3話 洗礼後の魔法生活
今では体力的にも俺とほぼどっこいどっこいの良き相棒だ。
若干レードの方が器用で、俺の方が力は強い。
技の一号、力の二号 ってところか。
魔法に関してはグロップ神父に見てもらって訓練している。
年上の、オーサ兄やアルデ兄は魔法よりも身体強化による剣術に身を入れている傍で、僕ら年少組は主に魔力の基礎訓練だ。
「シルドはいい感じに魔力を練り上げていますね。そのまま続けなさい。」
俺は、解放された知識の中に『気の鍛錬法』というものがあったのでこれを魔力鍛錬に応用してみた。
神父の指導とマッチしたようで順調な滑り出しだ。
それに対してレードは、
「レードはもっと『光』『水』『風』『火』『土』を分けてイメージしなさい。」
6歳児では集中力は続かないのだろう。苦労している様子だ。
レードは英雄級なので本来なら、王都教会で魔法訓練が課せられるところだが、王都に行くことなくグロップ神父より魔法を教わる事となった。
本人の希望および、名義上は養子なので親と引き離すべきではないと判断されたからだ。
(実際には神父が直接、王都教会に掛け合ったんではないかと推測)
一月もすると、最初はしょぼかった俺の赤魔力も、レードとタメを張れるくらい大きくなった。
で、実際の魔法発動練習に入ったのだが、
…出力は今一つ。
なぜか、効果は10シャックン(約2m)位までしか届かなかった。
ファイヤーボールもファイヤーランスも発動にまでこぎつけるものの、放つと消えてしまうのだった。
「不思議ですね。魔力を飛ばすことは出来ているんですが、その出力に制限がかかっているようですね。過去にそういった例がなかったわけでは無いのですが…」
零距離領域や超接近戦型幽波紋みたいなものか。
出来ない事は出来ないと割り切ることも大切だ。
それなら、今できる事に注力しよう。
「ねえ神父様。これ以上効果がないようなら、森に柴拾いがてら体を鍛えてもいいかな。」
「そうですね、強化術は申し分ないくらい出来ていますから身体特化型でもいいでしょう。いいですか。くれぐれも危険な場所には行かないように。それと、魔獣を見かけたらすぐ逃げてきなさい。貴方の足なら逃げ切れるはずです。」
「わかってるよ。行ってきます。」
俺は、魔力鍛錬しているレードを残し、森へ駆け出した。
森の中を駆けながら適当な落ちている枝を拾ってゆく。
森に来た本来の目的を隠すため、柴は一定量は集めておく必要があるからだ。
かなり森の奥まで入った。ここならだれにも見つかる事はないだろう。
ここまで来た目的は『闇』魔力の検証だ。
女神は『空間』と言っていたが、それは何か?
『知識』を探ってみると『空間湾曲』という言葉が引っかかった。
どうやらある技に対する掛詞のようだ。
その技とは、
『中心で拡張場を発生させ、それを拘束場で固定することで戦闘空間を作り出す』
???…
何かよくわからんがその場所を『押し広げる』というイメージは解った。取り合えずやってみよう。
設定としては20シャックン(約3.5m)でいいか。
呪文名は…
『分割抉開器!』
闇魔力と共に手刀を振り下ろせば、突然、足元が無くなりバランスを崩しかけたが、何とか新たに出来た地面に着地した。
そこは足元を中心とした深さ5シャックン、半径20シャックンの大穴だ。イメージどおりだ。
それが出来たという事は、俺の闇魔力は赤魔力より効果範囲が広いという事だな。
中からの検証は終わったので、ジャンプして穴から出ようとすると
<バチン!>
「いってぇ~」
見えない壁に阻まれた。
よく見ると自分の闇魔力が地上10シャックンまで立ち上っていた。
バリアのようなものか?
『拡張場』が空間を押し広げているのだ。それなりの強度があって当然だろう。
「ならば」
脚力強化でさらに高くジャンプしその闇魔力の壁を飛び越えた。
着地し後ろを振り返るとそこには穴はなく20シャックン先に黒い棒のようなものが立っていた。
?
一瞬疑問に思ったが、どういう事か理解できた。
俺はさっきまであの棒の中にいたのだ。
棒の外側の空間が湾曲していたとしても光は空間に沿って進むからその湾曲は視認できないのだ。
『知識』を元に試してみたがこれは、地面に穴を開けなくても有効に使えるのではないか?
つまり棒状の空間を広げるのではなく視認できないくらいの微細空間を広げる事で光学迷彩。いや、完全に空間に紛れ込めるのではないか?
このやり方。『知識』には『空間にファスナーを取り付けるもの』なんかがあったが技名としてはしっくりこないな。
あくまでも『亜空間』に『潜行』するのだから…かっこいい技名があったぞ。
『亜空間潜行』
俺は次元に裂け目を作って飛び込んだ。




