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第1話 劣等感

巨大な「目」の下に、彼女は立っていた。

目を取り囲むのは、無数の目。

蠢く肉質な壁、壁、ピンク色のそれは建物や地面を覆っている。


ぶよぶよした浮腫のようなものがまとわりついているのだ。

そして、そこに埋め込まれているのは眼球。

血走った目がぎょろぎょろ動き、彼女のことを数千、数万も凝視している。


空は黒い。

どこまでも黒い。

その真上に、空全体を覆い隠すほどの眼球が、まるで太陽のように浮き上がり、あたりを照らしていた。


常軌を逸した空間。

普通でははかりえないような、そんな空間に、彼女は平然と立っていた。

年の頃は十三、四ほどだろうか。

長い白髪を、背中の中心辺りで三つ編みにしている。

可愛らしい顔立ちをしているが、その表情は無機的で、何を考えているのか分からないところがあった。


彼女は、眼前にぽっかりと空いた「穴」の前に進んだ。

穴は、肉の床が崩れ、内部に人間の体内に似たものが見える。

丁度食道を内視鏡で見るかのような感覚だ。

奥は曲がりくねって深く、よく分からない。


彼女は耳元に手をやった。

右耳の部分に、イヤホンつきの小型マイクがはまっている。

そのスイッチを動かして、彼女は口を開いた。


「ついたよ。この人の煉獄の入り口」

『OK、それじゃ、攻撃に遭う前にそこに入って、記憶を修正してくれ』


マイクの向こう側から、まだうら若い青年の声が聞こえる。


「…………」

『おい、みぎわ、聞いてるのか?』

「…………』


返事をせずに、彼女は周りを見回した。

いつの間にか、地面の肉質にも眼球が競り出して、

プツリ、と所々で音を立てながら、奇妙な汁を撒き散らしていた。


それら全てに凝視されながら、汀と呼ばれた少女は、

自嘲気味に、困ったように頭を掻いた。


「見つかっちゃった」


子供がかくれんぼで鬼に見つかった時のように軽い言葉だったが、

マイクの向こうの声は一瞬絶句した後、キンキンと響く声を張り上げた。


『すぐ戻れ! この患者はレベル4だぞ。入り口まで出てこれるか?』

「見つかっちゃったの。逃げられないの」


ゆっくりと、言い聞かすようにそう言って彼女はウフフと笑った。

その目は、声に反して笑っていなかった。

足元の眼球をブチュリと踏み潰し、彼女は両手を開いて大声を上げた。


「鬼さんこちら! 手の鳴る方へ!」


パンパンと手を叩く。


『こら、何してるんだ! おい、汀!』

「鬼さんこちら!」


ぶちゅり。

眼球を踏み潰す。


「手の鳴る方へ!」


裸足のかかとが、肉壁にめり込む。

パンパン。

また手を叩く。


瞬間、その「空間」自体がざわついた。

ぎょろりと空に浮かぶ眼球が、こちらを向く。

間を置かずに、汀を囲む壁から、眼球がまるで銃弾の雨あられのように吹き飛んできた。

汀は軽い身のこなしで、まるで曲芸師のようにくるりと後転してそれを避けた。

彼女が着ているものは病院服だ。

右から眼球が飛んできて、左の壁に当たって爆ぜる。

嫌な汁と血液のようなものが飛び散る。


まるでプチトマトを投げ合っているかのようだ。

汀を狙って、地面や壁から、次々と眼球が飛び出してきた。


くるくると少女は回る。

片手で地面を掴んで体を横に大きく回し、目の群れを避ける。


『遊ぶな!』


怒号が聞こえる。

今までぼんやりしていた表情は、まるで別人のように生き生きと輝いていた。

しかし、次の瞬間、眼球が一つ汀の脇腹に食い込んだ。


不気味な音を立てて爆ぜ、彼女の顔にパタタタッと音を立てて汁が飛び散る。

衝撃で汀はもんどりうって肉床を転がり、したたかに後頭部を壁にぶつけた。


「あうっ!」


小さな声で叫び声を上げる。

右脇腹で爆ぜた眼球は、ベットリとガムのように病院服に張り付き、次いでアメーバを思わせる動きで、ざわついた。


それが爪を立てた子供の手の形になり、汀の服をむしりとろうとする。

彼女は、口の端からよだれをたらしながら、しかし楽しそうにそれを払いのけ、また飛んできた眼球をくるりと避けた。


『お願いだからやめてくれ、汀。患者のトラウマを広げたいのか!』

「分かってる。分かってるよ」

『分かってないから言ってるんだ。汀、早く中枢を』


そこで汀はイヤホンのスイッチを切った。

そして彼女は、ゴロゴロと地面を転がる。


彼女を追って、眼球たちが宙を舞う。

それを綺麗に避け、汀は、地面にぽっかりと開いた穴の中に飛び込んだ。



