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2の3 決闘



 【アンクルミーデ村からほど近い草原地帯】



 村の北出口から外に出た。近くには広い草原があり、狩りをしている『勇者』たちが大勢いる。草原に入る前にシュウジたちはパーティを組んだ。そして話し合う。


「みんな、新しい村の近くのモンスターということで、敵が強いと思う。だから用心してくれ」


「かしこみりあした!」ミリアが元気に右手を上げる。


「分かったぜー。シュウジくーん」


「かしこあやのした!」アヤノはミリアの口真似をした。右手を上げている。


「その言葉はさすがに無理があるんじゃないか?」


「シュウジさんっ、アヤノちゃんだって頑張っているんですよ?」


「ここはテレビのトーク番組じゃないんだからな」


 シュウジそう言って、ため息をつきつつ説明する。


「とりあえず俺がファーストアタックを取っていくから、みんなはその後から攻撃してくれ。自分にターゲットが来たら逃げてくれ。それと、アヤノさんのジョブはパティシエみたいだけど、何ができるんだ?」


「わたくしのスキルは、主にみなさんの攻撃の補助になります」


「そうか。じゃあなるべく後ろにいてくれ。その武器の泡立て器は、強いのかよく分からないが、敵が来たら叩いて攻撃してくれ。それじゃあみんな、行くぞ」


「かしこみりあです!」


「かしこあやのです!」


「かしこはるおだぜー」


「ハルオ、お前もか!」


 シュウジはがっくりと肩を落とした。そして草原へと歩いて行く。出現するモンスターは、ドワーフ、ドワーフソルジャーにドワーフメイジと言った三匹が固まって歩いている。他にもオークファイターにオークアーチャー。ワーウルフという人狼もいた。


 シュウジは『シールドエンチャント』を使い、オークファイターに斬りかかっていく。彼の後ろから三人が攻撃を放った。ミリアがドットダメージスキルを雨あられのように降らせている。アヤノはスキル『点火』を使った。それは敵の足下に火をつける魔法だった。ダメージは一応出るのだが、モンスターはすぐに火元から移動してしまう。そしてハルオは最近になって弓のコツが掴めてきたのか、3メートル離れた場所からでも矢を敵に当てることができていた。


 アヤノはスキル『イチゴ大福』を使った。彼女の頭上に皿に載ったイチゴ大福のグラフィックが起こる。パーティ全員の攻撃速度が飛躍的に上昇した。



 ……これは使えるスキルだな。



 シュウジは何度も何度もオークファイターを斬った。『ダークネスブロー』を多用して、ダメージを与え続ける。


 ズバンッ


 会心の一撃が出て、オークファイターの武器が破壊された。相手のHPがゴリッと削れていた。そこにハルオがバーニングアローを撃った。オークファイターが倒れる。少し時間がかかってしまったが、危なげなくモンスターを倒した。


 シュウジは冷静に状況把握に努めた。モンスターを倒すことはできたが、何匹も集まってこられるとさすがにキツいだろう。


 シュウジは振り向いて叫ぶ。


「みんな! 敵が硬いからゆっくり行くぞ。決して前に出るな」


「かしこみりあ」


「かしこあやのですっ」


「かしこはるおだぜー」


「ハルオには真似されたくないです」


「集中して行くぞ!」


 次に目の前に来たのはドワーフ、ドワーフソルジャ―、ドワーフメイジの三体だった。シュウジはすぐに『シールドエンチャント』を使う。四つの盾が体の周りを回った。ダメージを50%カットできるスキルである。


 遠距離攻撃ができるドワーフメイジから倒すべきだろうな。そう思い斬りかかる。しかしその間にもドワーフとドワーフソルジャーの攻撃が彼に襲いかかった。シュウジはペットアビリティにより攻撃時HPを吸収できるのだが、それでも自分のHPがぐんぐんと減った。やはり新しいフィールドのモンスターは攻撃力が強い。


 アヤノが唱えた。


「プリンアラモード! ですわっ」


 彼女の頭上に深皿に載ったプリンアラモードのグラフィックが起こる。パーティ全員にオレンジ色のバリアが出現した。ダメージ全カットされた。



 ……これは、何て強いスキルだ!



