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落とし穴

……ああ、もう最悪。

 死地へ赴くこと自体が最悪だけど、馬車が揺れに揺れまくって気持ち悪いのも鬱になる。

 おまけに閉め切った密室で、マルコとふたりきりときたもんだ。

「パパ、怖いでちゅ。ルシウスちゃんの奇跡の力で守ってくだちゃいね~」

 だとぉ!? 己の赤ちゃん言葉も十分すぎるほど怖いわ! 

 でもさ、丸二日間続いた旅程は、地獄のほんの入り口に過ぎなかった。

 魔族との激しい攻防が続くラインフェルド川は血に染まってた。いや、比喩とかじゃなくて、大型トラックが十台ぐらい並走できそうな広さの川が真っ赤っ赤。その中で兵士とモンスターが死に物狂いの形相で剣を激突させてる。

 そんでもって贔屓目なしに判断すると、兵士側が劣勢に見えた。

 小高い丘から戦場を見下ろしたマルコはガクブル状態。もちろん俺も恐怖で全身の震えが止まらない。

「にゃあ」

 早く帰ろうぜってアピールしたら、マルコと初めて心が通じ合えた。

「我が国の兵士たちの頑張りは、しかとこの目に焼き付けた。さあ、引き返すとしようか」

 到着してわずか三十秒での帰る宣言に大隊長は思わず「はあ!?」みたいな顔を隠し切れてなかったけど、そんなことに構ってるわけにはいかない。

「にゃあ」

 催促すると、マルコは俺の頭を撫でて頷き、

「さあ、引き返せ!」

 御者に命じた。

 ……動かない。

「どうした、早く出せ!」

 恐怖からイラ立っているマルコは、車両の前部にある間仕切りを勢いよく開けて怒鳴った。

「動かないんです」

 馬に荒々しく鞭打つ御者が、不思議そうな顔をして振り返った。

 確かに二頭の馬はどちらも、石像のように微動だにしない。どこか様子が変だ。

「遠路はるばる足を運んだというのに、わたしに挨拶もしないで帰るとはつれないじゃないか、マルコ王よ」

 ボイスチェンジャーを使ったような、極端に低く邪悪な声が空から降ってきた。

 マルコと同時に間仕切りから見上げると、身長二メートルぐらいある、頭からバッファローのような巨大な二本のツノを生やして真っ白い仮面をつけた、首から下を黒マントで包んだ男(?)が、馬車の十メートルほど上空に浮かんでいた。

 誰? ってか、何で宙に浮いてるの? イリュージョン?

「何奴!」

 大隊長や側近たちが剣を抜いて飛び出し、辺りは急に緊迫した雰囲気に包まれた。

「誰だ!?」

 何とか威厳を保った勇ましい声でマルコが誰何すると、

「お初にお目にかかるマルコ王。我が名は魔王ベルゼーブ。まさか、王自らがこの地へ足を運ぶとは思わなかったぞ。その勇気を称えて、三日間の猶予を与えてやろう」

「猶予だと?」

「我々に無条件で領土を差し出すのであれば、国民の命は救ってやる」

「ふ、ふざけるな!」

 何かもうこのやりとりを見てるだけで、どちらが優勢かがわかったし、トラファルガー国の未来が見えた気がして俺は絶望した。

 魔族にとって猫とはどういう存在なんだろう? 同胞? ペット? まさか食料!?

「我が国の兵士たちが、お前らなんぞに屈するはずがない。無条件降伏など受け入れるものか!」

 意地を張るマルコ王に向かって、魔王が右の手のひらを向けてきた。

「魔王は不思議な力を使うと聞くぞ。気をつけろ」

 大隊長が側近たちに注意を促す。え、もしかして、魔法とか使えちゃうの?