一瞬視界がホワイトアウトした。

次いで彼女は、狭い、四畳半ほどの真っ白い、正方形の部屋に立っていた。

何もない部屋だった。

天井に蛍光灯が一本だけついていて、バチバチと異様な音を発している。


薄暗い空間の、汀の前には肌色のマネキンのようなものがあった。

それは体を丸め、体育座りの要領で頭を膝にうずめていた。

大きさは一般的な成人男性程だろうか。

どこにも継ぎ目がない、つるつるな表面をしている。


頭髪はない。

耳も見当たらない。

汀は無造作にその前に進み出ると、腰を屈めて、頭を小さな手で掴んだ。

そして顔を自分の方に向ける。


耳も、口も鼻もない。

ただ、一つだけ眼球がその顔の真ん中にあった。

眼球は虚空を注視していて、汀を見ようとしなかった。

汀は興味を失ったように頭を離した。

マネキンは緩慢に動くと、また頭を膝の間にうずめた。


「そんなに目が気になる?」


汀は静かに聞いた。


「あなたは、そんなに他人の目が気になるの?」


マネキンはゆっくりと頷いた。

何の音もない空間に、汀の声だけが響く。


「馬鹿ね」


汀はにっこりと笑った。

そしてマネキンの前にしゃがみこんだ。


「だから死にたいの?」


マネキンはまたゆっくりと頷いた。


「だから逃げたいの?」


マネキンはまた頷いた。

汀はまた微笑むと、その頭を両手で包むように持った。

そして眼球に、両手の親指を押し付ける。


「じゃあ見なきゃいいよ」


マネキンは痛がる素振りもみせず、ただ微動だにせず硬直していた。


「私が、あなたの目を奪ってあげる」


ぶちゅり、と指が眼球を押しつぶした。

そのまま指を、眼窟に押し込み、中身をかき回しながら汀は続けた。


「耳も、鼻も、口も、目も、そして心も閉ざして、逃げればいいよ」


眼窟から、どろどろと血液が流れ出す。


「私がそれを、許してあげる」


マネキンの手が動き、汀の首を掴んだ。

それがじわりじわりと、彼女の細い首を締め付けていく。

汀は、苦しそうに咳をしながら、ひときわ強く眼窟の中に指を突きいれた。


『ウッ』


部屋の中に、男性の苦悶の声が響き渡った。

マネキンの手がだらりと下がり、糸が切れたマリオネットのように足を広げ、壁にもたれかかる。


汀は拳を振り上げると、眼球がつぶれたマネキンの顔面に、何度も叩きこんだ。

血液が飛び散り、その度にビクンビクンと、魚のようにマネキンが震える。


やがて汀の病院服が、転々と返り血で染まり始めてきた頃、彼女は荒く息をつきながら、動かなくなったマネキンを見下ろした。


ダラダラと、原形をとどめていない顔面から血液が流れ出し、 白い床に広がっていく。

そして彼女は耳元のイヤホンのスイッチを入れ、一言、言った。


「治療完了。目をさますよ」



「……と言うことで、旦那様は一命を取り留めました」


眼鏡をかけた、中肉中背の青年が、柔和な表情でそう言った。

それを聞いた女性が、一瞬ハッとした後、両手で顔を覆って泣き崩れる。


「主人は……」


少しの間静寂が辺りを包み、彼女はかすれた声で続けた。


「主人は、何を失くしたのですか……?」

「視力です」


何でもないことのように、青年はそう言ってカルテに何事かを書き込んだ。


「視力?」


信じられないといった顔で女性は一旦停止すると、白衣を着た青年に掴みかからんばかりの勢いで大声を上げた。


「目が見えなくなったということですか!」

「はい。しかし一命は取り留めました。自殺病の再発も、もうないでしょう」

「そんな……そんな、あまりにも惨過ぎます……惨すぎます!」


青年は右手の中指で眼鏡の中心をクイッと上げると、またカルテに視線を戻した。

柔和な表情は、貼りついたまま崩れなかった。


「まぁ……後は区役所の社会福祉課にご相談なさってください。こちらが、ご主人が今入院されている病院です。面会も可能です」

「先生!」


女性が机を叩いて声を張り上げた。


「主人の目が見えなくなって、一体これからどうやって生活していけというんですか! 私達に、これから一体どうしろと……」

「ですから、それから先は私達の仕事の範疇外ということで。誓約書にありましたでしょう。命のみは保障いたしますと」

「それは……」

「脳性麻痺の疑いもありませんし、植物状態になったわけでもありません。ただ、『目が見えなくなった』だけで済んだという『事実』を、私は貴女にお伝えしたまでです」

「…………」

「それでは、指定の口座に、期日までに施術費用をお支払いください。本日はご足労頂き、ありがとうございました」


