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黒衣の守護者  作者: 樽吐
全ては…必然
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(2)

「ショノア! ショノア‼︎」

 声を掛けられてもショノアは手を休めなかった。もうほとんど形の残っている瓦礫はない。遅れをすっかり取り戻す勢いでショノアは周りを破壊し尽くしたのだ。だがそれでもまだ何かを破壊しようと魔法を発動する。

「もうやめて!」

 デルフィラは必死でショノアを背中から抱きしめる。その感触にようやくショノアの手が止まった。

「……」

 デルフィラの体温が伝わってくると同時に、自分の体が冷え切っていたらしいことを自覚する。ようやく息が吸えるようになってショノアは思わずその場に座り込んでしまった。

「落ち着いた? 本当に今日はどうしたの? やっぱり何処か具合が悪いんじゃないの?」

 デルフィラは気遣ってくれるが、彼女には何も話せない。ショノアが荒れている原因の一つは未来の彼女にあるのだから。

「デルフィラ…」

 屈み込んでショノアと同じ目線になってくれた彼女の顔を見つめれば、労わるような目で彼女はショノアを眺めている。

「先に…帰ってくれないか? ここの作業が終わったこと…報告しないといけない…」

 思わず視線を逸らし、絞り出すようにそれだけを口にする。この場所から人の住んでいた痕跡を消す話は騎士団からの依頼だ。今日1日で作業を終えると豪語したショノアに騎士達は疑いの目を向けてきたが、彼らは作業の進み具合を知るために今も王都で待っているはずだ。

 しかしまだまだショノアの心は乱れ過ぎていて、とても王都に帰る気分にはなれなかった。何しろ王都にはセレンがいるのだ。今は顔を合わせられない。

「今のあなたを置いていけるわけないでしょう? ここはもう安全な避難所じゃないのよ?」

 デルフィラはショノアを諭すように言ってくる。確かにこの地は他より魔物は少なく温厚な性格のものが多いが、それは魔物の方から積極的に襲ってこないというだけの話だ。夜になって魔物の行動範囲が広がりうっかり遭遇してしまったら、場合によってはショノアでも危機に陥る可能性がある。

「少しの時間だけで良い…。陽が沈みきる前には戻る…」

 と言ってももう辺りは随分と薄暗い。陽が落ちるまでそんなに時間があるとも思えないが、そうでも言わなければ彼女は納得しないだろう。

「…頼む。このまま帰ったら…俺は誰かを傷付けてしまうかもしれない…」

 未だにショノアの中の後悔と懺悔の思いは彼の心を苛み続けている。その苦しみから逃れるためなら、今のショノアはどんなものにでも縋るだろう。ふとしたことで誰かに八つ当たりしてしまうかもしれない。その相手はセレンになる可能性が高かった。だとしたらまたショノアは激しく後悔することになる。

「……ショノア」

 デルフィラはきっと理由を尋ねたくて仕方がないに違いない。理由がわからなければショノアを元気付ける糸口も掴めないのだから。それでも彼女は決して自分から聞き出そうとはしない。ショノアが話したくても話せないことをわかっているからだ。

「わかったわ。でも本当に気を付けて。今のあなたは普段のあなたじゃない。それだけは自覚しておいて」

 デルフィラは気の進まない様子で使い魔を呼んだ。

「後で使い魔だけ迎えに寄越すわ。ちゃんと帰ってきてね」

 彼女の隣で黄金の鷹が形を成し、すぐにデルフィラはその上に飛び乗った。

「……ああ、わかった。面倒かけて悪いな…。助かる…」

 この場所まではデルフィラの使い魔に乗ってきている。馬にも乗っていないショノアなら、帰り道はかなりの時間を要するだろう。彼女の申し出はありがたかった。だが本当を言うと、今晩は王都に帰れる気がしない。デルフィラもそれを恐れたからこそ迎えを寄越すと言ったのだろう。彼女は名残惜しげにその場を去っていった。