「なまじ元気があると、人間は見込みのないことにも期待を抱いてしまうものだ。三日間、苦しみもがき考えることだな。国と国民の未来についてしっかりと」

 こちらに向いている魔王の手のひらが一瞬、紫色に光ったかと思うと、

「ぐふっ!」

 マルコが突然、喉を押さえて呻き声を上げながら、床に倒れ込んだ。顔面がみるみる青紫色に変色して汗まみれになる。

「にゃあ!」

 側近たちに異変を訴えるため、俺は車両のドアを爪でガリガリ引っ掻いた。

「王様!」

 すぐさま側近たちが介抱するも、マルコは口も利けないほどに苦しんでいる。

「安心しろ。死なせはしない。三日後に城へ赴く。その時によき返事を期待しているぞ。ではさらばだ」

 魔王は一瞬にして姿を消した。

「ル、ルシウス、き、奇跡の、ち、力を、わ、わたしに……」

 震える手を差し伸べてマルコが助けを求めてきた。けど、ごめん。俺にそんな力はないんだ。

「早く医者を!」

 側近たちが騒ぐ。そうそう、俺なんかに頼るより、早く医者に診せた方がいい。

 ってことで、すぐ近くの村に住む医者に診せたけど、手の施しようがなくて、マルコは苦しむばかり。「死なせはしない」って魔王は言ってたけど、生死の境をさまよってる感じで、見てるこっちまで苦しくなってくる。

 その村医者を同行させて城へ戻り、国で最高の医療チームが治療にあたるも、それでも手に負えない。

 魔王軍が押し寄せて来るまで残り丸一日。その情報は、魔王が現われた時にいた側近たちの間で箝口令が敷かれた。

 そんなことが国民に知られたらパニックになること必至だから得策だろう。

 だから、何も知らない城中のひとたちは、普段通りの生活を送っていたんだけど、ちょうど俺たちが戻った時、メアリー失踪事件が勃発。そっちの騒ぎが段々と大きくなっていった。

「どうして見つからないの?」

 従者たちが城の中をくまなく捜しても見つからず、王妃はオロオロするばかりだ。

 当然、俺も捜索活動に参加した。愛しのメアリーちゃんの身に何かあったら大変だ。

 でも、心当たりのある場所を捜し回っても、どこにもその姿はない。ちょっとした手がかりすらない。

 おかしいぞ。ボート転覆事件の例があるから一概には言えないけど、基本的にメアリーは冒険心がいっぱいなタイプではない。ひとりで城の敷地外へ出るような大胆なマネはしないだろう……多分。

 ただ、何者かにさらわれた可能性はある。まさか魔王軍の仕業か? マルコを苦しめる目的なら、最愛の末娘の姿を消すのは効果絶大ではある。

 アーニャやタニアも加わって、城中に詳しいひとたちが熱心に捜し回っても見つからないんだ。その線が有力なのではないか。

 そんなことを考えながら、例の屋根の上で休憩をとっていた俺は、ふとタニアと庭師の老人のことを思い出した。

 よくよく考えてみても奇妙な組み合わせだ。

 ……待てよ。もしや、メアリーの失踪と何か関係があるんじゃないのか? 

