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ハリガネベイスボウラーズ!  作者: 椎家 友妻
第一話 ゼロからのプレーボール
9/99

7 アメリカンサイズの待ち針

 ヤンキーと男子生徒は店の真裏の路地に居た。

そしてヤンキーが男子生徒に、(おど)す様な口調でこう言った。

 「なあ、金貸してくれや 」

 やっぱりカツアゲや。

こういう場面での『金貸してくれ 』は

『金寄こさんかいワレ 』と同じなんや。

マッタク、野球部でありながらカツアゲをするとは許されへん。

正直な所そのひ弱そうな男子生徒がどうなろうと知ったこっちゃないけど、

このヤンキーは黙って見過ごされへん。

自慢やないけど俺は腕っぷしには自身がある。

なので俺は何のためらいもなく、強い口調でヤンキーの背中にこう言った。

 「おい、ヤメたらんかい 」

 するとヤンキーは俺の方に振り向き、右の眉だけをつり上げてこう言った。

 「ああん?何やねんワレコラ? 」

 「俺の事はどうでもええねん。

それよりカツアゲなんてしょうもない事すんなや 」

 「ああん?誰がカツアゲしてるやって?

俺はただ、この兄ちゃんに金貸してもらおうとしてただけやんけ 」

 「それがカツアゲや言うとんねん 」

 「ちょっと電車賃借りるだけやっちゅうに。それでもあかん言うんかコラ 」

「電車賃なんか数百円のモンやろうが。

それを何でわざわざ人から巻き上げようとすんねん。交番に行けや 」

 「さっき駅前で赤い羽根に募金したらなくなってもうたんじゃ 」

 「何で電車賃まで寄付すんねん⁉

例えそうやとしてもまだ財布に何ぼか残ってるやろ⁉ 」

 「俺は財布に余分な金は入れへん主義なんじゃ。カツアゲとかが怖いから 」

 「その怖いカツアゲを今お前がしてるんやろうが! 」

 「アホ!だから違うって言うてるやろボケ!人をヤンキーみたいに言うな! 」

 「何処からどう見てもヤンキーやんけ! 」

 「誰がモンキーじゃ! 」

 「言うてないわい!ヤンキーやヤンキー!

それよりお前、野球部の人間やろ?

それやのにカツアゲなんてしょうもない事しくさって 」

 「あぁん?誰が野球部やねんコラ 」

 「お前やお前。その(かばん)と一緒に持ってる金属バットが何よりの証拠やないか 」

 「アホかお前、これの何処が金属バットやねん? 」

「あぁ?どう見ても金属バットやないか。

それが金属バットやなかったら一体何やねん? 」

 「待ち針 」

 「嘘つけぇっ!うぉおいっ!絶対嘘やろ! 」

 「ちょっと大きいサイズの待ち針 」

 「どんだけ大きいねん⁉糸より思いっきり太いやないか!」

 「アホ、アメリカやと待ち針はこのサイズやねんぞ? 」

 「アメリカイコール何でもデカイという発想はヤメろ! 」

 「という訳で、俺は実は手芸部なんや 」

 「嘘つけ!針穴に糸も通せなさそうな顔してるくせに! 」

 「お前の背中に小熊のアップリケを縫い付けたろうか⁉ 」

 「ヤメろや!俺にそんなファンシーなモンを縫い付けるな! 」

 「まぁ、俺が手芸部というのは嘘で、実は野球部なんやけどな 」

 「分ぁっとるわい! 」

 「俺の巧みな嘘にまんまと騙されおったな? 」

 「だああっ!うっとうしいやっちゃなマッタク!何やねんお前は⁉ 」

 「あぁっ!お前とこんなしょうもない言い合いしてたから

学校に遅れそうやないけ! 」

 「しょうもない事を言うてたのは全般的にお前やないか! 」

 「お前はどうしても俺が電車賃を借りるのを邪魔したいみたいやな 」

 「当たり前じゃ!お前みたいなおかしな輩に貸す金はない! 」

 「誰がおかしな輩じゃ!もうええわ!

学校まで走って行くわい!キンちゃん走りで 」

 「普通に走れや!そういう所がおかしいんやろがい! 」

 「お前の顔は覚えたからな。この仕返しはいつか絶対やったる! 」

「はいはい、もう分かったからさっさと自分の学校に行けや 」

 「覚えとけや! 」

 ベタな捨てゼリフを吐き、ヤンキーは去って行った。

キンちゃん走りで……。

出来る事ならもう二度と会いたくないやっちゃ。

と、心の底から思っていると、

 「あ、あのぅ……………… 」

 と、絡まれていた男子生徒が、おずおずとした口調で俺に話しかけてきた。



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