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1.転生

「ごめん、俺ら相性悪いじゃんだからから別れて欲しくて……」

「……はあ? そんな事をわざわざ高級レストランに呼び出しといて言うの?」


「そう言う所だよ、何時も何度もお前はさ、()()なんだよ」

「ちょ……待ちなさいよ!! 短気って……はあ」


バーゲンセールだった夏らしい花柄薄手ワンピースをぎゅっと握る。

9年の交際の内、今日が結婚記念日なる日だと思っていたのに。

まあ最近夜出歩くし何かと思ってたけど、浮気でもしてたのだろう。


後、高級レストランで別れ話を切り出して置いて支払いもせずに去っていったク○野郎!!

メールを開き、「支払いくらいして」と送ったが、先程の言葉がヤケに引っ掛かる。


私は()()なのだろうか、もっと長い目で見て此処は支払うべきか?

……私は悩む挙句メールを取り消し、会計のレジへと向かった。


「お会計ですね、4万3000円で御座います〜」

「うっ……嗚呼、はい現金で」


……はぁ、高級レストランのディナーはやはり高い。


高校入学の記念に母に買ってもらった長財布を取り出す。

高校に慣れてきた時に後悔はして居た記憶はあるが、

今でも使えるくらい高級な財布で気に入っている。


「じゃあ5万円でお願いします」

「はい、7000円のお返しとなります、ありがとうございました!」


()()()()()()()()()()()()()()()()

大変申し訳無いが、苦い思い出があるこの店にはもう一生来ないだろう。

後、ワインも少々不味かった……まあそれはいい。


店内から出て部屋螺旋階段を降りる。

普段なら喧嘩しながら歩いていたんだろうに、

何だろうそれすら懐かしい気分に思える。


少々涙が零れる。

だって私は好きで付き合ったのである。

喧嘩が多くてもきっと大丈夫だと思っていたのに……


「そこのお姉さん、危ない!!」

「えっ……?」


気付けば避けられない位置にいた。

ゆっくり進む時間、本当にドラマの演出見たいになるんだな……

相手は居眠り運転をしている、スピードは緩まず……


私は居眠り運転の車と衝突した。


〜〜〜〜〜〜


「な……に?」

「ごめん、俺ら相性悪いじゃんだからから別れて欲しくて……」

「えっ……!? 何、なんで……!」


気付けば目が覚めた、ふと自身の手を見る。

起きた先は先程振られたあの店だった。

何で? ……アニメやドラマみたいに時間が戻ったって事?


信じらんないけど……

「もしかして、別れるまでを遅らせて事故を回避しろ」って神様の案じなのか?


折角戻った時間の軸。

事故を回避して彼氏に振られるのも回避して幸せに暮らしてやる!


「……なんでってお前、()()だからだよ」


寝そべりながら見たドラマで予習はバッチリ。

後バラエティ番組で嘘泣きの仕方も覚えているし。

……こんな考えをする私は少々最低だけど。


私は下を向き泣きそうな()()

瞬きもせず何秒か待つと自然に涙が流れてくる。

上を向き、頬に手を添える。


「はぁ……!? じゃなくて……私……短気な所直すから、直すからぁ……ぐすっ」

「お、おい……泣くなよ! んん、分かった! 分かったから!」


「本当に……? ありがとう……!」


意外とあっさり終わった。

下を向き、ぐすっぐすっ……と口で鳴らしながら膝下にある時計を確認。

多分事故にあったのは47分、今は27分。 行ける……!


「お会計しよっか……! 先店出て良いよ!」

「ありがとう! ……先に待ってるね!」


完全韓ドラ(清楚キャラ)を演じ切り店内から出る。

胸をなで下ろし、安堵が出る。

壁にもたれ掛かりガッツポーズをかます。


「しゃー!!……死ぬの回避した〜!」




……コツコツコツコツコツ


あー!! おっせぇ〜!!


この日のために履いてきた慣れないハイヒールを鳴らす。

お会計に手こずっているのだろうか?


嗚呼、この店に来るまでの会話で「初めてキャッシュレスにしたんだ〜」とか言ってたな。


腕時計を確認すれば42分……もう少し遅れてくれ!!