 1人になるとようやく気を抜くことができる。それと同時に込み上げてくる涙。もう止める必要もない。ショノアは涙が流れるに任せ、気が済むまで泣いた。何も無くなってしまった土地に彼の泣き咽ぶ声だけが響く。

 太陽はすっかり沈み、代わりに月が昇ってもショノアはその場に蹲り続けた。厚い雲が月明かりに照らされ、完全に夜となっても辺りは完全な闇ではない。魔物達はその月の光を受けて活性化すると言われているのだ。これ以上ショノアがその場に居座り続ければ、魔物と遭遇してしまうかもしれない。それでも良いとさえ思っていた。

「ショノア」

 その時、自分の名を呼ぶ声が聞こえた。その声にショノアは反射的に顔を上げる。

「……セレン…?」

 声の聞こえた方向に顔を向ければ、そこにはセレンが立っていた。何故彼がここにいるのか。迎えに来るのはデルフィラの使い魔のはずだ。ショノアは立ち上がる気力もないまま、とにかくセレンから離れようとずり下がる。

「…こっちに来るな…! 俺はあんたを殺そうとした…!」

「⁈」

 セレンは驚いたらしく足が止まった。

「俺は最も大事な時に最もやってはいけないことをしたんだ! 俺がいなければあんたは女王を倒せていたのに…!」

 叫ぶショノアにセレンの顔が悲しんでいるのか、喜んでいるのか、よくわからない表情に変わる。

「……ファタル…」

 名前を呼ばれるとショノアの目にまたしても涙が迫り上がってきた。許されない、むしろ許さないでくれ、放っておいてくれ。そんな気持ちばかりが湧いてくる。

「そうですか…、だからあなたの様子がおかしくなっていたのですね?」

 セレンはわずかに怒ったような顔をしてショノアの方へ歩いてくる。そしてショノアの前で屈み込むと腕を掴み、これ以上逃げられないように引き留めてしまった。

「ファタル、あなたはもう自分を責める必要はありません。あれは全て…必然だったのです」

 強い口調で告げられたその言葉に、ショノアは思わず動きを止める。

「彼女をあの時殺していたら…私はこの時代に来ることもなかった…。デルフィラという女性に出会うことはなかったのですよ? そして…この時代でリーンという名で存在することもない。だとしたらこの時代のミレノアルを救ったのは一体誰なのです?」

「…それは…」

 セレンの伝えたいことは理解できる。ファタルの行為は結局今の状態を招いた最大の要因だ。だから気にしなくても良いのだと彼は言っているのだ。

「けどそれは…あくまで結果の話だろう⁈ 俺はそんなことになるなんて知らずにあんたを殺そうとした…!」

 結果が良ければ全て許されるなど決して思わない。たとえこの結果を知っていたのだとしても、それでセレンを苦しめても良いという理由には決してならない。聞き分けのないショノアに対して、セレンの顔が更に厳しさを増す。

「ですが最後の最後で私を助けてくれたのもあなたです! あなたがいなければ私はあの時女王に殺されていました! 記憶もないあなたが私を守る理由はない。それでもあなたは私を体を張って助けてくれたではないですか!」

「……」

 ショノアは自分の腕から引き剥がそうとしていたセレンの手を、そのまま握りしめて顔を伏せた。あれは偶然起きた奇跡だ。本当ならショノアはセレンのことを最後まで敵だと信じ、彼が死ぬまで攻撃を続けるつもりだった。

「ファタル、あなたは決して女王の言いなりになどなっていない。あなたはずっと彼女に抗い、自分の中の恐怖と戦っていたのです。むしろ…あなたを殺そうとしたのは私の方です…」

「セレン?」

 顔を上げれば、セレンの顔は冷たいほどに表情を無くしていた。彼が心を殺している時に見せる顔だ。

「これから生まれてくるネメアを倒そうとして私はあなたを殺そうとした。…殺せなかったとずっと後悔し続けたのですよ? あなたのように操られていたわけでもない私が…幼く小さかったファタルを殺そうとした…」