話は終わりと言わんばかりに、青年は軽く頭を下げた。



散々喚き散らした女性を軽くあしらい、診断室を追い出した青年は、息をついてカルテをベッドの上に放り投げた。

八畳ほどの白い部屋だった。

見た目は普通の、内科の診断室に見える。


彼は、看護士もいない部屋の中を見回し、立ち上がってドアを開け、診察を受けにきた患者もいないことを確認すると、大きく伸びをした。

そして、診断室の脇にあるドアを開ける。


中はやはり八畳ほどのスペースになっており、ディズニー系統のカーペットや壁紙など、年頃の女の子のコーディネートがなされていた。

部屋の隅には車椅子が置かれ、端の方にパラマウントベッドが設置されている。


上体を浮かせた感じで、そこに十三、四ほどの少女が目を閉じていた。

テディベアの人形を抱いている。

腕には何本も点滴のチューブが刺されている。

青年はしばらく少女の寝顔を見つめると、白衣のポケットに手を入れて、部屋を出ようと彼女に背を向けた。


「起きてるよ」


そこで少女が、目を開いて声を発した。

青年は振り返ると、一つため息をついて口を開いた。


みぎわ、もう寝る時間だろ」

「隣がうるさかったから」

「悪かったよ。もう寝ろ」

「怒らないの?」


問いかけられ、青年……高畑圭介たかはたけいすけは、少し考え込んでから言った。


「お前は立派に命を救っただろ。怒るつもりはないよ」

「そうなの。なら、いいの」


テディベアを抱いて、汀がにっこりと笑う。

そこには快活そうな表情はなく、げっそりとやせこけた、骨と皮だけの少女がいるばかりだった。


汀は、上手く体を動かすことができない。

下半身不随なのだ。

左腕も動かない。

圭介が、彼女の生活のサポート、つまり介護を行っている。


他にもいくつかの病気を併発している汀は、一日の殆どを横になって過ごす。

それゆえに、部屋の中にはテレビやゲーム機、漫画や本などが乱雑に置かれて、積み上げられていた。


「今度は何を買ってくれるの?」


汀がそう聞くと、圭介は軽く微笑んでから言った。


「3DSで欲しいって言ってたゲームがあるだろ。あれ買ってきてやるよ」

「本当? 嬉しい」


やつれた顔で汀は笑った。

それを見て、圭介はしばらく考えた後、発しかけた言葉を無理やりに飲み込んだ。


「…………」

「疲れたから、もう寝るね」


汀がそう言う。

彼は頷いて、ベッドの脇にしゃがみこむと、汀の手を握った。


「薬は飲んだか?」

「うん」

「無理して起きなくてもいいからな。目を覚ましたらブザーを鳴らせ」

「分かった」


汀の頭を撫でて、圭介は立ち上がった。

そしてゆっくりと部屋を後にする。

背後から少女の寝息が聞こえてきた。



その「患者」が現れたのは、それから三日後の午前中のことだった。

夏の暑い中だというのに長袖を着た、女子高生と思われる女の子と、その母親だった。


圭介は、座ったまま何も話そうとしない女の子と、青ざめた顔をしている母親を交互に見ると、部屋の隅の冷蔵庫から麦茶を取り出して、紙コップに注いだ。

そして二人の前に置く。


「どうぞ。外は暑かったでしょう?」


女の子に反応はない。

何より彼女の両手首には、縄が巻きつけられ、がっちりと手錠のように動きを拘束していた。

女の子の目に生気はなく、うつろな視線を宙に漂わせている。


圭介はしばらく少女の事を見ると、彼女の頬を包み込むように持って、そして目の下を指で押した。

反応はない。


「娘は……」


母親は麦茶には見向きもせずに、青白い顔で圭介にすがりつくように口を開いた。


「先生、娘は治るんでしょうか?」

「自殺病の第五段階まで進んでいますね。極めて難しいと思います」


柔和な表情を崩さずに、彼はなんでもないことのようにサラリと言った。

母親は絶句すると、口元に手を当てて、そして大粒の涙をこぼし始めた。


「赤十字の病院でも……同じ診断をされました。もう末期だとか……」

「はい。末期症状ですね。言葉を話さなくなってからどれくらい経ちますか?」

「四日経ちます……」

「絶望的ですね」


簡単にそう言って、圭介はカルテに何事かを書き込んだ。


「ぜ……絶望的なんですか!」


母親が悲鳴のような声をあげる。


「はい」


彼は頷いて、カルテに文字を書き込みながら続けた。


「隠しても何もあなた方のためになりませんので、私は包み隠さず言うことにしているんです。自殺病は、発症してから自我がなくなるまで、およそ二日間と言われています。第四段階での場合です。今回のケースは、その制限を大きく逸脱しています」