「ナイスだ! アヤノ」


「続けて『イチゴ大福』ですっ」


「すごいすごい、アヤノちゃんすげーぜー!」


「ハルオもきりきりと働くが良いですよー!」


 バリアの効果は五秒間だった。しかし五秒で充分であった。シュウジたちはドワーフメイジを倒し、次にドワーフソルジャーへと攻撃を向ける。会心の一撃が出てドワーフソルジャーの武器を破壊した。そのおかげで被ダメージがぐんと下がり、二体のモンスターをやがて倒しきる。


 そこでシュウジの体に白い光が立った。レベルが上がったサインである。


 彼はまた後ろを振り向いた。


「よしみんな! 今日はここで脳死狩猟をしよう」


「脳死するまでやるですか!?」


「いいねー、シュウジくん! 俺も一緒に脳死するぜー」


「かしこあやのですっ」


「よし。またゆっくりと行くぞ」


 そしてシュウジたちは昼食の時間になるまで、草原での狩りを続けたのだった。昼になるとまた割烹アジサイに行き、食事を摂った。その後でまた草原に戻ってきて、狩りを再開する。夕方になるとみんなのレベルが15以上に上がっていた。敵の攻撃パターンが読めてきたこともあり、レベル上昇によるステータスアップもあり、おかげで最後の方は敵を余裕で倒していた。



 ……それにしても、ミリアとハルオがいるおかげで敵を倒せているな。

 ……俺とアヤノは攻撃力が弱すぎなんだよな。



 夕日が山間に沈む前に、みんなで村へと戻ろうとした。そこで五人組の人間がアヤノに声をかけてきた。


「おいアヤノ! お前、違うギルドに入ったのかよ!?」と男。


「アヤノ! ひどいよ。私たちを見捨てたの?」と女。


「あら、ごきげんよう。タクジ様とミユウ様、それから元同ギルドメンバーの皆さま」


 シュウジはいぶかしげに眉をひそめた。アヤノの以前のギルド名はサブリナである。彼らはサブリナのメンバーだった人間たちということだろうか?


「アヤノ! どうして違うギルドに入ったんだ? 俺たちのギルドに入れば良いのに。そんなに俺たちのことが嫌いになったのか?」


「そうよ! それとも、まだあの事件を気にしているの?」


「皆さまのことを嫌いになった訳ではありません。ですが、わたくしは別の道を行きます。皆さまも、モンスターにはお気を付けください」


「おいアヤノ! 俺はなあ! お前のことが好きだったんだよ!」とタクジ。


「タクジ!? 何を言って?」とミユウ。


「タクジ様。ご縁が無かったということにしてください。もう、わたくしには関わらない方がよろしいかと」


「ふざけんなっ、俺がお前にどれだけ気にかけていたと思っているんだ! おいっ、お前らのギルドの団長は誰だ?」


「私です」ミリアが両手を腰に当てて前に出る。


「お前! アヤノは俺たちと一緒に【ゲーム界】を生きるんだ。アヤノをギルドから追放しろ!」


「そんなことする訳ないですっ。貴方たちはもうどっか行ってください。アヤノちゃんが困っています!」


「おいてめえ! 言うこと聞かねえと、ひどい目に遭わせるぞ」


「ひどい目? やってみれば良いですよ! 私たちはこう見えても強いです! 何なら、決闘でもしますですか?」


「決闘? 良ーいだろう。よしやってやるよ! その代わり! 俺が勝ったらアヤノをうちのギルドに入れる」


「では私たちが勝ったら、二度とアヤノちゃんに声をかけないで欲しいです」


「いいぜ。誰がやるんだ?」


「ほら、シュウジさん。出番ですよっ」


「そう言うと思ったんだよなあ」


 シュウジが頭の後ろを右手でかいて、ため息をついた。


 そして。


 村の出口付近で、シュウジとタクジが剣を構えて真っ向から対峙していた。どちらも村の武器屋で買った『切れ味の良いロングソード』を両手に持っている。相手のHPバーを見る。タクジ、レベル17。


