13話 馬車塚での宴会生活
「いやはや。馬車塚でこんなにうまい夕食が食べれるなんて思いませんでしたよ、シルドさん。」
私は、皆のために肉を焼いてくれている冒険者へ声をかけた。
「おいしい肉とおいしい野菜が手に入ったからですよ、座長さん。」
「最初は『熊肉』と聞いて遠慮しようかと思ったのですが、この食欲を誘う香り。そしてこの肉の柔らかさ。そして味。絶品ですな。」
前に食べたのとは比べ物にならない味。これなら王都のレストランでも通用する味だ。
「屠殺直後にちゃんと血抜きをすれば、大抵の肉は食べれるようになります。ただ、やはり熟成させないと肉は固いので、熟成の代わりに特殊な調味液につけましたが。」
「そうですか、ちなみにその調味液のレシピは?」
「これのですか? お渡ししてもいいんですが、作るのにコツがあって慣れないとほとんど失敗するものなんですよ。」
「そうですか。それは残念です。」
調味液の秘密がわかれば、今後の旅も快適になろうものだが。
「これ以外にガルム茸で挟み込む方法もありますよ。」
「ほほう、それは簡単ですな。」
「とはいえ、野営時に常に肉が手に入るわけではありませんけどね。」
うむ、確かに。
冒険者に護衛を頼んだとしても、驚異の排除が主な仕事であり、肉の採取は別依頼だ。頼めばしてくれるかもしれぬが。
「干し肉と野菜を煮込むだけでもおいしいスープは作れますよ。アクトには教えていたはずですが。」
そういえば野営時のスープの味が良くなっていたな。アクトを入れてから。
「シルドさんも焼くのを交代して食事をされては?」
「いいえ、自分はこう焼きながら、ちょっと焦げ付かせちゃった分食べてるので大丈夫ですよ。さっ、座長さんももっと食べて。」
サッと、上手に焼けた肉を皿に乗っけてくれる。
「ありがとう。」
なんとも気のいい冒険者だ。
ここには我らだけでなく、同じ馬車塚で野営する他の者も一緒に食事をしている。
酒は積んではいなかったが、他から差し入れをしてもらったので、さながら宴会の様相をしている。
飲みすぎないように言っておかねばな。
さらにはアクトたちが劇の稽古を始め、それを他の者が見る。いや、もう稽古ではないな。
衣装、舞台装置なしの本番そのものだ。
毛皮商との顔つなぎもできた。
今度、王都に行った際のスポンサーに加わってくれると言ってくれたのだ。
なんとも良い縁が結べたものだ。
護衛に問題はなくなり、野営も快適に。
この方を同行させて…いや…同行していただいて、よかったと思う一日だった。




