5話 森での魔法訓練生活
「シルド~!待ってよ~!」
「レード、遅いぞ」
現在森を2人で疾走中。
ただし、俺は柴を集めながらだ。
「いいか、レード。魔力鍛錬は基礎も大事だが、実践出来なきゃ意味がないんだ。今は脚力と視力、判断力。足と目と頭を魔力強化するんだ。」
レードの身体強化は全身に至っていて、森を立体機動するにはいいが、ただ疾走するだけなら無駄が多い。
今は脚力と判断力に振り分けするのが正解だ。もちろん体幹も大事なのでそこもおろそかにできないが。
「う~ん。難しいよ~。」
と言いながらも、魔力循環が足に集中して来たみたいだな。
「その調子だ。もうちょっとしたら練習場所に着くからそこまで行ったら一旦休憩だ。」
「うん。」
「「とうちゃ~く!」」
目的地に到着した。
ちょっと休憩タイムだ。
「シルド。休憩はいいけど、何も持ってきていないよ。」
「ちょっと待ってろ。『収納』」
俺は異次元空間を開けそこから水筒を取り出した。
「シルド?それって何?」
「後で説明するから。まずはのどを潤そう。」
「う、うん。」
<ごくごく…>
「「つめた~い」」
うん、思ったとおり、冷えたままだな。
昨日の夜間に汲んだ井戸水そのままの温度だ。
昨日の『亜空間潜行』の応用で異次元空間にものを収納出来ないか今朝方、試してみたのだ。
女神様の言っていた『謎倉庫』というものだ。
何度か試しているうちに、それに『収納』と名前を付けたらうまくできた。
ただ、『亜空間潜行』自身は出来なくなっていた。何らかの形でプロテクトがかけられたような状態だ。
おそらく生命危機の有るような魔法は『知識』側でセーブをかけているのだろう。安全マージンが取れるまで次元潜伏や次元跳躍は出来ないという事になる。
「で?さっきのは何?」
「『収納』って魔法だよ。物を『謎倉庫』にしまったり取り出したり出来るんだ。」
「えっシルドって火属性だよね。火の魔法でそんな事出来たっけ?」
その疑問はもっともだ。
親友のこいつには俺の秘密を話しておこう。
「俺は洗礼で火属性だけでなく闇属性ももらったんだ。」
「えっ?『闇』? そんなの始めて聞いたよ。」
確かに『闇』は一般的には知られていない。神父様の蔵書にあるのはあったが詳しく書かれていなかったのだ。
「さっきもして見せたように『闇』っていうのは『空間』をいじくれるんだよ。」
「?くうかん?」
『謎倉庫』や『空間』はわかりにくいか。そうだな…
「何もない所にポケットを作る力だよ。」
と『収納』を使って飲み干した水筒をしまって見せた。
「すご~い!これならリュックいらないね。」
「でもこの力はナイショだぞ。『闇』は珍しいんだ。教会にばれたら俺、連れていかれてしまう。」
「シルドがいなくなるのはやだよ。」
「だからこれは、俺とレードとの秘密だ。」
「…うん、ボクとシルド、二人だけの秘密だね。」
秘密を打ち明けた所で、
「じゃあ、レードの魔法練習始めようか。」
「でも、こんな場所じゃ狭すぎるよ。」
「言ったろ『何もない所にポケットを作る力』って。『分割抉開器!』
こちらはプロテクトはかかっていない。
闇魔力と共に手刀を振り下ろす。
「えっ?シルドーーーーォ-----」
空間の拡張に従いレードの姿が掻き消えてしまった。
しまったな。あの『知識』が見せてくれた映像のように「対象物を残して」とはいかなかった様だ。
俺は闇魔力の壁を飛び越えると、レードの20シャックン後ろに着地した。
「レード!」
「シルドォ~」
レードは涙目で駆け寄ってきた。
「何をしたの? いきなり光が立ち上ったと思ったらその中にシルドは掻き消えるし、そしたらいきなり後ろに現れるし。」
「ごめんごめん。まさかレードが魔法の影響受けるなんて考えてなかったから。」
「魔法って…」
「とりあえず行くよ。」
「キャッ!」
俺はレードを御姫様抱っこして、また闇魔力の壁を飛び越えた。