 淡々と告げられるその言葉に、今度はショノアがセレンの腕を掴んでいた。彼が自分で自分の心を傷付けているのが見えるような気がしたのだ。

「結果の話…と言ってしまえばそれまでです。それまでの過程を忘れるつもりもありません。ですが…当時を悔やむあまり、今の私達が疎遠になる必要など決してありません。そうしてまた新たな後悔を生むつもりですか?」

 思えばセレンはかつての敵に囲まれているような状況だ。デルフィラは宿敵であり、ショノアは最後に死闘を繰り広げた相手だ。それでも今の2人にその意思が無いのだからと受け入れた。

「さあ、もう城に帰りましょう。デルフィラも心配していますよ?」

 セレンはそう言って、ここに自分が来た経緯を話してくれた。デルフィラはショノアの様子がおかしいのは未来の何かが原因だろうと気付いていたらしい。彼女はセレンを探してショノアを連れ帰るよう頼んできたのだそうだ。彼女の使い魔ではなく、セレンが代わりに現れたのはそんな理由からだったのだ。

 セレンは立ち上がると同時にショノアの腕も引っ張り上げる。そうなるとショノアは立ち上がるしかなくなってしまったが、そうでもしてくれなければ彼は一晩中でもここにいたかもしれない。セレンはそのままショノアを自分が乗ってきた大きな馬の前まで連れていく。そしてショノアを馬に乗せると、すぐ後ろに自分も乗り込んだ。

「随分と日も暮れていますから、ゆっくり帰った方が良いでしょうね…。この辺りの魔物は刺激さえしなければ襲っては来ません」

「……」

 ショノアは何も言えずに手綱を握るセレンの腕にしがみ付いた。本当は馬の足であろうとこんな所でゆっくりしている時間など彼には無いはずだ。彼の体調が元に戻ったのを受けて、最近ではガレスへの攻撃に向けての準備が着々と進められている。連日作戦会議も開かれており、セレンが忙しくしていないわけはないのだ。

 だが申し訳なくても今のショノアにはこの時間がとても大切な時間に思えた。彼の腕にしがみ付いていると、まるでファタルに戻ってしまったかのような気分になる。年齢が少年のものにまで戻ってしまっているせいもあるのかもしれない。

 セレンは何も言わずに馬を歩かせ始めた。辺りは暗く、魔物の声だけが時々響いてくる。あの声の主が襲ってきたとしてもショノアもセレンも負けはしない。しかしだからこそセレンは魔物から襲ってくるような状況にはしたくないのだろう。昔からセレンは魔物に対しては徹底的に無駄な争いは避ける。そんな人間なのだとマリウスも話していた。

 不安はないものの、魔物を完全に信用できるわけではない。しかも(たかぶ)ってしまった心はなかなか元には戻らなかった。ショノアは魔物の声が聞こえてくる度に周りを見回していたが、そんな彼の肩をセレンが空いている方の腕で包み込むように抱いた。その腕の力が大丈夫、何も心配はいらないと伝えてくるようで、ショノアは自分の心の中に安心感が広がっていくのを感じていた。しかし心が落ち着いてくると、やはり彼との思い出が戦っている時のことしかないのが残念で仕方がない。

「やっぱり…消された記憶は戻ってこないみたいなんだ…。マリウスのことも…牢で会う以前のことは何も…」

「それでも…あなたがファタルであるということまではわかったのです。これで…あなたの出自ははっきりしました」

 両親がわからないことで悩んだ覚えはあまりない。それよりも自分が何者なのかの興味の方が先に立っていた。だがそれでも両親が女王の出現に最も早く気付き、行動を起こしていた。そしてファタルを守るために必死で戦ってくれたことがわかった。それはショノアにとって大きな収穫であり、今後も心の支えとなっていくことだろう。

