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捨てられ令嬢は、呪われ伯爵と幸せになる  作者: セイバン・キイタ
43/55

43.呪術神ハーディオニア

 ヴァルダロスとエレイナは、瞬時に別の屋敷へ移動して来た。


 先程いた居間より、少し小さい居間だった。


「ご主人様」

先の屋敷の台所で、斬られた小柄な侍従が、居間に入って来た。

「えっ?!」

エレイナは、驚いて、侍従を見る。怪我も無く、普通に歩いている。

「お食事は、どうなさいますか」

侍従が、ヴァルダロスに訊いた。

「二人分頼むよ」

「畏まりました」

侍従は、何事も無かった様に、居間を出て行く。

 エレイナは、思わず、侍従の姿を目で追う。


「あれは、さっきのとは違うよ」

ヴァルダロスが、言った。

「え、で、では」

エレイナは、信じられない気持ちで、ヴァルダロスを振り返る。

 と、更に、信じられない姿が目の前にあった。

「だ、旦那様……?」

エレイナの目の前に、アンダロスがいたのだ。ヴァルダロスの姿は、既に影も形も無い。


 エレイナには、もう、何がどうなっているのか、分からない。


「ははは。困っているエレイナの顔も可愛いね」

アンダロスは、面白そうにそう言うと、エレイナに顔を近付ける。

「だ、だんなさま……っ」

エレイナは、顔を赤らめて、アンダロスを見つめる。

 アンダロスは、目を細めて、エレイナの唇に自分の唇を近付ける。

 エレイナは、混乱するが、

「だ、だめですっ!」

と、上半身を後ろに引いた。

 

 唇を逃したアンダロスは、寂し気に微笑む。

「ごめんよ、エレイナ」


 エレイナは、顔を真っ赤にする。

「一体、貴方は誰ですか?!」

「私は、ハーディオニア」

「は?」

エレイナは、唖然となった。

 アンダロスが、微笑む。

「私の真の名は本当は違うのだけれど、君たちはそう呼んでいるだろう?」

「呪術の……神様」

「そうだよ」

 エレイナは、頭が全く動かない。

「え? え、ええっ?」


 呪いを司る女神ハーディオニアを名乗ったアンダロスは、悠然と、ソファに座って、脚を組んだ。

「何が、そんなに不思議?」

 エレイナは、すぐ答えられない。

「あ、えっと……。何故」

「”何故”」

「何故、私を連れて来られたのですか?」

呪術師ならいくらでもいるのに、と、エレイナは思った。

 ――何故、よりにもよって、呪力のない、呪術師でもない私を――


そこまで考えて、待てよ、とエレイナは気が付く。


 ――ハーディオニア様は、呪力のない私に以前から気分を害されていて、説教する為に連れて来たのでは?!――


「申し訳ありません~!!」

エレイナは、床に両膝をつき、がばあっ!と、両手も床について、頭を下げた。

 アンダロスの姿をした自称神はびっくりする。

「エレイナ?」

「どうか、どうか! 呪力の無い私をお許し下さい!! はは~!!」


 自称神は、目を見開いて、やがて誤魔化す様な苦笑を浮かべる。

「それなんだけどさぁ」

「はい!」

エレイナは、青白い顔をして頭を上げた。自称神が、アンダロスの顔で、優しく微笑んでいる。

「それ、私のせいなんだよね」

「……はい?」

「エレイナの、呪力が無いの」

「はい?」

エレイナは、今、信じられない事を聞いた気がした。


 自称神は、言う。

「エレイナの呪力は、大き過ぎて、子供の時に目覚めるには、命の危険があった。私は、管理上の責任を取る為にエレイナの呪力を封じたんだよ」


 エレイナの目が見開かれた。そのまま、固まってしまう。


「エレイナ」

 自称神は、ソファから立つと、跪いてエレイナの手を取った。

「君に非は無い」

「そんな……」

 エレイナの両目に涙が滲み、ぼろぼろと零れた。

 自称神は、慈しむ様にエレイナを優しく抱き締めた。

「呪力が目覚めず、辛い思いをしたね」

「うっうぅっううぅ」

 エレイナは、声を上げて泣き出した。


 呪力が目覚めないばかりに、父に見捨てられ、母に見限られ、妹に見下され、自分でも自分を役立たずの不要な人間と呪う様にして生きていた。それが全て、誤りだったというのか。


 そんな、辛い思いをする必要などなかったと言うのか……


「愛されたかった……、私も……ヘレナみたいに……っ」

ずっと、言い出せなかった願望が、口からこぼれた。

 

自称神は、悲しく微笑む。


「ごめんよ、エレイナ」

 




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