一緒に笑ってくれて、ありがとう
僕は喫茶店のテーブルに座り、パフェを食べている一人の少女を見つけた。
「ここにいたの?」
「うん」
彼女は――僕の相棒であるリール・アンサンブルだ。
「パフェ、美味しい?」
「うん」
あの日食べきれなかったパフェとは別の、ごく普通のパフェを食べている。
「あ、僕にもパフェを」
「はーい」
リールと同じパフェを僕も注文した。
「気に入ったの? ここのパフェ」
「うん」
「そうか」
彼女は無口無表情でただひたすらにパフェを食べ続けている。
その姿がおかしくて――おかしくて、泣きそうになる。
「チョージ?」
「あ……ごめん。パフェ食べるの、邪魔しちゃったね」
ジーガルが言っていた。僕は強くなったと。
「ごめん……ごめん……」
でもやっぱりまだ、弱虫のようだ。
「僕があの時もっと強ければ――」
「チョージ」
リールがパフェを食べる手を、止める。
「チョージは笑劇って、何だと思う?」
「え――」
そして突然そのような質問を、僕にぶつけてきた。
「私は――人生と同じだと思う」
「人生と、同じ」
「状況に合わせたアドリブと、後悔のアンコール。それの繰り返し」
「アドリブと、アンコール……」
「そう。脚本のように思い通りにいかないし、嫌なシーンに限って――繰り返し行う」
再びパフェを食べ始めたリール。
「悲劇は繰り返す……バッドエンドのアンコールか」
しかしすぐに、その手を止める。
「チョージ」
「何さ?」
「バッドエンドが好きな人だってこの世界にはいるかもしれない。でも――」
リールが僕を、覗いている。この子には何でもお見通しなんだね。
「ハッピーエンドが嫌いな人は、絶対にいないと思う」
「そうか」
テーブルが濡れている。あれ? おかしいな。
「そう、だったんだね」
涙が、止まらないや。
「チョージは背負い方を間違えているだけ」
リールの手が、僕の頬をそっと撫でる。
「あの子を――私を殺した責任があるから、自分は幸せになってはダメだと思ったの?」
「だって……!」
「チョージは、馬鹿だね」
リールが僕の目に、映っている。
その姿が、かつて僕が壊してしまったあの少女と重なる。
「リールは――私はチョージのこと、大好きだよ」
「あぐっ! へぐっ!」
「もう。情けない声、出さないの」
「僕は! 君のこと!」
「いつまで泣いているの? パフェ、食べよう?」
「うん! うん!」
リール。君と出会えて本当に良かった。
「鼻水でぐちゃぐちゃだね」
僕のために怒ってくれて、ありがとう。
「リールだって!」
僕のために泣いてくれて、ありがとう。
「それ、本当?」
そして――
「あははは」
「そこまで笑わなくても……ふふっ」
一緒に笑ってくれて、ありがとう。