じゃあ審査始めまーす
「あー、痛かったなぁ」
でも、王女に絆創膏をいっぱい貼ってもらったから一安心だね。
「まったく、ひどいめにあったわ!」
隣では再起動が完了したアコが座ってオレンジジュースを飲んでいる。
「あはは。ごめん、ごめん」
「別にいいけど、他の姉妹達に同じことやろうとしたら怒るんだから!」
ちょっとやり過ぎたようだ。反省しないと――
「それにしても、一人審査するのにこんな時間が掛かるとは思わなかったよ」
「あなたがふざけたせいで、審査時間が延びたのです」
「まったく。貴様という男は」
二人が何か言っているが、気にするのはやめておく。
「時間が掛かるなら、思い切って残りの三人を同時に呼んじゃおうかな」
「もう何も突っ込まんぞ」
「うん? パスタちゃんは突っ込む方じゃなくて、僕に突っ込まれる側――」
「貴様」
「あ、ごめんなさい」
パスタちゃんの眼光が僕の胸に突き刺さって痛い。
「じゃあ残りのレディ達、いらっしゃい!」
「ようやく我々の出番か」
しばらくすると、ゴシックドレスに身を包み、シンバルを構えた少女と、
「うぅ……恥ずかしい、です」
軍刀のような形をしたリコーダーを持つ少女、そして――
「ふふ。おねえさんを焦らすなんて、なかなかやるな」
バスドラムを抱えた長身の少女が現れた。
「優勝」
「だからちゃんとあの子達を審査しろと言っただろう!」
「可愛いからしかたないでしょ! 旧文明では可愛いは正義だったんだよ⁉」
「私達は今の時代の人間だろう⁉ 旧文明の知識を無理に使うな!」
「はーい」
でも僕は《音楽姫》という旧文明の技術で生まれた子達と契約を結ばなければならない。
多少は旧文明についての知識があった方がいいと思うのは僕だけだろうか?
「まあ――」
パスタちゃんの言いたいこともわかる。
かつて戦争で実験体にされたことがある僕を、旧文明と関わらせたくないのだろう。
でもパスタちゃん。だからって彼女達を遠ざけるわけにはいかないんだよ。
彼女達が悪いわけではないのだからさ。
「はい。じゃあ審査始めまーす」
僕はその後もノリノリでオーディションを続けるのであった。