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1の12 ミリアのネタ帳



 【ミッドベル村、初心者の訓練場】



 わら人形の案山子が揺れている。素手で叩いているのはハルオである。あと二百回も叩けば、目標の一万回目だった。それを終えなければ、ペットモンスターのクエストが発生しない。シュウジがそう教えてくれた。ハルオは一生懸命グーパンチを放つ。


 叩き始めてから二時間も経過しただろうか。ドンッ、と効果音がして、目の前に文字が表示される。



 ――クエストクリア――

 ――ミッドベル村の全てのクエスト解放――



 ……ほ、本当だったんだ。

 ……すごい。



 ハルオの手元に青い宝石、ラピスが降ってくる。両手で受け止めて、ステータスにしまった。武器に装着をする。時刻を見ると、午前11時半過ぎである。ハルオはステータスを閉じて、初心者の狩り場を離れた。



 ◆◆◆



 【ミッドベル村広場】



 シュウジとミリアは他にクエストが無いか、手分けをして村を探し回っていた。噴水前で、二人は合流した。双方共に生き生きとした笑みを浮かべている。



「シュウジさん、クエスト探しはどうでしたか?」


「おう、一つあったぞ。村長の家で、山の蛇神様を倒せっていうクエストだ」


「山の蛇神様ですか。それって、戦って勝てますかね?」


「分からん。戦ったら死ぬかもな」苦笑するシュウジ。


「シュウジさんが倒してくださいです」


「一人じゃ無理だろ、お前がやれ」


「かしこまりました」


「お! 言ったな」


「かしこ無理ました」


「……やるのかやらないのかどっちだ!?」


「無理ました」


「国語を小学校からやり直せ!」


「日本語は難しいのですよ」


「まだ俺をからかう気か?」


「からかうのは骨折れです」


「あっさりと認めるんだな」


「シュウジさん専用のネタ帳を作ったんですよ」ステータスからメモ帳を取り出すミリア。


「ネタ帳を作ってまでやることなのかそれ!?」


「えーと、シュウジさん弱点は」


「おいっ」


「エロに弱い」


「ま、まあ強くはない」


「素直じゃない」


「割と素直だと思うが?」


「ミリアが大好き」


「それはち……いや待て。ここで否定したら俺はひどい人間になるじゃないか」


「優しい」


「この世は弱肉強食だ」


「やはり素直じゃないです」ミリアがメモ帳を閉じた。ステータスにしまう。


「それで、お前の方はどうだったんだ?」


「何がですか?」


「クエスト探し!」


「あ、あーあ、一つありましたよ!」


「お! 場所はどこだ?」


「それはですね」


「ああ」


「秘密秘密秘密秘密ー」


「秘密ーのアッコちゃん!」


「ノリが良いですね」


「できる男、シュウジです」


「その調子でアッコちゃんのテーマソングを歌って欲しいです」


「それはマジ無理」


「できる男、シュウジですよね?」


「できないこともあるんだ」


「仕方ありませんねー」


「おい。馬鹿やってないで、真面目な話をしよう」


「ひみつのアッコちゃんを歌うにあたって何が不安ですか?」


「歌わせようとすな! くどいわ!」



 聞くと、ミリアは病院の病室でクエストを見つけたようだった。病気の老婆に薬を届けるというものである。二人はお互いの成果をたたえあう。やがて案山子のクエストを終えたハルオが合流した。


 ちょうどお昼時である。三人は大衆食堂に入った。午後からはミモネ山の洞窟に行く予定である。シュウジは思った。



 ……テイムの木が生えているのは、たぶんあの洞窟だよな。

 ……洞窟は暗いから、明かりを照らしてくれるアイテムが必要だな。この後買って行くか。



 ◇◇◇


 名前  ミリア


 レベル 11


 HP  1100

 攻撃力 12

 防御力 38

 素早さ 33

 魔攻  136

 魔防  38

 運   0


 ステータスポイント 0


 アクティブスキル 『エレキトリックショックサイン』『リカバー』『ブラッドペインマーク』

 パッシブスキル  無し

 セットスキル   スロット1『エレキトリックショックサインLV2』

          スロット2『リカバー』

          スロット3『ブラッドペインマーク』


 ユニークスキル  『死の宣告』


 武器  『初心者のマジックブック(攻撃力+1 魔攻+3)』

 防具  『皮の帽子』『皮のグローブ』『皮の鎧』『皮のベルト』『皮の靴』(合計 防御力+5 魔防+5)


 スキン お姫様ドレス


 ◇◇◇



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