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ハリガネベイスボウラーズ!  作者: 椎家 友妻
第六話 対決!矢沙暮高校!中盤戦
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6 鎖に絡まる碇

 「おい!大丈夫かね君⁉しっかりしたまえ!」

 そんな俺に、球審のおっちゃんが心配そうに呼びかけ、続けてこう言った。

 「そんなに苦しいなら、私が人工呼吸をしてあげようか⁉」

 その言葉が満更(まんざら)嘘でもない様な気がした俺は、

体に残っている全てのエネルギーを振り(しぼ)って立ち上がった。

碇だけやなくて、世の中には結構そういう趣味の人が()るんやろうか?

そんな事を考えていると、当の碇が心配そうな顔で、

俺のところに駆け寄ってきた。

 「だ、大丈夫正野君⁉

…………ゴメン、僕が不甲斐ないばっかりに…………」

 「アホ、そんな事ないわい。それよりまだ一点差や。ここを(しの)げば何とかなる」

 「でも正野君、凄く辛そうだよ?もうベンチに下がった方が………」

 「アホか!今ここで俺が下がったら、

誰がキャッチャーすんねん⁉

ただでさえメンバーギリギリやのに!」

 「で、でも………………」

 「でもやない!さっさと自分の持ち場に戻れ!」

 取り乱す碇をピッチャーマウンドへ追い返した俺は、

再び自分の守備位置についた。

しかし碇にはああ言ったものの、実際かなり苦しいのは確かやった。

みぞおちの痛みで頭が回らへん。

そんな中、左バッターボックスに、四番のピッチャー花町が立った。

 「随分苦しそうやなあ。そんなんでちゃんとリード出来るんか?」

 さも愉快そうに花町は言う。

俺は出来るだけ平静を保ち、花町にこう返した。

 「苦しいも何も、あんなチビ助のタックルなんか、微塵(みじん)も効いてへんわい」

 それに対して花町。

 「まあどっちにしろ、お前のところのピッチャーはもうアカンみたいやけどな」

 ムカツクなぁこいつ。

碇のホンマの力はこんなモンとちゃうんやぞ?

本来の力さえ出せれば、

お前らなんかバットにボールをかすらせる事すら出来へんねんぞ?

本来の力さえ出せれば………本来の………。

 とにかくここは、初球からストライクを取りに行くのは危ない。

変化球のキレも極端に悪くなってるし、

ここはまず、外のボールゾーンに一球外して投げさそう。

 俺のそのサインを受け取り、セットポジションに入る碇。

二塁ランナーの佐吾の事は全く見ない。

あえて見ないというより、全く見えてないんやろう。

碇はそのまま左足を前に踏み出し、

花町への第一球を投げた。

が、外へ外すはずのその球が、

ストライクゾーンのど真ん中に飛んで来た!ヤバイ!

 カキィンッ!

 花町はその球を、目一杯の力でひっぱたいた!

バットの真芯で捕らえられたその打球は、

センターの扇多先輩の遥か頭上を越え、

外野のネットフェンスの中段に直撃した!

普通の球場やったらホームランやったのでまだ助かったが、

この間に二塁ランナーの佐吾が、三塁を回って一気にホームイン。

打った花町も三塁まで到達し、そこで大きくガッツポーズをした。

 これで一対三。

点差が二点に広がった上にまだノーアウト。

そしてランナー三塁。

 三塁側の矢沙暮高のギャラリーが一気に沸く。

 「おっしゃあっ!このままいてこましたれ(・・・・・・・)ぇっ!」

 「相手のピッチャーへばってるぞ!トドメ刺したれぇっ!」

 好き勝手な事を言うてくれるでマッタク。

碇は別にへばってるんやなくて、分からんくなっしもうてるだけや。

自分がどういう球を投げたらええのか。

答えは、自分でも分かっているはず。

でも、体が言う事を聞かへん。

今の碇は、全身を見えない鎖で縛られている様なモンや。

何とかその鎖から解き放ってやりたいけど、

どうすればええんや………………。



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