありません。
鬼どもを一匹残らずせん滅し、この世界に平和をもたらしてみせましょう」
村長は腕組みしながらウンウンとうなずいていた。
「なるほど、最初に話し合いの場を設けることによってこちらの誠意を世間に示すというわけですな?
それでも応じない場合はやむを得ず退治すると……
確かに最近は【動物保護団体】や【人権団体】が色々とうるさいですからな
鬼を退治するための大義名分を得るために形式上でも譲歩の姿勢を見せる。モモタロウ殿も中々の悪ですな、くっくっく」
「あなたほどじゃありませんけれどね、村長さん、へっへっへ」
俺と村長さんは変なところで意気投合する。
本当は束しい事を言っているはずなのに端から見ると俺たちの会話は〈性悪商人越後屋と悪代官の会話〉の様に見える。
思っていたのとは違うが話の大筋は間違っていないので修正は必要ないはず、この流れで継続だ。
村長さんが両手で〈パンパン〉と叩くとそれを合図に女中さんが顔を見せる。
「何か御用でしょうか、旦那様?」
「おう、ここに幸恵を呼びなさい」
「かしこまりました」
女中さんは丁寧に一礼した後奥へと戻って行く。この女中さんも中々の美人である。
しばらくして女中さんと共に一人の若い女性が入ってきた。
「この人は……」
「これは私の娘でしてな、幸恵と申します。村では薬師をしておりまして、親の私が言うのもなんですが腕はいいと思います。ほら、岩谷殿にあいさつしなさい」
村長にうながされ丁寧に頭を下げる幸恵さん。
「初めまして、幸恵と申します。遠路はるばる、よくお越しくださいました」
俺は思わず見とれてしまった。サラサラの黒髪に大きな瞳、きめの細かい肌に女優のような整った顔立ち。
一見華奢に見えるが出ているところは出ていて、引っ込んでいるところは引っ込んでいる均整の取れたスタイル。
赤い着物がよく似合う超絶美人だった。
「これは私の自慢の娘でしてな、鬼退治がうまくいった暁にはモモタロウ殿の嫁に、と思っているのですが、どうですかな?」
キタキタキタキターーーー‼何という僥倖、まさかまさかの超絶ラッキー展開に思わず心が躍る。
こんな強欲デブ親父からよくこんな美人が生まれたものだ。
多分お母さんが美人だったのだろう、お父さんに似なくて本当に良かったね。
「お任せください。鬼どもなど俺にかかれば指先一つでダウンですよ‼」
イマイチやる気が出なかった鬼退治にも俄然やる気が出てきた。
「おおーーー、それは頼もしい。それではよろしくお願いします。今日は家に泊まっていってください。明日鬼ヶ島への道のりを案内させますので」
「助かります、では、そういうことで」
俺と村長さんはすっかり意気投合し心の友となった。これぞまさにギブアンドテイク、ウインウインの関係と言えよう。
だが俺には一つだけ確認しておきたいことがあった。
それは村長さんにではなく仲間であるマメ芝、ハルカス、つばめに対してである。
俺たちは一人に一部屋あてがわれたが、今後の方針を話し合うべく俺の部屋にみんな集まってもらった。
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