2話 クランでの生活
クラン拠点に戻ってきて。
「さて、これから反省会と行きたいところだが、各々疲れているだろう。」
[[[やったー!反省会なしだー!]]]
「ゆっくり休んだ後、反省文を書いて俺の所に持ってくるように。」
[[[反省会の方がましだー!]]]
さて、俺も報告書を書くか。
今、俺は冒険者のクラン『黄金の剣盾』に所属している。
元々は幼馴染のレードと共に始めたパーティーだったが、一人増え、二人増え、ついには100人規模のクランになった。
大きな依頼なら有力メンバーでのパーティーとなるが、普段だと、その有力メンバーをリーダーとして数人のパーティーでの活動となる。
各パーティーが有力メンバーを中心に効率重視で依頼をこなしていく中、俺は主に新人教育を中心としたパーティー行動をしている。
それが俺の本来の『職業』の使い方だ。
もちろん稼ぎは悪いが、安全第一。幸いにも大けがを負うようなメンバーは出していない。
他のパーティーリーダーからの陰口は聞こえてくるが、クランリーダーのレードからは『お前の好きにするといい』とお墨付きをもらっている。
好きにさせてもらっているが何も成果が出ていないわけじゃない。
俺の元に居た新人は今では各パーティーを下から支えていってくれてるのだ。
報告書作成終わりっと。
後は事務にこれを提出すれば今日の作業は終了だ。
「ムーシャさん、報告書の受領頼む。」
「はいシルドさん。え~と…うん、記入漏れはないですね。確かに受領しました。」
「ありがとう。」
「そんな、とんでもない。シルドさんくらいですよ、毎回忘れずに報告書くれるのは。」
「いやあ、ほどほどで成果を出しているから時間に余裕があるんだよ。」
「その『ほどほど』の成果をコンスタントに出しているのがすごいです。『失敗』の報告書出された事ないじゃないですか。他の方なんかは『大成功』は多いですがたまに『大失敗』なんてやらかしますから。」
「まあ、俺の受け持ってるのが新人だから無理はさせれないよ。」
基本、俺一人で達成できる依頼しか受けないから、失敗しかけてもフォローできる。その分『反省会』『反省文』は増えるが。
「あっ、副リーダーが呼んでましたよ。戻り次第、リーダー室に来るようにと。」
「わかった、ありがとう。」
今レードは王都に行っている。
俺たちのクランの実績に王が表彰してくれるというので、そのため留守にしている。
だから現在のクラン責任者は、副リーダーのフラムという事になる。
でもレード大好きっ子のフラムが俺に何の用だろうか。
<トントン>「シルドです。」
「入りなさい。」
<ガチャ>「失礼します。」
部屋に入ると、何人かパーティーリーダーもいる。ほとんどが俺をよく思ってない奴らだ。
この雰囲気は、悪役令嬢ものの断罪場面だな。
この先の展開は読めるが、一応聞いておこう。
「副リーダー。何か御用でしょうか?」
副リーダーは俺より年下だが、役職上クランNo.2なのだ。正式な場では正式な言葉遣いが必要となる。
それに他のメンツも一応役職持ちだ。
俺か?
俺の役職はヒラだ。一応クラン創設メンバーではあるが役職は『新人パーティーリーダー』位か。あっ『クランリーダーの幼馴染』ってのもあったな。いやこれは役職でなく称号だな。
「シルド。貴方はクビです。」
やはりか。
「理由をお聞きしても?」
「そうですね。まずシルドのパーティーの成績の低さです。レード様の幼馴染ならそれ相応の実力はあるはず。そのうえでこの成績なら、怠けているとしか思えません。何か弁明は?」
確かに俺の実力なら、それ相応の成績は上げられるだろうが、それでは新人は育たないのだ。そこが理解されないのは…やはり俺の『職業』のせいだろう。
「また『盾』職でありながら盾の実力が私より格段に劣っているのも問題です。」
周りには職業『盾』で通しているが俺の本当の職業は『盾』ではない。
「討伐終了後、度々どこかへ行ってしまわれることがあるようですね。小用なら仕方がありませんが、あまり頻繁だとパーティーリーダーとしていかがなものかと」
『ちょっと野暮用だ』と言って席は外したことは度々あるが、安全確保した上での行動なので大目に見てもらいたかったのだが。
「新人からも苦情が来ています。『回収班の仕事をさせられる。つらい』と」
あいつら…つらいのは判るが苦情として上げるか?…
「こんなところですか。」
…こうやって追い出されるという事は、ここでの俺の仕事も終わりのようだな。
「ところでこの件はレードには。」
「この事はレード様にも伝えてあります。全て私に任されております。」
レードならこういう事は俺に直接話すはずだ。となるとやはりフラムの独断か。
まあいいや。
「わかった。少々引継ぎがあるので2~3時間後に出てゆくよ。」
「あっ、その盾は置いていってください。クランの紋章入りなんでクランの支給品でしょう。私が上手に扱ってあげますので。」
「この事もレードの判断か?」
「はい。」
うん、『独断』決定だ。
この盾がどんなものかレードはよく知っている。
それを俺から手放させることがいかに問題となる事かも。
「じゃあな。今まで世話になった。レードによろしく言っておいてくれ」<バタン>
俺はリーダー室を後にした。