「おいお前、お前のジョブは火力か? それともタンクか?」


「タンクだが、それがどうかしたか?」


「俺は火力だ。タンクはボス戦には必須だが、PVPには弱いはずだ。だから降参するなら今のうちだぞ?」


「降参? わざわざ降参するのなら、そもそもここに出て来ていないが?」


「ちっ、悪いけど、殺させてもらう!」


「殺せるものなら殺してみろ!」


 タクジが走り出した。剣を斜め上から振りかぶっている。シュウジは『シールドエンチャント』を発動させつつ、敵の攻撃を剣で受け止めた。タクジが唱える。


「『三連裂斬』」


「『ウインドアサルト』」シュウジも唱える。


 シュウジは一直線に5メートル突き進む。タクジを透き通って距離を取ることができた。タクジの三連撃は空を斬る。二人が振り向き、また顔を向け合う。


「はははっ、逃げるのが得意のようだな」


「タンクだからなあ、逃げるのもウリの一つだ」


「かかってこいよ! ぶっ潰してやるぜ」


「はあー、面倒くせえなあ」


 シュウジが歩き出す。剣を下段斜めに構え、突撃した。力任せに剣を下から切り上げる。


「うおらっ」


「ははははっ、なんだその隙だらけな攻撃は!」


 シュウジの大ぶりの攻撃は挑発である。タクジはここが勝負時と思い、何度も剣を振るった。シュウジは頑なに防御をし、剣で剣を弾く。


「何だ何だ何だ!? 防戦一方じゃねーか。おめー馬鹿か?」


「馬鹿はお前だ」

 

 ズバンッ! バキンッ。


 やっと出てくれた会心の一撃がタクジの刀身を根元から砕いていた。


「な、なんだとおぉぉぉぉおおおおお!」


「『ダークネスブロー』」


 シュウジがタクジにスキルを使う。この【ゲーム界】は傷がついたり服が破れたりはしないが、相手のHPは減っていた。シュウジは何度も何度もタクジに『ダークネスブロー』を浴びせる。


「く、くそおぉぉ、くそおぉぉ」タクジが両手をグーにして向かってくる。まだやるつもりのようだ。


 ちなみに武器が壊れると、一部のスキルが使用できなくなる。例えば先ほどタクジの使った『三連裂斬』は剣ありきのスキルだ。剣が壊れてしまったので、また武器を装備するまで使うことはできない。


「お前は雑魚だな」


 シュウジがつぶやくように言った。そしてタクジのHPバーが無くなる寸前だった。


「もうやめてよ!」とミユウ。


「シュウジさん、そこまでです」とミリア。


 シュウジは、ふうと息をついて攻撃をやめた。「どーも」と言って仲間の元に歩いて戻っていく。シュウジの代わりに団長のミリアが前に出て来た。


「タクジさん、もうアヤノちゃんに声をかけないでくださいです。良いですね」


「わ、分かったよ! 分かった! 分かったつってんだろ!」


 タクジは四つん這いであり、精神的にボロボロな様子だ。


 シュウジの右腕のそでをアヤノがつかんだ。


「シュウジ様、ありがとうございます。このご恩はわすれません」はにかんだ赤い笑顔である。


「いいんだよ。別に」シュウジはまんざらでも無い苦笑を浮かべた。


 ミリアが右手を上げた。


「みんなー、食堂へ行くですよー」


「おう」


「シュウジくんは強いぜー」


「ごきげんよう、元ギルドメンバーの皆さま」


 そしてシュウジたちは夕食を摂りに行くのであった。



 ◇◇◇


 名前  シュウジ   詳細

 レベル 16

 HP  6600   1600(基礎値)+5000(ステータスポイント50消費)

 攻撃力 60     48(基礎値)+12(武器)

 防御力 290    {48(基礎値)+10(防具)}×5(守りの礎LV2)

 素早さ 48

 魔攻  16

 魔防  290     {48(基礎値)+10(防具)}×5(守りの礎LV2)

 運   100    0(基礎値)+100(ステータスポイント100消費)


 会心の一撃率  10%(運値1につき0,1%増加)

 レアドロップ率 10%(上に同じ)

 移動力     100%


 アクティブスキル 『ウインドアサルト』『シールドエンチャント』『ダークネスブロー』

 パッシブスキル  『守りの礎(効果:防御力、魔防2倍)』

 セットスキル   スロット1『ウインドアサルトLV2』

          スロット2『守りの礎LV2(効果:防御力、魔防5倍)』

          スロット3『ダークネスブロー』

          スロット4『シールドエンチャント』

          スロット5『なし』

          スロット6『なし』


 ユニークスキル  『思考力』


 武器  『切れ味の良いロングソード(攻撃力+12)』

 防具  『オーク皮の帽子』『オーク皮の鎧』『オーク皮のグローブ』『オーク皮のベルト』『オーク皮の靴』(合計 防御力+10 魔防+10)



 スキン 服:白銀の王子様

 ペット 月夜のニャン太郎(ペットアビリティ:HP吸収。闇ダメージ増加率2倍)


 選択中の変身モンスター メリーグーテル


 注 『勇者』はレベルアップごとにHPが100上がる。ステータスポイントをHPに1振るごとに100上がる。また、シュウジはレベルアップごとに魔攻と運以外のステータスが3上がる。魔攻は1上がり、運は全く上がらない。


 ◇◇◇




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