 剣術の訓練でこのところ、タニアは特にメアリーにこてんぱんにやられていて、恨みが募っていたはずだ。

 とにかく湖畔を捜してみよう。屋根伝いに降りて行って小屋の方を目指した。

 窓の近くに薪の束が積まれていたから、その上に飛び乗って中を覗いてみた。

 一瞬、猿ぐつわをはめられて手足を縄で縛られたメアリーの姿が思い浮かんだけど、小屋の中にあるのは庭仕事の道具だけだった。

 俺の勘違いか。あらぬ濡れ衣を着せてすまんなタニア。

 心の中で謝罪しながら、薪の束の上から飛び降りた時だった。地中から微かに声が聞こえてきたような気がした。

 慌てて周りを見回しながら辺りをゆっくり歩くと、小屋の裏に枯れ木が重ねて置かれていることに気がついた。何だか怪しい……。

 枯れ木のすぐ横の地面に耳を押し当ててみると、

「……けて」

 確かに声が聞こえてくる。けど、猫の聴覚があればこそ聞き取れるってほどに微かな声だ。人間の耳では気づかないだろう。

 メアリーだ。メアリーが閉じ込められてるに違いない。

 誰かを呼んでくるか? いや、その前に枯れ木をどかして、メアリーを安心させてあげよう。

 人間の手だったら一瞬でどけられるぐらいの枯れ木しか置かれてないのに、一本一本口にくわえて運ばなきゃいけないのがもどかしい。

 五分程奮闘して、ようやく枯れ木を移動させると、地面にぽっかり穴が現われた。どうやら落とし穴らしい。中を覗くと、三メートルほど下に金髪の頭が見えた。

 頭上に光が差したことで、眩しそうに顔を上げたのはまさしくメアリー。落下した時に汚れたのか、顔やドレスは土塗れになっているものの、どうやら大きなケガはしてないようだ。

「にゃあ!」

 と呼びかけると、

「ルシウス、助けに来てくれたのね!」

 感激して笑顔を見せながら涙を流している。

 さて、発見したのはいいけど、猫の身では救出は困難だ。

「にゃあ!」

 ちょっと待ってて、というニュアンスを込めてひと鳴きしてから、俺は城の方へ向かった。

 猫語しか使えない俺が、どうやってあの小屋の裏まで人間を連れて行こうか。頭を悩ませながら駆けていると、一番会いたくない人物の姿が見えた。

 従者頭のルーベンスのジジイだ。休憩中なのか、湖畔に佇んで煙管を吸い、白い煙をプカプカと吐き出している。

 こんなひと気のない場所で俺を見つけたら、チャンスとばかりに暴力をふるってくるに違いない。危険からは回避。回れ右して別の道を走ろう。

 ……いや、待てよ。むしろ、俺への憎悪を利用してやればいいんだ。

 相手はジジイ。されど人間。走って捕まえられるギリギリの所まで近づいて、

「にゃあにゃあにゃあ!」

 盛大に泣き喚いて挑発してやった。

「チッ」

 と舌打ちするも、喫煙を中断して俺をとっちめてやろうとするほどには、イラ立たなかったらしい。

 そうかい、こっちはメアリーの命がかかってるんだ。追わぬなら追うまで待とうルーベンス。

 ってなわけで俺は、ルーベンスの堪忍袋の緒が切れるまでひたすら鳴きまくり、その場でぴょんぴょん跳ねて挑発してやった。

 努力が報われたのは約三十秒後。

 周囲に誰もいないことを確認したルーベンスは、

「このごく潰しが!」

 煙管を手にしたままいきなり走ってきた。

 よし来た! とばかりに俺は猛ダッシュで小屋の方へ。でも相手は足腰が弱りつつある中年だ。途中で追いかけるのを諦めないように、捕まえられそうで捕まえられない微妙な距離を保って走った。

 そうして、小屋の裏まで誘導することに成功。

「このごく潰しが……ハァハァ……」

 両膝に手を突いて上半身を折り、荒い呼吸をしながら俺を睨みつけるルーベンスだったけど、ぽつんと地面に座る俺の背後に穴があるのを見て、「何だ?」とでも言うように眉毛を上げた。

「ルシウス!」

 枯れ木の覆いがなくなったことで、メアリーの声はルーベンスの耳にも届いたらしい。

「まさか、メアリーお嬢様ですか?」

 即座に忠臣ルーベンスの表情に戻り、穴に駆け寄ってきてメアリーの姿を見つけると、驚きで目を見開いた。

「メアリーお嬢様、どうしてこんな所に?」

「タニアお姉様と剣術の特訓をしていたら、落ちてしまったの」

 はい、タニアの陰謀論が確定しました。

「タニアお嬢様はなぜ……?」

 このことをみんなに知らせなかったのかと、ルーベンスは疑問を抱いてるらしい。俺が脇に移動させた枯れ木を見て、穴の中に視線を戻した。

 まあ、それについては後で考えればいいから、まずはメアリーを助けようぜ。ひとりじゃ無理なら応援を呼びに行くなり、さっさと行動してくれよな。

 そう訴える目で見上げていた俺の首根っこを、ルーベンスはいきなり掴んでカラダを持ち上げてきた。

 やべっ、完全に油断してた。でも待てよ、メアリーの非常事態に何をするつもりだよ。……ルーベンス? 何だよ、その悪意に満ちた顔は!

