表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられ令嬢は、呪われ伯爵と幸せになる  作者: セイバン・キイタ
22/55

22.野盗の隠れ家ごはん

 エレイナは、野盗たちの隠れ家に連れて来られた。


 狭い部屋に入れられて、閉じ込められた。


 一体、どうなるのか。エレイナは、不安でたまらなかったが、手首を後ろ手に縛られて、武器もない以上、何も出来ない。武器があった所で、使い慣れてないので役に立たないだろう。


 ――あの子は無事かしら――


 エレイナは、自分の乗っていた馬の事を思い浮かべる。

 大人しくて素直な子だった。

「無事に帰ってると良いけど」

エレイナは、呟いた。



 野盗三人組は、隣の部屋で話をしていた。

 以前は猟師が使っていたこの小屋は、今は野盗三人組の隠れ家だ。

 

「親分、これ本当に上手く行きますかね」

一番体の小さいボロが言った。

 親分と呼ばれた一番体が大きい年上の男ボムは、ボロの襟首を掴まえる。

「何だとてめえ、俺の作戦にケチ付けるかよ」

「い、いやあ、そういう訳では」

「まあまあ」

もう一人の仲間の黒髪長髪の男、ボラが、間に入る。

「ここで揉めてもどうにもなんないよ」

「おうっ」

ボムが、ボロの襟首から手を離した。

「やっぱり、交渉にはボクが行きますよ」

ボラが言った。


 交渉と言うのは、雇い主ヘレナに対する、ギャラ吊り上げ交渉である。

 エレイナの妹ヘレナは、エレイナを殺す為、野盗三人組を雇った。彼女は、誇り高い呪術師であると言う自負から、自分で直接手を下すことはやはり出来ない、と思い、彼らを雇ったのだった。


 ヘレナは、報酬の一部を先に渡し、彼らが任務を完遂後、エレイナの死体を確認してから残りの報酬を渡すとしていた。この報酬額を吊り上げるべく、エレイナを捕まえて、そのまま生かしているのであった。


「交渉事なら、ボクの方が得意ですよ」

ボラが、言った。

「う~む、けどなあ」

いい所を見せたい親分ボムは、ちょっと悩む。

「いやあ、確かに、ボラ兄さんの方が」

ボロが、うっかりボラに乗ってしまった。

「何だとてめえ、俺の作戦にケチ付けるかよ」

親分ボムが、ボロの襟首を掴む。

「話が戻ってますよ」

ボラが、呆れて言った。


 三人は、かつては、他国軍の兵士だった。

 親分は隊長で、ボラとボロは部下の兵士だった。


 戦争が嫌になって、逃げだし、流れ流れて今はここを拠点に野盗をしている。


 正直、血生臭い事をしたくなかった。しかし、金は欲しい。


「あのねえちゃん、おっかねえぞ」

親分ボムが、顔を歪めて言った。

「女って、怖いですね」

ボロが、言った。

「じゃあ、ボクが行って良いですか」

ボラが、言った。

「……分かった」

親分ボムは、最後には頷いた。


 ぐううぅ。

 三人組の腹が盛大に鳴った。

「腹減りました」

「とりあえず飯にしようぜ」

「飯って言っても……」

ヘレナから貰ったお金は、既に酒宴に消えていた。


「あのお……」

隣の部屋から、エレイナの声が聞こえた。三人の会話はエレイナに丸聞こえだった。

「よかったら、何か作りますけど」

 三人は、顔を見合わせた。


 エレイナは、小屋に残っていた道具で野草のスープと、肉厚キノコのホイル焼きを作った。

「あとこれを」

エレイナは、ワンピースのポケットの中からハンカチに包んだ焼き菓子を取り出した。数日前、自分が焼いてハルダロスに渡したものだ。エレイナが帰る時、残っていたものを何かの足しにとハルダロスが渡してくれていた。

『ありがとう。移動しながら食べる事が出来て、とても助かったよ』


 野盗たちは初めて見る焼き菓子に興奮する。

「なんか、いい匂いが」

「腹の足しになるかい?」

「美味そうですね」


三人は、焼き菓子を食べた。

「んま!」

「もっとないのかよ」

「美味しいです!」

焼き菓子は四つしかなく、一人に一つしかなかった。

 エレイナは、少し不思議な気持ちになりながらも、

「良かったら、今度作って持ってきますよ」

と言った。

「ほんとか?」

「ほしい!」

「ください!」

「あ、はい」

エレイナは、戸惑いながらも、笑顔で応えた。


 エレイナは、男たちの会話から、自分は何かの作戦の為に連れて来られて、彼らは誰かと交渉したがっている、という事は分かっていた。

 だが、無事に返してもらえるかは分からない。

 

 でも、そんなに悪い人たちには見えない。


 エレイナは、そう思った。


「あんた、良い嫁さんになるよ」

親分ボムが、ちょっと顔を赤くして言った。

「え? あの、私……」

「あねさん! 親分の嫁さんになってやって下さい!」

ボロが、泣きながら頭を下げて言った。

「え? あ、いや」

「お前ぁ、余計な事言ってんじゃねえよ」

親分ボムが、遠い目をして言った。

「え、えと」

「親分、結婚を約束してた人がいたんですけど、戦争に行かなきゃいけなくなって、結婚やめちゃったんです」

ボラが、事情を説明してくれた。

「あ、そうなんですね。その方はご健在なのですか?」


 三人は、しんとなった。逃亡した兵士が国に帰る術はない。


「あの……?」

エレイナは、沈黙の理由が分からず、三人を見た。

「あの、その方に、また会えると良いですね」

エレイナは、親分に言った。


 親分は、

「そうだな」

と、言って、暗く溜息をついた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