彼は立ち上がってFAXの方に行くと、送られてきた資料を手に取った。

それをめくりながら言う。


「担当は赤十字病院の大河内先生からの紹介ですね。知っています。どうして入院させなかったんですか?」

「そ、それは……娘が入院だけは嫌だと言い張って……」

「その結果命を落とすことになる自殺病の患者は、全国で一日に平均十五人と言われています」


柔和な表情のまま圭介は続けた。


「日本に自殺病が蔓延するようになって、もう十年ほど経ちますが、一向にその数は減らない。むしろ増え続けています。そして、娘さんもその一人になりかかっています」


資料をデスクの上に放って、彼は椅子に腰掛けた。


「どうなさいますか?」


穏やかに問いかけられ、母親は血相を変えて叫んだ。


「どうって……ここは病院でしょう? 娘を助けてください!」

「それは、どのような意味合いで?」


淡々と返され、母親は勢いをそがれ一瞬静止した。


「意味合い……?」

「娘さんを元通りに戻すのは、無理です。自殺病第五段階四日目の生存確率は、およそ十パーセントほどと言われています。生かすことも困難な状況で、はいできましたと、魔術師のように娘さんを戻すことは不可能です」

「それじゃ……」

「しかし」


一旦そこで言葉を切って、圭介は眼鏡を中指でクイッと上げた。


「私どもは、その十パーセントを百パーセントにすることだけは可能です」

「どういう……ことですか?」

「命のみは保障しましょう。命のみは」


二回、含みを加えて言うと、圭介は微笑んだ。


「その代わり、娘さんは最も大切なものをなくします」

「仰られている意味が……」

「言ったとおりのことです。植物状態になるかもしれませんし、歩けなくなるかもしれない。喋れなくなるかもしれないし、記憶がなくなって、貴女のことも思い出せなくなるかもしれない。具体的にどうとはいえませんが」

