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捨てられ令嬢は、呪われ伯爵と幸せになる  作者: セイバン・キイタ
21/55

21.エレイナ、拉致される

 翌早朝。


 エレイナは、国王の別荘地から独りで帰ることになった。


 夫アンダロスの振りをしているハルダロスは、一時は高熱に倒れ、うなされてもう自分は駄目だと弱音を吐き、心配した部下が妻のエレイナを連れて来る程だったが、一晩で快復した。


 国王の別荘地で開かれている狩猟大会は、まだ終わっていない。日程が二日残っていた。


 狩猟大会に観覧客として招かれていたエレイナの父アセルは、エレイナに対し冷淡だった。

「婿殿は快復した。お前がここに残る理由はない。速やかに帰るが良い」

 嫁に行ってもいまだに父が怖いエレイナに、反論は出来なかった。


「では、私がご一緒に」

伯爵の部下のアネルスが、そう言うと、

「アネルス殿。貴方は伯爵の部下であって、エレイナの部下ではないでしょう。伯爵の補佐を務めるのが筋ですよ。狩りと言うのは、独りでは出来ませんからね」

と、親が子を叱るように、言った。

「いや、しかし」

「陛下の別荘地から婿殿の領地はそう離れていません。領内は安全なのでしょう。一人で帰っても何も問題ないのでは」

アセルは、そう言って、ハルダロスを見る。

「それより婿殿は、最後まで日程をこなし、わざわざ大会へ招いて下さった国王陛下の期待に応えるべきでは。それが陛下よりギエナ領を賜った伯爵家としての務めでしょう」

 反論の機会を伺っていたハルダロスは、観念するしかなかった。


 義父殿に、ここまで言われたら、大会途中で帰るわけにはいかない。


 ハルダロスは、そう思いながら、エレイナを見た。

「エレイナ。すまない」

 エレイナは、気丈に微笑む。

「大丈夫ですよ、旦那様。父の言う通り、ギエナ領はすぐそこです。一人でも帰れますよ」

「分かった。気を付けて帰るんだぞ」


 エレイナは、ハルダロスとアネルスに、狩猟地の外まで送られて、そこから独りで帰路についた。



 国王の別荘地の山を下り。

 ギエナ領内に戻ったエレイナは、人気の無い林の道を独り、馬と行く。

 エレイナの乗る黒毛の馬は、まるでエレイナの沈んだ気持ちに共鳴する様に、とぼとぼと歩く。

「寂しいね」

エレイナは、ぽつりと馬に呟く。

 馬は、ぽくぽくと歩く。


 ガサガサッ!

 

 ふいに、人の気配がしたかと思うと、林の中から三人組の野盗らしき男たちが現れ、短剣をかざしてエレイナの行く手を塞いだ。

 エレイナは、慌てて、馬を止める。

「な、なんですか」

「ぐへへへ。大人しくしてりゃ、命は取らねえさ」

野盗の中で、一番体が大きく、一番年上の四十代くらいの男が、太い低い声で言った。

「い、命……?」

エレイナが、顔を強張らせる。

「兎に角、馬を下りてもらおうか」

 野盗の言葉に、エレイナは、大人しく馬を下りた。

 突然の状況に、馬が不安げにエレイナを見る。

 エレイナは、微笑んで、落ち着かせる様に馬の身体をさすった。


「この子は傷付けないで下さい。いい子なんです」

「別に、あんたが来てくれりゃ、馬には用はないさ」

男は、そう言って、仲間を顎で動かす。


 仲間の中の一番小さい男が、エレイナの手首を縄で後ろ手に縛った。


「おら、行けよ」

もう一人の仲間が、馬の尻を叩いた。

 馬は、乗り手を失ったまま、ぽくぽくと歩き出した。


 エレイナは、不安げな眼差しで、去っていく馬の姿を見つめる。


「ほら、来いよ」

仲間二人が、エレイナの身体を押して歩かせた。


 野盗三人と、エレイナの姿は、林の中に消えた。



 

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