「にゃにゃにゃにゃ!」

 俺は猛烈に鳴き叫び、ルーベンスの手から逃れるべくカラダを激しく動かした。

「お前さえいなければ、この国は安泰だ」

 いや、安泰なんかじゃなくて、すぐそこに魔王軍の危機が迫ってんだよ。王位継承問題とか気にしてる場合じゃないんだって。おい、ルーベンス、まさかのまさかだよな? 俺を落としたりし――

 まさかのまさかだった。

 ルーベンスが首から手を放し、晴れて自由の身になった俺はメアリーが待つ地中へと真っ逆さま。秋晴れの空と木の葉、逆光でシルエットになったルーベンスの姿がスローモーションで遠ざかっていく。

 俺は死を覚悟した。

 けど、よく考えれば猫って、屋根の上から落ちてもピンピンしてるよね。むしろ心配なのは下にいるメアリーだ。どうか、ぶつかってケガをしないようにと俺は祈った。

「きゃあっ!」

 メアリーの悲鳴がこだまして、背中に激痛。メアリーに直撃したのかと焦ったけど、ただ単に俺が落ちてきたことに驚いただけらしい。俺の背中に当たったのは壁だった。

 イテテテ……。

「ルシウス、大丈夫?」

 何とかね。人間だったら、打ち所が悪ければ死んでたかもしれないけど。

 そういった意味では、所々にすり傷はあるものの、大きなケガをした様子のないメアリーは不幸中の幸いだった。

 メアリーは俺のことをギュッと抱きしめてきた。カラダが小刻みに震えてる。

 穴の中は人ひとりが座れるぐらいの広さしかない。頭上を枯れ木で覆われてしまえば真っ暗だろう。こんな所にひとりぼっちなんて寂しすぎる。壁をよじのぼろうにも手がかりがなくて困難。控えめに言って絶望的な状況だ。俺だったら泣き喚くだろうな。

 どうやって脱出すればいいのかと見上げたら、恐らくルーベンスの仕業だろう。枯れ木が重ねられて、穴の中はどんどん暗くなっていく。

「助けて!」

 メアリーの声はルーベンスの耳にもしっかり届いてるはずだ。それでも、枯れ木を積む手を止めようとはしない。

「にゃあ!」

 やめろルーベンス! という憤怒の想いを込めて鳴いたけど、俺の気持ちは届かない。

 鼻と鼻がくっつきそうな距離でも、メアリーの顔がはっきり認識できないぐらい、視界が薄暗くなってしまった。

 息遣いが反響する。こんな所に数十分、いや、数分だけでもひとりきりにされたら発狂するかもしれない。

 前世での引きこもり暦はここでは何の役にも立たない。何も言わなくても配膳される三食とエロゲーがあってこそ、健全な自宅警備ライフが送れたんだ。

 ただ、誰とも会話をせず寂しい暮らしではあったけど。逆にここでは、メアリーが一緒にいてくれることが、せめてもの救いだ。

 いや、メアリーさえここに落ちてなければ、こんな目に遭うことはなかったのか。

 まあ、この際、そんなことはどうだっていいや。大事なのはここからどうやって出るかってことなんだけど……。

 メアリーの失踪発覚から半日あまり。ここを探し当てたのは俺だけだった。タニアと爺さんの不穏な行動を目撃してたっていうアドバンテージがあるとはいえ、他の奴らの捜索能力は当てにならない。