「……そんな……どうしてですか?」

「娘さんの心の中にあるトラウマを、物理的な介入によって消し去ります。その副作用です」


端的にそう答え、圭介はデスクから束のような書類を取り出した。


「それでは、今から契約についてご説明します」

「契約?」

「はい。ここで見聞きしたことについては他言無用でお願いします。その他、法律関係のいくつか結ばなければいけない契約があります」

「…………」

「それと」


母親に微笑みかけて、圭介は言った。


「当施術は、保険の対象外ですので、その点もご承諾いただきたいのですよ」



「急患だ。即ダイブが必要だ」


車椅子を押しながら、圭介が言う。

そこにちょこんと乗せられた汀は、手元の3DSのゲームを凝視しながら口を開いた。


「今日はやだ」

「ゲームは後にしろ。マインドスイーパーの資格があるんなら、ちゃんと仕事をしろ」

「でも……」

「でももにべもない。ゲームは後だ」


そのやり取りをしながら、彼らは施術室と書かれた部屋の前に止まった。

母親が、真っ赤に目を泣き腫らしながら、立ち尽くしている。


彼女は車椅子の上で3DSを握り締めている小さな女の子を見ると、怪訝そうに圭介に聞いた。


「この子は……」

「当医院のマインドスイーパーです」


施術室の扉を開けながら、圭介は言った。

母親は絶句した後、圭介に掴みかかった。


「何をするんですか」


それを軽くいなした圭介に、彼女は金切り声を上げた。


「娘の命がかかっているんですよ! それを……それをこんな……こんな小娘に!」


汀が肩をすぼめ小さくなる。

怯えた様子の彼女を見て、圭介は白衣を直しながら、淡々と言った。


「……お母様は、待合室の方で待たれてください。マインドスイープはとても繊細な動作を要求します。この子を刺激しないでください」

「からかわないで! こんな子供に何が出来るって言うんですか!」

「…………」

「娘を殺したら、あなたを殺して私も死んでやる! ヤブ医者!」

「待合室の方に」


圭介はそう言って待合室を手で指した。

彼を押しのけ、母親は施術室に入ろうとした。


「私も同席するわ。娘を妙な実験の実験台に……」

「入るな」


そこで、圭介が小さな声で呟いた。


「何を……」

「二度同じことを言わさないでください。貴女が『邪魔』だと言っているんです」


ネクタイを直し、彼はメガネを中指でクイッと上げた。


「刻一刻と、娘さんの命は削られていきます。今この時にも、自殺を図る可能性が高い。あなたは、私達の施術を邪魔して、娘さんを殺したいのですか?」

「…………」


目を剥いた母親を、無理やりに押しのけ、圭介は汀の乗った車椅子を施術室に押し入れた。


「その場合、殺人罪が適用されますので」


柔和な表情を崩さずに、彼は施術室のドアをゆっくりと閉めた。


「待合室で、お待ちください」


ガチャン、と重い音を立ててドアが閉まった。



「やれるか、汀?」


そう聞かれ、汀は小さく震えながら圭介を見上げた。


「やだ。私あの人の娘なんて治したくない」

「我侭を言わないでくれ。人の命を、救いたいんだろ?」


そう言って圭介は、汀の頬を撫でた。


「これが終わったら、びっくりドンキーにでも一緒に飯を食いに行こう。やってくれるな?」

「本当?」

「ああ、本当だ」

「うん、私やる。やるよ」


何度も頷いた汀の頭をなで、圭介は施術室の中を見回した。

十六畳ほどの広い部屋には、所狭しとモニターや計器類が詰め込んである。


その中心に、ベッドが一つ置いてあった。

先ほどの女の子が、両手足をベッドの両端に縛り付けられ、口に猿轡をかまされた状態で横たえられている。


そんな状態にも拘らず、女の子には特に反応がなかった。

汀はその顔を覗き込むと、興味がなさそうに呟いた。


「もう駄目かも」

「そう言うな。特A級スイーパーの名前が泣くぞ」

「だって駄目なものは駄目だもん」


頬を膨らませた汀を無視して、圭介は計器類の中から、ヘルメットのようなものを取り出した。

黒いネットで作られていて、顔面全体を覆うようになっている。


それを女の子に被せ、同じものを汀に持たせる。

そして、彼は汀の右耳にイヤホンとマイクが一体になったヘッドセットを取り付けた。


「何か必要なものはありそうか?」

「預かってて」


3DSを彼に渡し、汀はヘルメット型マスクを被った。

そして車椅子の背もたれに体を預ける。


「何もいらないよ」

「そうか。時間は十五分でいいな」

「うん」


そして圭介は、ラジオのミキサーにも似た機械の前に腰を下ろした。

それらの電源をつけ、口を開く。


「麻酔はもう導入してある。後はお前がダイブするだけだ」

「うん」

「この子の、『意識』の中にな」


含みを持たせてそう言い、圭介はにっこりと笑った。


「それじゃ、楽しんでおいで」

「分かった。楽しんでくるよ」


そう言って、汀は目を閉じた。



汀は目を開いた。

彼女は、先ほどまでと同じ病院服にヘッドセットの姿で、自分の足で立っていた。

動かないはずの、下半身不随の体で、足を踏み出す。


そこは、四方五メートルほどの縦長の空間だった。

螺旋階段がぐるぐると伸びている。

その中ほどに、汀は立っていたのだった。


