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捨てられ令嬢は、呪われ伯爵と幸せになる  作者: セイバン・キイタ
45/55

45.修行そのイチ

 呪術神ハーディオニアに拉致されたエレイナ。


 ハーディオニアの目的は、自らがエレイナに施した封印を解き、エレイナの呪力を目覚めさせる事にあった。


 ハーディオニアは、封印の解除には、もう少し、エレイナが心身を鍛える必要があると言う。


「鍛えるって、やっぱり腕立て伏せやスクワットですか?!」

エレイナが、力強く拳を握って訊いた。

 占いのおばあさん(マギエラ)の姿になっているハーディオニアは、わざと妖しく答える。

「そうだね。あんな事やこんな事もしてもらうよ。ヒッヒッヒッ」

「えっ? あ、あんな?!」

青ざめるエレイナ。


 ハーディオニアことハーディは、エレイナの夫アンダロスの姿になって、はははと笑う。

「本当に、面白いな、エレイナは」

「もおっ! 私は、真面目に訊いてるんです!」

さすがのエレイナも、頬を膨らませて怒った。

 ハーディは微笑む。

「すまん、すまん。そうだね、腕立て伏せもスクワットも、やるといいよ」

 エレイナは、引っ掛かる。

「それって、他にも必要な事があるという事ですか?」

「そうだね。例えば、外を歩くとか」

 エレイナは、目を輝かせる。

「体力作りですね!!」

「一緒に歩こうか」

「はい!!」


 屋敷の外に出た。


 屋敷は月光樹に囲まれる様に建っていた。

 外は昼間の明るさがあったが、月光樹の花は、月の光を浴びた時の様に淡く白く輝いている。

「綺麗……」

エレイナは、ほおっと感嘆の息を漏らした。その時、強い風が吹き、月光樹の花が一斉に風に舞った。


 エレイナは、月光樹の花の吹雪を全身に浴びた。


 あまりの美しさ、儚さに、エレイナの目から、涙が零れた。


 ハーディが、驚いて目を見開く。

「エレイナ、悲しいの?」


 エレイナは、切なく微笑んで、ハーディを見る。

「いいえ。悲しい訳では……。ただ、胸が苦しくなって……」

「苦しい?」

「本当に身体が辛い訳じゃないんです。だから、心配しなくても大丈夫ですよ」

エレイナは、そう言って、顔を見上げた。

 雪が舞う様に、月光樹の白い透き通った花びらが舞っている。

「綺麗ですね」

エレイナは、心からそう言った。すっかり涙は止まっている。


 ハーディは、エレイナの横顔の方が、美しいと思った。


 エレイナとハーディは、花吹雪の中を歩いた。


 ぐるりと屋敷の周りを歩いて戻って来ると、エレイナとハーディの身体には、あちこちに月光樹の白い花びらが付いていた。

「まるで雪だね」

ハーディが、微笑んで言った。

「雪ですね」

エレイナが、微笑んで言った。



 夜、夕食を終えたエレイナは、ハーディの求めに応じて、ハーディの肩を揉んでいた。

「痛くないですか?」

「丁度いいよ」

「これって、修行なんですよね?」

少し不安になって、エレイナが訊いた。

 ハーディは、微笑む。

「そうだよ、修行の一環だよ。だからしっかりやって」

「はい!!」

エレイナは、元気よく肩を揉む。

 ハーディは、気持ち良く、目を細める。

「いいねえ。その調子だよ、エレイナ」

「はい!!」


「君の呪力は、厳密に言うと、一部はもう目覚めているんだ」

ふいにハーディが、何でもない事の様に言った。

「え?」

エレイナの手が止まる。

「それってどういうことですか?」

エレイナの声が深刻になる。


 ハーディは、

「肩」

と言って、エレイナに肩揉みを促す。

「は、はい」

エレイナは、肩揉みを再開する。

 ハーディは、答える。

「君の呪力は強力で、独特だ。他の誰とも違う個性がある。メライナの生まれ変わりだからね」

「メライナ?!」

エレイナには、その名に聞き覚えがあった。


 今より古い時代に、呪術によって国と民を守ったと言う、伝説の呪術師の名だ。

「メライナって、本当にいたんですか」

「いたよ。呪力と霊力の消耗が激しくて、永いこと転生出来ずにいたんだけど、めでたく君に生まれ変わったんだよ。生まれ変わりを司る神との共同作業さ」

 肩を揉みながら、エレイナが、訊く。

「あの、私、本当にメライナの生まれ変わりなんですか?」

「そうだよ。だから、目覚めが一部でも、すごい力が有るんだよ」

「な、なるほど……?」

エレイナは、半信半疑に言った。

 その声色に、ハーディは、苦笑する。

「エレイナ、本当に分かってて言ってる?」

 エレイナは、渋い顔をする。

「いいえ。自分にすごい力が有ると言う実感が全く無いです……」

「そうだね。君の力はとかく分かりにくい」

「分かりにくい?」

「今、君に備わっている呪力は、自分用なんだよね」

「自分用?」

「君の父は、君に呪術を教えても、教えた様に他人に呪術を掛ける事が出来ないから、呪力が無い様に思えたんだろう。だが、無い、という事は、有る、という事なんだよ」


 エレイナは、息を呑んだ。


 ――”無い、という事は、有る、という事さ”――


 占いのおばあさんに言われた言葉だった。


 あれは、ハーディ様の言葉だったの?!

 無い様に見えて、本当は、あった?!


「実は、君に対しては、複数の人間が数年に渡って呪いを掛けていたんだが」

「ええ?!!」

エレイナが、叫んだ。思わず、肩を揉む手に力が入った。

「いでででで」

ハーディが、わざとらしく痛がった。

「す、す、すみません!!」

「なーんちゃって」

 エレイナは、顔を歪めた。

「もおおっ」

 

 エレイナは、落ち着きを取り戻すと、

「私、呪いを掛けられていたんですか?」

と、ハーディに訊いた。

 うん、と、ハーディは答えた。

「自覚が無いでしょ。それこそが自分用という事だよ」

「どういうことですか?」

「君の現時点の呪力は、あらゆる呪いを寄せ付けない、自己完結型呪力だ。呪詛返しの様に、掛けた術師に呪いを返す訳じゃなく、自分の霊気や他方から来た呪いにぶつけて打ち消しているんだ」


 エレイナは、ハーディの説明が、ちょっと、よく分からなかった。

「それって、つまり……?」

「エレイナにどんなに呪いを送っても、全部打ち消されて、無効化されるって事だよ」


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