頑張ってみるよ
「それで、今後の活動だけど――」
まだ事件は解決していない。リカルド・シャンクティの野望を阻止しなければならない。
「リカルドのおっさんは《焔奏怨負》を使って王国を支配するつもりだ」
「そんなことして何か意味があるの?」
「ああいう男は世界征服を夢見るものさ。王国支配はその一歩だろう」
「そういうもの……なのでしょうか」
リコの疑問と同じことを、僕も考えていた。
「お、チョージが珍しく考え事をしておるぞ! きっとアカシックレコードに接続――」
「ザーナごめん。少し静かにしてて」
「うむぅ……」
確かパスタちゃん――シェルルの話だとあの現場にはリカルド以外にもう一人、黒いローブを来た男がいたようだ。シェルルはその男に背中を斬りつけられ、気を失ったらしい。
「黒幕はそっちの男のような気がする」
「どうしてそう思うんだい?」
「簡単だよ。リカルド・シャンクティが誰かの協力もなしに、《焔奏怨負》の力を得られるはずがないからさ。あんな男、《焔奏怨負》と契約する前に喰われるはずだからね」
「つまり、黒いローブの男が《焔奏怨負》との契約を手伝ったのね」
「そうだと思う」
もうこの際どちらが黒幕かなんてどうでもいい。僕は怒っているんだ。
「おお……チョージから怒りのオーラが溢れているぞ」
もう僕は表情を隠さないからね。僕はシェルルを傷つけたあの二人が許せない。だから怒っているのだ。ただ、それだけのことだ。
「それじゃあ、早速リカルド・シャンクティのところへ向かいましょう」
「待ってくれ」
パン屋から出て行こうとするアコ達を、僕は引き止める。
「どうしたの、チョージ」
「大事な話がある」
「どうしたんだい?」
「僕が民間人を殺したことがあると言ったら、兵器としてどう思う?」
「そりゃあ、怒るわよ」
「私達兵器は民間人を傷つけるためではなく、守るためにあるからね」
「じゃあ――人間として、どう思う?」
「許せないに決まっているであろう」
「ただの殺人犯じゃない」
良かった。彼女達がそう言ってくれて。
「でも、チョージ」
「ん?」
「君はその罪を一生背負う覚悟があるのだろう?」
「もちろんさ」
「ならそなたも人間として生きて良いのだ」
「罪を背負う覚悟がなければ、それは人間ではなく悪魔ですから……」
「だからね、チョージ」
その時の彼女達の顔は絶対に、絶対に忘れないだろう。
「いつかあなたの、本当の笑顔を見せてね」
「うん」
ありがとう、皆。
もう少しだけ、諦めずに頑張ってみるよ。