古びた螺旋階段は、木造りで動くたびにギシギシと音を立てる。

閉塞的なその空間は、下がどこまでも限りなく続き、上も末端が見えないほど伸びていた。

壁には矢印と「避難場所」と書かれた電光掲示板がいくつも取り付けられ、それぞれが別の箇所を指している。


良く見ると螺旋階段の対角側の所々に、人一人通れそうなくぼみが出来ており、そこに鉄製の扉がついていた。

汀は手近な避難場所と指された鉄製の扉を空けた。


中はただのロッカールームのようになっていて、何も入っていない埃っぽい空間だ。

そこから出て、扉を閉めてから汀はヘッドセットのスイッチを入れた。


「ダイブ完了。多分、煉獄に繋がるトラウマの表層通路部分にいるんだと思う」

『そうか。どんな状況だ?』


耳元から聞こえる圭介の声に、汀は小さくため息をついて答えた。


「上と下に、上限と下限がない通路と、横に隠れる場所。多分、何かから心を守ろうとしてるんだと思う。扉が一杯あるの。どれかが中枢に繋がってるんじゃないかな」

『お前にしては曖昧な見解だな』

「話してる暇がないからね」

『どういうことだ?』


そう言った圭介の声に答えず、汀は螺旋階段の下を見た。

黒い服を着た修道女のような女の子が二人、ギシ、ギシ、と階段をきしませながら、昇って来るところだった。


何かを話しているが、聞こえない。

顔も確認は出来ないが、マネキンではないようだ。


「トラウマだ」


そう呟いて、汀は近くの避難場所のドアを開けて、そこに体を滑り込ませた。

そして静かにドアを閉める。

ヘッドセットの向こうで圭介が息を呑んだ。


『強力なものか?』

「うん。かなり。見つかると厄介かも。昇ってくるから、多分下ればいいんだと思う」


しばらく息を殺していると、二人の女の子は、汀が隠れているドアの前を通り過ぎた。

声が聞こえた。


「でね、国語の小山田。美紀ともヤったらしいよ」

「えぇ? 本当? 何で美紀なの?」

「さぁねぇ。小山田って優しいじゃない。頼まれて仕方なくってことじゃないかな」

「何それウケる。自分から犯してくれって頼んだってこと?」

「バカの考えることはわかんないよ。小山田も災難だよね。よりにもよって美紀なんかとさぁ」


声が聞こえなくなった。

汀はしばらくしてドアをゆっくりと開け、そこから体を静かに引き抜いた。

女の子達は、上に向かって歩いて行っている。

汀はそれを確認して、螺旋階段を小走りで下り始めた。


『慎重に行けよ。この患者は、レベル5だ』

「うん」


小声で頷いた汀の目に、また二人組の女の子達が上がってくるのが見えた。

先ほどと同じように、避難場所に隠れる。


「でね、国語の小山田、美紀ともヤッたらしいよ」

「えぇ? 本当? 何で美紀なの?」


同じ会話だったが、違う声だった。


「美紀ってさ、地味だし、頭も悪いし、何もいいところないじゃん。だから、小山田を味方につけようとしたんじゃないかな」

「えぇ? 最悪。小山田、あいつヤリ捨て名人なんだよ? 美紀、バカ見ただけじゃないかなぁ」

「カンニングの話もあったじゃない。あの時の試験の担当、小山田だったらしいし」


声が聞こえなくなった。

また、汀は窪みから出て階段を降り始めた。


『随分と明確なトラウマだな。珍しい』


圭介の声に、汀は答えなかった。


「ユブユブユブユブユブユブユブ」


突然、奇妙な呟きとともに、また女の子二人組が上がってくるのが見えたからだった。

隠れた彼女の耳に、雑音交じりの声が聞こえる。


「ユブ……ザザ……先生…………やめ……」

「ザザ……ユブブ……ブブ……なんで美紀なの?」

「美紀! 山内美紀! おとなしくしろ!」

「ユブ……ザザザ…………ユブユブ……」


汀はそれを聞いて、今度は隠れずに、螺旋階段の中央部分に足をかけ、そして女の子達をやり過ごすように飛び降りた。


猫のようにふわりと着地し、汀は息をついた。

そこで、彼女の耳に、螺旋階段全体に声が反響したのが聞こえた。


「ゆぶユブユブユブゆぶユブユブゆぶ」


上を見た汀が、一瞬停止した。

今まで昇った女の子達が、全員一塊になって汀のことを見下ろしていたのだ。

そして「ユブユブ」と全員が呟いている。


その女の子達には、顔がなかった。

顔面にあたる場所に、「敵」という刺青のような文字が黒く書いてある。

それを確認して、汀は螺旋階段の中央部分、その空間に飛び込んだ。


それと、女の子達が手に持ったバケツの中身を、下に向けてぶちまけたのはほぼ同時だった。

バケツの中身に入っていた液体が飛散する。

それが当たった階段が、ジュゥッ! と焼ける音を立てて黒い煙を発し、そして溶けた。


液体の落下よりも、汀の落下の方が間一髪で早かった。

どこまでも落ちていく。

まるで、不思議の国に行くアリスのようだ。


汀は溶けてくる螺旋階段を見上げ、そしてそのつくりが、下に行くほど雑になっているのを目にした。

ささくれ立って、ボロボロの階段になっていく。


そんな中、一つだけピンク色に光る電光掲示板があった。

汀はその矢印が指すドアを確認すると、螺旋階段の手すりに手をかけ、体操選手がやるようにクルリと回った。

そしてドアを開け、中に滑り込む。


そこで、彼女の視界はホワイトアウトした。



彼女は、映画館に立っていた。