「私は…あなたを殺せていなくて…良かったのですね…。あの時私があなたを殺していたら…こうして再会することもなかった…」

 セレンはずっと不安だったのだと話した。ファタルを殺せなかったことについては本当にセレンの個人的な理由によるものだ。2人が事前に親しくさえしていなければ、或いはセレンはファタルを殺していただろう。しかもファタルについてはセレンが殺さなかったとしても、どちらにしてもネメアによって命は奪われるのだ。セレンはただ自分の手で殺したくないと逃げただけに過ぎない。

「あなたの中から生まれたネメアがどうなったのか…、今はわかりません…。もしかしたら女王の支配下に置かれて今も人々を襲っているのかもしれません。それでも私は…」

 セレンは途中で言葉を切る。ネメアの誕生を許しても、ファタルの命を取ってしまった。そんな自分を肯定することは、騎士であるセレンにはできない。それでも彼個人としてはファタルが生きていたことをひたすらに喜んでいる。そんな葛藤が彼の言葉から透けて見えた。しかしそんな利己的とも思える彼の感情が今のショノアにはむしろ嬉しい。

「俺から生まれたネメア…。もしかしたらあの異世界で遭遇した奴かもしれない…」

 ショノアはふと思い浮かんだことを口にした。確信はないものの、そんな気がしたのだ。そうでもなければ異世界にネメアがいた説明が付かない。

「あの時のあんたに…異世界に逃げる力が残っていたとは思えない…。生きてるのが不思議なくらいだったんだから…」

 決定的な攻撃こそショノアが防いだものの、あの後セレンに動く力があるようには見えなかった。デルフィラの加護の魔法があったとしても、異世界への入口が開いていたのだとしても、女王の攻撃を掻い潜って異世界に逃げ込むことなどあのセレンにできるはずがない。だとしたら、誰かが彼を異世界に運び込んだのだ。

「確かに私はどうやって自分が異世界に来たのかを知りません。…目が覚めると…何もかもが知らない場所でしたから…」

 セレンはあの時“デルフィラ”の「逃げて」と叫ぶ声を聞いていた。そして何かに運ばれたような感覚があったらしい。その後は彼も意識が無くなってしまったためよくわからないのだと言う。

「俺から生まれたネメアが俺の支配下にあったのなら、あんたを逃がそうとしたはずだ。あのバカでかいネメアなら、女王の攻撃にだって耐えられる」

 きっとそうだ。だからこそあのネメアは異世界にいた。そしてショノアを見付けて元の世界に帰してもらおうと姿を現したに違いない。

「しかし私を連れて異世界に入ったものの、帰り道は既に閉じていた…。私同様、あのネメアも帰り道を探して1年以上も彷徨っていたということですか…」

 セレンの声にわずかに同情するような響きが混じる。あれだけ酷い目に遭わされたネメアが相手だというのに、彼は憐れんででもいるかのようだ。いくら自分と同じ目に遭っていたのだとわかってもショノアなら魔物に同情などしないだろうに、本当に人の良いことだ。

「もし…その予想の通りであれば、あのネメアはミレノアルを襲っていないということになりますね…。だとしたらどれだけ良いか…」

 セレンはショノアの立てた仮説を嬉しそうに聞いていた。可能性としてはかなり高いが、完全に楽観視するわけにもいかないと、そんな様子だ。

「いずれにしても…あのネメアは異空間の外に出て行ってしまった…。もう二度と遭遇することもない。あんたがこれ以上気に病む必要はないと思うんだ…」

「…そんな遠くに…訳もわからずに行ってしまったのですね」

 セレンの声には落胆の色が濃かった。あのネメアが自分を助けてくれたのだと思えば彼の同情心はより強くなったのだろう。それに、ネメアの辿った運命はいつ自分に降りかかるかもわからない。自分に重ね合わせてしまえば、ただ哀れでしかないのだ。