俺とこいつとは親友だが時々一瞬だが『可愛い』と思えてしまう事がある。
いかんいかん。俺はBL展開は望んじゃいないぞ。
「これが『分割抉開器!』で作った。空間のポケットさ」
レードを降ろし魔法の説明をする。
「この中なら多少火を使っても大丈夫だぞ。」
今回作ったのは半径100シャックン(約18m)ほどの大穴だ。
火属性だと10シャックンが限界だが闇属性だと100シャックン(約18m)はOKなようだ。
「そうだな、ちょっとまってて」
俺は『謎倉庫』から衝立を出し少し離れた所に刺し
「これにファイヤーボールを打ってみてよ。」
「え~できないよ~」
「…わかった、そっちに行くよ。」
俺はレードの傍で指導することにした。
「いいかレード。昨日みたいに『ライト』を出してみて。」
「ん?…『ライト』出来たよ。」
「じゃ今度はその光の玉をこの炎の玉のようにしてみてよ」
と言って俺は、手に火球を作って見せた。
「う~ん………!できた!」
Aどの手の光球は火球へと変化した。
昨日の応用で的確なイメージができるようなら実現可能なようだ。
ちなみに、魔力でできた火球はそれほど熱くない。(本人には)
「それをこうやって」
○リーグ投法のように足を高く上げて
「投げるっ!」
こうすれば俺でも80シャックン位までは届かすことはできる。
火球は真っすぐ飛んで行き、衝立を少し焦がした。
「さぁ、レードもやってみて。」
「よーし、いくぞー!えいっ!」
レードの投げた火球は、ヘロヘロ~と飛んで行き、途中で消えてしまった。
「駄目だよ、途中で集中を切らしちゃ。的に当てるまで火球を保持しなきゃ」
「難しいよ~」
「出来るまで反復練習あるのみだよ。的に当たるまで続けて」
「わかった」
その間に俺は、闇魔法の検証だ。
まず一つ。空間の拡張、これは出来る。
次に、異空間収納もできた。
異空間潜行および異空間を使っての移動は現在プロテクトがかかっている。
そのうちの空間拡張を検証してみよう。
まずは、取りいだしたる樽。
この中の空間を拡張してみよう。
《ヒュ~~~~~~~~~~~~~~~》
樽の注ぎ口へどんどん空気が入ってゆく。
やはり空間が広がるだけでは中の空気密度は薄くなるので気圧差が生じ空気は吸い込まれるのがわかった。
よし、拡張解除だ。
《シュッ!》「あっ!」
注ぎ口からの吹き出し圧が強く、樽を落としてしまった次の瞬間!
《BAN!》
と樽のふたが吹っ飛んだ!
ふたは自分の斜め前へ飛んで行ったのでケガはなかったが、下手をするといろんな意味で再起不能になるとこだった。
あっぶね~。
「シルド。大丈夫?」
レードが心配して駆け寄ってきた。
「大丈夫だよ。実験がチョッと失敗しただけだよ。」
実際は『チョッと』どころではないのだが、心配かけないのが漢というものだ。
「次からは慎重にするからレードはレードの練習続けてよ。」
「う…うん。」
レードは心配ながらも自分の練習に戻った。
しかしバカにならない空気圧だったな。
樽の臨界まで空気を詰め込んで衝撃でドカン!とか、魔法が時差解除されるようにしかけて時限爆弾とか…
…
ヤバイ応用は置いておいて、この威力をもっと他の何かに応用できないだろうか?
『吸気』して『放出』、『吸気』して『放出』…
一種のワンサイクルエンジンだな。
なんとか風はだせるようになったが…
いちいち切り替えするのが面倒だな。
『吸気』と『放出』を同時にできるようになればいいんだが…
<バシュッ!>
「やったー!あたった!」
色々と思案している間にレードは火球を的に当てられるようになっていた。
日の高さからして11時ごろか。
「レード。練習はこれくらいにして、柴を拾いながら帰ろう」
「え~~、せっかう当てられるようになったのに~。」
「でも今から帰らないと昼ご飯に間に合わないよ。」
「う~わかった。」