薄暗い劇場は狭く、百人も入れないほどの小さな映画館だ。

そこに、全員同じ髪型をしたマネキン人形が、同じ姿勢で背筋を伸ばし座っていた。


ビーッ、と映画の始まりを示す音が鳴る。

汀は最前列の中央に一つだけあいた席に、腰を下ろした。

3、2、1とスクリーンに文字が表示され、そして古びたテーブが再生される。


そこには、今汀がダイブしている女の子の顔が、アップで映されていた。

泣きじゃくって、必死に抵抗している。


「先生! 先生やめてください! こんなこと……こんなこと酷すぎます!」


観客のマネキン達から、男の笑い声が、一斉にドッと漏れた。


「先生! 先生やめてください! こんなこと……こんなこと酷すぎます!」


また笑い声が溢れる。

汀は興味がなさそうに、連続再生される女の子の顔を見て、そして立ち上がった。


彼女が立ち上がると同時に、ザッ、と音を立ててマネキン人形が立ち上がった。

それを見て、汀はにやぁ、と笑った。


「鬼さんこちら! 手の鳴る方へ!」


パンパンと手を叩いて、彼女は手近なマネキン人形を殴り飛ばした。

およそ少女の力とは思えないほどの威力で、マネキン人形の首が吹き飛んでいき、スクリーンの中央に大きな穴を開ける。


『汀、今回は危険だ。遊ぶんじゃない!』

「あは、あはは!」


汀は笑った。

マネキン人形達が、彼女の四肢を拘束しようと動き出す。


<あは、アハハ!>


まるで汀の声を真似るように、マネキン人形達も笑った。


「やめられないよ! だって楽しいんだもん! 面白いんだもん!」


汀はそう言って、また手近なマネキン人形を殴った。

その胸部に大きな穴が開き、ぐらりと倒れる。


「私はここでは最強なんだ! 強いんだ! こんなに楽しいゲームって、ねぇないよ!」

『汀、しっかりしろ!』


圭介の声を聞いて、汀はハッとした。

そして動悸を抑えるように、胸を掴んで荒く息をつく。


雪崩のように襲い掛かるマネキン人形達の手をかいくぐり、彼女はスクリーンに向かって飛び込んだ。

大きな音を立てて、布製のスクリーンが破れる。

向こう側に突き抜け、また汀の視界はホワイトアウトした。



気づいた時、汀はマネキン人形が所狭しと果てしなく投棄された、その山のような場所にうつぶせに倒れていた。

映画館のマネキン人形と同じように、全て同じ髪型をしている。


それらは腕をもがれたり、顔面を破壊されたり、全てがどこかしらを欠損していた。

共通しているのは、顔には「男」と書かれていること。


空には穴が開き、そこが汀が穴を開けた映画館のスクリーンらしく、ザワザワという騒ぎ声と笑い声が聞こえる。

少しして、汀は果てしなく広がる遺棄された人形達を踏みしめて、立ち上がった。


一箇所だけ、スポットライトが当たったように明るくなっている。

そこに、全裸の女の子が、何かを抱きしめるようにして膝まづいていた。

女の子の全身には、青黒い切り傷がついていて、そこから血がにじんでいる。


人形達を掻き分け、汀は女の子に近づいた。

そして、その頬を掴んで自分の方を向かせる。

やはり顔面はなかった。

そこには「嘘」と書いてある。


「全てを嘘にして逃げたいの?」


そう言って、汀はにっこりと笑った。


「全てを壊して、そうやって底辺で這い蹲っていたいの?」


女の子の反応はなかった。

汀は少しだけ沈黙すると、さびしそうに一言、言った。


「それが、一番楽なのかもしれないんだよ」


答えはない。


「全てを嘘にして、全てを否定して、一番下で這い蹲ってたほうが、幸せかもしれないよ」


女の子の存在しない眼窟から、涙が一筋垂れた。


「私がそれを許してあげる」


彼女はそう言って、女の子が大事そうに抱いていた、丸い玉を手に取った。

それは白く光り輝いていて、「真実」と書いてある。


「無理して真実になんて、気づかない方がいいよ」


また、汀は微笑んだ。


「だって、人間なんてそんなものだもの」


ぶちゅり。

丸い玉を、彼女は潰した。

どろどろとそこから血液が流れ落ちていく。


「治療完了。目をさますよ」


少し沈黙した後、汀はそう言った。



診察室で硬直している母親を尻目に、圭介は黙々とカルテに何事かを書き込んでいた。


「お話の意味が……分からなかったんですが……」


母親がかすれた声で言う。


「ですから、堕胎しました」


圭介は顔を上げることなく、淡々とそう言った。


「今現在、娘さんは赤十字病院の大河内先生のところで入院しています。詳しいお話は、彼からお聞きください」

「娘は……妊娠していたと言うんですか?」

「はい。正確に言うと、妊娠の極々初期だったと考えられます」

「どういうことですか!」


母親が絶叫した。

圭介は立ち上がった彼女に座るように促し、柔和な表情のまま、続けた。


「この事実は、もう娘さんの頭の中から消え去っています。それを掘り起こすのはそちらの勝手ですが、私はあまりオススメはしませんね」

「…………」

「自殺病の再発が考えられますから」


カルテに文字を書きながら、彼は続けた。


「娘さんは、小山田という教師に暴行を受け、彼の子供を孕んだ状態だったようです。私どもは、自殺病を快癒させるために、その原因のトラウマとなっていた子供を、記憶ごと堕胎させました」