「お待たせ〜! 行こっか!」

「あっ……! うん、そうだね!」


トイレに行けばと思う時にはもう時に遅し。

手を引っ張られる。 何時もならドキッ……となる所だが今は不都合である。


螺旋階段を降りながら解決策を考える。

あ、忘れ物! 忘れ物と言って店に連れていけば……


「わ、私忘れ物しちゃったかも……な、なんて」

「いや、俺がくまなく確認したけど大丈夫だったよ〜!」


何時もの彼氏じゃない。

かっこ付けてるのか知らないけど何で確認するのよ!


……やばいこのままじゃ、このままじゃ。


「そこの2人、危ない!!」


「えっ……!?」


ゆっくりと時が進む。

次は彼氏を巻き込むのか? ……それは流石に駄目だ。

彼女として失格過ぎる。


どん……と彼を押す。

瞳孔が開く彼の顔、見つめ目に焼き付ける。

これが最後になるかは分かんないから。


相手は居眠り運転をしている、スピードは緩まず……


私は()()居眠り運転の車と衝突した。


幸運な事にまだ聴覚と思考が残っている。

彼の声が大きく響く。


「結……?」


「誰か救急車と警察!!」

「誰か救助できる方は……!」


「大丈夫ですか……!! 聞こえますか!?」


「結……結! 後もう少しだからな! ……なあ!」


轢かれた私によびかける男性の声、救急車のサイレン。

泣きそうな声で久しぶりに名前を呼んでくれた彼の声を耳に焼き付けながら意識が段々と遠のく。

モデルさんのリップの新作欲しかったなあ……まだ一軒家も子供も欲しかったし。

……あと心当たりがあるのは。


君と()()したかったよ……



月明かりの下、私は息を引き取った。


〜〜〜〜〜〜


「……あ、れ?」


また目覚めた。

もしかして三回目……? は無いよな〜。


前の光景を見て確信した。

私はやはり事故死で死んだのだと。


高級レストランの様に暗い部屋。

天使の羽根が生えている人が飛んでいる、これが天使なのだろう。

そして上へ階段が伸びていて長蛇の列がある。


嗚呼、死んだんだな私……

止められなかった自分への罪悪感を感じながら

タイヤ跡が着いた花柄のワンピースをぎゅっと握る。


長蛇の列の最後尾POPには「閻魔審判 4時間待ち」と書いてある。

4時間も待つのか……と口を開け、列に並ぶ。


「最後尾看板持ちますね〜!」


と手を伸ばすと、16歳ほどの女の子が微笑む。

まつげ長ぁ……若いって良いなぁ!!

学生服に汚れていない服。 ……死因は何だろうか。


……そんな事考えるのは失礼に当たるだろう。


「急いでますか? 前どうぞ……!」

「でも……いいの?」

「はい、私はまだ決意が出来てないんです……」


「……わ、分かった! ありがとうね」


何処が急いでいる様に見えたのだろうか?

……階段でお辞儀するとたったと上に登る。

後ろを振り向くと切なさそうな顔をする彼女。

そっとして置いてあげよう。


「(私短気卒業したかもな……)」



……あっという間に4時間が過ぎ、私は閻魔様の前に立った。

迫力がある閻魔かと思いきや。


可愛げのある10歳の少女だったのである。


「うーむ、君はおーがたトラックに轢かれちゃったのかー!

んじゃあ、魔法界に転生させてあげなさい!! ご愁傷さま〜!」


「あ、はい……! ありがとうございます!」


大きな看板に【転生】と書いてある。

さらに階段を登り、大きな扉の前に立つ。

意外と人が少なかった。


「嗚呼、貴方は……大住結(おおすみゆい)27歳!

転生先は魔法界ですね! 行ってらっしゃい〜!」


扉が開く。【落ちろ!】と言う看板。

此処から飛び下りるのか!?


「えっ……怖!??」

「じゃあ背中押しますね〜! 3、2、いーち!」

「ちょま!? キャー〜!?」


背中を押されれば急速度で落ちていく。

記憶って無くなるんだろうか……?



んまあそんな事いいや……。


〜〜〜〜〜〜


「……元気な赤ちゃんですよ〜!!」


〜〜〜〜〜〜









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― 新着の感想 ―
[一言] 夢中になって読んでしまいました。スピード感もあるし短編映画でも見ているみたい! (=^・ェ・^=)//。・:*:・°'★,。・:*:♪・°'☆パチパチ
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