prologue
2度目の敗戦をむかえた廃墟の日本。二人はそこで出会った。西暦2045年のことだ。前回の無条件降伏からはちょうど100年目ということになる。
僕たちはひかれあい、もとめあい、時には傷つけあいもした。それが愛なのか、それともただの執着か、独占欲なのか? ほんとうのところは今もよくわからない。
人間という哀しいイキモノは、その人を愛しているからではなく、自分に振り向いてほしいから微笑む。その存在が自分を慰めてくれるから愛着を持つ。歓心を買うためにおべっかを言い、あれこれ他人に世話をやく。たとえ二人で一緒にいたとしても、それは打算やもくろみ、それぞれの勝手な思い込みで馴れ合っているだけだ。およそ人間のイトナミなどというものは、なべて自己満足でしかない。
結局人は、自分の求める形でしか満足できない。関わりはするが決して交わることはない。共感することはあっても所詮ひとりよがり。完璧な一致などありえない。
人間は孤独だ。だから、ウソでもいいからつながるしかないんだ。
希望・幸福・夢
友情・愛情・博愛
自由・平等・平和
理想・正義・真実 etc
これら全て、いまだかつてこの世に実在したことのない絵空事ばかりだというのに、どうして人間はそれを実体があるかのように錯覚してしまうのか。そんなものになぜ恋い焦がれ、思い煩うか?
時として、「真実を知ること」は人間に絶望をもたらす。かといって、そこに目や耳をふさいだまま、未来への展望が開くことはない。よしんば知ったところで、運命は変えられないのだとしても。
それでも、例えそうであったとしても……「対応すること」ぐらいはできる。
And ye shall know the truth and the truth shall make you free.
John VIII-XXXII