「ひ……人殺し!」


立ったまま母親が悲鳴を上げる。

圭介は表情を変えずに、椅子に座ったまま肩をすくめた。


「一番大事なものをなくすと、そう言ったではありませんか。あなたもそれは同意しているはずです」

「でも……でも!」

「それに」


一指し指を一本立てて、圭介は言った。


「自殺病にかかった者は、決して幸福にはなれません。そういう病気なのです」

「なら……なら先生は……」


母親の目から涙が落ちる。


「どうして、娘を助けたのですか……」


圭介は母親から目を離し、カルテに判子を押した。


「命のみを保障するのが、私どもの仕事ですから」



びっくりドンキーの一番奥の席、そこに汀はちょこんと座っていた。

余所行きの服を着ていて、落ち着かない顔で周囲を見回している。

圭介がレジから戻ってきて、ピンクパンサーの絵柄が入ったグラスを二つ、テーブル前に置いた。


「買ってきた。一緒に使おう」

「おそろい?」

「ああ」


汀はそこで、やつれた顔でにっこりと笑った。


「ありがとう」


そこで店員……オーナーが歩み寄って、ゆっくりと頭を下げた。


「ようこそおいでくださいました、高畑様。ご注文は、いかがなさいましょうか?」

「いつものもので」

「かしこまりました」

「この子は肉は食べられませんから、メリーゴーランドのパフェを一つください。すぐに」

「はい。少々お待ちくださいませ」


オーナーが下がっていく。

汀は周りを見回すと、軽く顔をしかめた。


「何か……タバコの臭いがする」

「ここは禁煙席だよ。一番喫煙席から離れてる場所を選んだんだ。我慢しろよ」

「うん」


汀は、手に持った3DSを落ち着きなく弄り、そして一言呟いた。


「圭介」

「ん?」

「私、人、殺しちゃった」


圭介はそれを聞いて、何でもないことのように普通に水を飲み、笑った。


「それがどうした?」

「ん、それだけ」

「メリーゴーランドでございます」


そこでオーナーが来て、大きなパフェを汀の前に置く。

汀は打って変わって目を輝かせ、動く右手でぎこちなくスプーンを掴んだ。


「いただきます」

「残ったら俺が食うから。ゆっくり食えな」

「うん」


無邪気にアイスクリームとホイップクリームを頬張る汀に、圭介は淡々と言った。


「ま、患者の命を助けることは出来たんだ。上々だよ」

「上々?」

「ああ、上々だ」

「本当に?」

「ああ。本当だ」


圭介は微笑んで、手を伸ばして汀の頬についたクリームを拭った。


「お前は何も考えず、自由に楽しんでればいいんだ。それが、『人を助ける』ことに繋がってるんだから」

「私、あの子のこと助けられたのかな?」

「ああ、助けたよ」


頷いて、圭介は続けた。


「お前は、命を助けたよ」



暗い診察室の中、圭介は隣の部屋……汀の部屋の明かりが消えていることを確認して、携帯電話を手に取った。

そして番号を選んで、電話をかける。


今日の遠出で、汀はとても疲れているはずだ。

深い眠りに入っていることは確認している。


「大河内か」


汀に話しかけているときとは打って変わった、暗い声で圭介は口を開いた。


『こんな時間に何の用だ、高畑?』

「汀に投与する薬の量を増やしたい」

『いきなりだな。何かあったのか?』


ピンクパンサーのグラスに注いだ麦茶を飲み、圭介は続けた。


「今回のダイブの記憶を消したいんだ」

『堕胎の件か』

「汀がそれを気にかけている発言をした。今後の治療に関わってくるかもしれない」

『分かった。至急手配しよう』

「…………」

『高畑』


電話の向こうの声が、淡々と言った。


『汀ちゃんは、普通の、十三歳の女の子だ。それを忘れるなよ』

「普通? 笑わせるなよ」


圭介は暗い声で、静かに言った。


「化け物さ。あの子は」

『その化け物を使って仕事をしているお前は、一体何だ?』

「普通の人間さ」


電話の向こうからため息が聞こえる。

しばらくして、圭介は麦茶を飲み干してから、ピンクパンサーのグラスを置いた。


『いいか高畑、汀ちゃんは……』

「あの子は俺のものだ。もう赤十字のサンプルじゃない」


彼の声を打ち消し、圭介は言った。


「どうしようが俺の勝手だ」

『そのために、あの子自身のトラウマを広げることになってもか?』

「ああ。だってそれが、道具の役割だろ?」


圭介は、息をついて言った。


「俺は医者だからな」


携帯電話の通話を切る。

部屋の中に静寂が戻る。


圭介は、携帯電話を白衣のポケットにしまうと、カルテに何事かを書き込む作業に戻った。

ピンクパンサーのグラスに入れた氷が溶け、カラン、と小さな音を立てた。

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