 ギュルルルル。

 腹の音が鳴る。俺のじゃない。メアリーの。十二時間近く、何も飲み食いしてないんだもんな。

「お腹すいたよぉ」

 鼻声になる。おーよしよし、泣かないで。俺はメアリーの頭を撫でてやった。

 でも、冗談じゃなく、このままだとふたりとも飢え死にする未来しか見えてこない。

 死んだら俺はどうなるんだろ? こことは違う世界に転生するのかな? そうなったらまた、親ガチャ運に恵まれる自信はあるけど、その前にひもじい思いをしてジワリジワリ苦しんで死んでいくのは嫌だ。

 意外によじのぼれたりしないもんかね? 

 俺は身をよじってメアリーの腕の中から出ると、壁に爪を立ててのぼってみた。

 あれ? 適度に固い土壁に爪がいい感じで刺さって安定するぞ。もしや、いけるのでは?

 ボロッ。

 自分の体長ほどの高さまでのぼったところで、急に土壁がもろくなってあえなく終了。俺は背中から地面に落下した。

 枯れ木の隙間から微かに射し込む陽の光が果てしなく遠くに見える。

「にゃあ」

 絶望的な状況の中で、俺の切ない鳴き声が空しく反響した。

 そういえば、子どもの頃にも同じシチュエーションになったことがあったっけ。イジメっ子たちがつくった落とし穴にはまった時だ。

 あの時は手を伸ばせば自力で脱出できる程度の穴だったけど、イジメっ子たちに上から放尿を浴びせられて、

「ここから出たらぶっ飛ばす」

 脅されて怖くて出られなかった。

 結局、どうして出たんだっけ?

 ……そうだ、助けてもらったんだ。近所に住む幼なじみに。活発な、少年みたいな少女だった。

 名前は何ていったっけ? 

 思い返してみれば、その時だけじゃなくて、他にもイジメっ子から守ってもらった記憶がある。

 情けないなぁ、俺って。いつも誰かに守られてばっかりじゃないか。まあ、そういう運に恵まれてるともいえるけど。

 でも結局、その子は小学校卒業と同時に引っ越して、中学に進学してからは俺を守ってくれる人間は誰もいなくなった。

 もしあの子があのまま傍にいれくれたら、俺の人生は変わってたかも。

 今頃、何してんだろうな。目鼻立ちはっきりしてたから美人になってるんだろうな。

 そんでもって自分の意見はビシバシ言う男勝りの性格だったから、バリバリのキャリアウーマンとして働いてるか、あるいはもう夫と子どもがいて家庭を築いてるかもしれない。

 泣き疲れてメアリーが眠ってしまってから、やることが何もなくなった俺は、普段は思い返さないような記憶を呼び起こしていた。

 結局のところ、ろくでもない人生を歩んできたって結論に至るんだけど。あの時こうしてればって後悔はするけど、たとえ今、その当時に戻ったとしても、きっと同じ行動しか取れないんだろうな。

 クラス中にイジメられてた暗黒期だった十四歳の時、必死にもがいていれば何か変わったのか? そうは思えないだ。

 でも今は、ここから脱出するためにどうにかしたい。せめてメアリーだけでも助けてあげたい。だってまだ十二歳なんだ。こんな寂しい場所で死ぬなんてあまりに不憫じゃないか。

 それに、姉ガチャ運には恵まれてなさそうだから、異世界転生した後が心配でもある。

 壁をよじのぼれないことはわかった。他にできることといえば鳴いて助けを求めることぐらいだ。

 城内には俺の他にも飼い猫が何十匹もいるから、人間を遥かに凌ぐ聴覚をもって俺の鳴き声に気づいてくれるかもしれない。ダメで元々、喉が嗄れるまで、命ある限り泣いてやるんだ。

 でも今はやめておこう。メアリーを起こしてしまうのはかわいそうだから。


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