1話 パーティーでの生活
俺は防御態勢を維持しながら、指示を出す。
「正面への攻撃は全て俺が捌く!各自攻撃の手を緩めるな!」
そんな中、斥候ルーアへ指示を出す。
「ルーア、近づきすぎだ。もう少し離れて翻弄しろ。リーシャ!弾幕が甘い!
魔法士のリーシャにも、指示を出してゆく。
「威力は落としていいから数を打て、っ来るっ!」
<ガッシャーン!>
俺は猿型モンスターの攻撃を盾で受け流しながら、
「ラート!今だ!」
剣士のラートへ攻撃指示!
「てぃやーーーー!」
その一撃がモンスターの脳天を割った。
「やったー!俺が倒したぞー!うぎゃっ!」
とどめを刺したと喜んでいる所悪いが、突き飛ばさせてもらった。そうしないと間に合わなかったからだ。
<ガッシーン!>
俺はモンスターの攻撃を盾で受け止めた。
そう、まだこのモンスターは『生きて』いるのだ。
<ガッシ!><ガッシ!><ガッシ!><ガッシ!>
頭をつぶされてもこぶしを叩き込んでくるモンスターの攻撃を全て受け止めてゆく。
すでに弛緩してしまっているこのメンバーではさばいた攻撃に対処できないからだ。
「最後の最後まで気を緩めるな!」
さて、頭をつぶされても動いてるという事は別に中枢があるという事だ。
このタイプのモンスターに別脳や神経球を持つなんて報告例はない。という事は…
<ガッシャーン!>
攻撃を見極め、誰もいない方へ攻撃を受け流した後、
「ハッ!」
と持っていた剣で喉元を一突き!
「ピギィィィ!」
これでモンスターの動きは止まった。
やはり別モンスターに寄生されていたか。
こちらは他モンスターの延髄あたりに取り付きその行動を制御する虫型モンスターだ。
剣を抜き取り少し距離を置いて残心…
「これでもう動かないとは思うが一応、索敵をかけるぞ。フォーメーショントライアングル!」
なんとか気を取り直した3人が俺の周りに集まる。これで安心して魔法が放てるな。
「行くぞ!『アクティブモナー』」
これは魔力による反響定位魔法だ。
原理は単純で、自分の魔力を放ち何らかの魔力反応を感知するものだが、魔法職でない俺だと魔力分析に数秒かかってしまう。その間、無防備なのだ。
「ッ!ルーアの1時の方向の岩陰!」
「はいっ!セイヤー!」
ルーアのブーメランが宙を舞い岩陰を通過!
<ザシュッ!>
「ピギャーーーー!」
もう一匹、虫型モンスターが隠れていたのだった。
おそらく、猿型モンスターで気絶させられた相手にに寄生するつもりだったのだろう。
「さて、これでモンスターは殲滅出来たわけだが、この後交代で『見張り』と『剥ぎ取り+解体』を行う事。」
「えー、シルドさん。少しは休ませてくださいよ。」
「俺、解体苦手だよ。」
「回収班には連絡入れたんでしょう、回収班が解体してくれるんじゃないのですか?」
今このバーテーはクランに属していて、そのクランでは専属の回収班がいる。そのおかげでモンスター素材を効率よく回収できるのだ。
回収班との連絡は、特殊分割した魔石を使う。この魔石、片方を砕けばもう一方も砕けるのでこれを使えば回収班を呼ぶことができるのだ。
「確かに、回収班が捌いてはくれるが、回収班が来れなかったらどうする? それに素早く解体が必要な部位もある。それを無駄にするのか?」
「いえ、それは…でも僕らは戦闘職ですし…」
「…いいか、戦闘職だからって後片付けしない理由にはならないだろう。それになんでも一通りこなせる方が重宝がられるぞ。わかった。『休憩』『見張り』『剥ぎ取り+解体』を交代とする。じゃあまず最後のとどめを刺したルーア。先に休憩しなさい。リーシャは見張り。ラートは解体だ」
「「「…はーい。」」」
「ラート。ここはこの関節部分に刃を入れてだな。えい!こうすれば簡単に切り離せるだろ。」
「なるほど!」
俺は周囲警戒しながらも、解体の指導をしてゆく。
時折、小型モンスターの襲撃もあるが、そちらも見張り役とサクッと対処してゆく。
そうこうしているうちに回収班が到着した。
「シルドさん。お待たせしました。」
「ランド。丁度いいタイミングだ。」
「わー、あらかた解体されたんですね。いつも助かります。」
「いや、こいつを先に取ってて置きたかったんでな。」
大小の革袋を開けて見せた
「わー 肝と胆嚢ですね。」
「いつもどうり冷却魔法をかけてある。中継拠点までは持つはずだ。」
「いつも助かります。俊足班これを中継拠点に。エイプ種の肝と胆嚢です。」
「「はい!」」
一瞬現れた二人組は、革袋を受け取るとまた一瞬でいなくなった。
俊足班は緊急連絡に特化した班で、回収班には常に随伴している。
フードをかぶっていたが一人はイダだったか?
「回収班も来たことだし、みんな帰るぞ。」
「あれ?シルドさん。もう一・二体討伐できそうな時間ですが。」
「ああ。今日こいつら少しへまをしたんでな。これから帰って反省会だよ。」
[[[げ~~~]]]
「ご愁傷さまです。」