「本当に惜しいことをしてしまったと思う…。俺の支配下にあるネメアなら…剣に変えることだっていくらでもできたのに…」

 あのネメアがいなくなってしまったと知った当時は、まだデルフィラとネメアとの力関係に不安があった。しかしあのネメアがショノアの“所有物”であったなら話は別だ。

「ネメアに抵抗する意思がなければ、ネメアより力の劣る俺でも姿を変えられる。…そしたらあんたに…聖剣を作ることもできた」

 もしそれができたなら、ショノアはセレンを殺そうとした過去も精算できたような気になれただろう。こうなったらあのネメアを亜空間に探しに行くべきだろうか。何しろ最近、ヘイムの功績が全てセレンのしたことのように言われていて、セレンはかなり追い詰められてきているのだ。それはまるでアルゴスが攻めてくる直前のセレンを見るようだった。

「ネメアはあなたのものですよ。あなたが10年間も苦しんで育て上げたのです。私のものにして良いはずがない」

 セレンは当然そうあるべきだと簡単に言ってのけたが、本心だろうか。ショノアには納得がいかなかった。

「心配はいりません。あなたのことがファタルと繋がっていたと知って…、私も腹が決まりました。聖剣は…いつかきっと…現れます」

 それが、ショノアがネメアを亜空間から連れ戻した結果になるのか、他の要因によることになるのかはまだわからないが、ひとまずセレンは心穏やかに待つことにすると言う。

「なるようにしかならないのだと…口で言われてもやはり納得はいかないものなのですね…。ここまで来てようやく私は待つことに決めたのですから…」

 過去から未来を想像できる場合は多いが、未来の姿から過去を思い起こすことが到底できないような場合もある。そんな過去を目にして、冷静に見ていられる人間などあまりいない。まして自分が過去の一部になってしまっていたのなら尚更だ。

 時を遡ったかつてのガレス人達も多くがその心境に陥り、知らず知らずの内に未来に影響を与えている。セレストの革命も、そんな未来のガレス人達による影響があったのではないかと、そんな説を唱える人間もいるくらいだ。

「…ショノア。本当に生きていてくれて、ありがとう…。そしてよくぞ…私をこの時代に連れてきてくれました」

 ファタルの存在無くしては、“リーン”がミレノアルを救うことなど決してできなかった。それをセレンは静かに感謝する。

「それを言うならあんたが俺を殺さずにいてくれたからだ。そうだろう?」

 ショノアの言葉にセレンは少しだけ笑い声を漏らした。本当に心から嬉しそうに彼は笑っていた。

「もうあと一息です。ガレスを攻め落とした時には私は聖剣を手にしていることでしょう」

 彼の手には聖剣の柄が残されている。それは聖剣と呼ばれる剣が間違いなく存在したという証だ。だとしたら聖剣は必ずセレンの前に現れる。

「……ああ、俺も…、あんたがそう言うなら気長に待つことにするよ」

 セレンにはそう伝えたものの、ショノアは亜空間に入る方法を探ってみようと密かに考える。どちらにしてもこの所、復興作業も随分と進み、ショノアの仕事も少なくなってきている。ガレスに攻め込む準備として新しい魔法を仕入れておくのも大事な作業だ。

「戦いが終わって、俺達の時代に戻ったら…ガレスにある俺の家に、連れて行ってくれるか?」

 ファタルの記憶は結局全ては戻ってこなかった。思い出せないのではなく、消滅してしまったのだから仕方がない。だがファタルの痕跡が残っているのなら、それによって過去を知ることはできるだろう。

「ええ、行きましょう。必ず」

 セレンも今まではファタルのことを悔いるばかりだった。そのためにファタルの家になど近付くことさえできなかったに違いない。だがもうそんな悔いからは解放された。後は聖剣さえ現れてくれれば、もう何も思い悩むことはなかった。


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