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ハリガネベイスボウラーズ!  作者: 椎家 友妻
第五話 決戦!矢沙暮高校!前半戦
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6 碇の立ち上がり

 碇の投球練習が終わり、矢沙暮高校の最初のバッターが、左の打席に入った。

 一番サード、有村(ありむら)

データは全くないので、一体どんなバッティングをしてくるのかは分からへんけど、

打ち気満々といった様子でバットを構えている。

三塁側の不良軍団のギャラリーから、彼への声援が飛んだ。

 「ぶっ殺せ有村ぁ!」

 「息の根止めたれぇっ!」

 何ちゅう過激な応援や(ここは昔のフジ○デラ球場か?)。

流石は有名不良校というところか。

しかしこっちも簡単にぶっ殺される訳にはいかんので、

せいぜい抵抗させてもらいまっせ。

 と言う訳で俺は、碇に初球のサインを出した。

まずは外角のシュートから。

左バッターの彼からすると、外のシュートは外に逃げる変化球となる。

これを際どいところに投げ、相手の出方を見る。

このバッターの雰囲気からして、

少々ボールのところでも、バンバン振ってきそうやけども。

 碇は俺のサインに頷き、大きく振りかぶって左足を前に踏み出し、

第一球を投げた。

球は俺の要求通りバッターの外角、ストライクゾーンギリギリのところ。

そこからシュート回転し、バッターから逃げる様に変化する。

見逃せばギリギリボールくさいところやったけど、

このバッターは思いっきり腕を伸ばし、この球を打った。

 カキィン!

 球足の速いゴロが、ショートの左(俺から見て)へ飛んだ!

それをショートのキャプテンが瞬時に反応してキャッチ!

無駄のない動きで正確にファーストに送球し、まずは先頭打者を打ち取った。

 流石キャプテンは守備が安定している。

内野ゴロを打たすなら、出来るだけショート方向に打たすようにせんとな。

 「ワンナウトワンナウトォ!」

 キャプテンが右手の人差し指を立てて皆に声をかける。

それに対して周りの皆が、

 「おーっ!」と声を返す。

なかなかええ感じや。

この調子でサクサクアウトを取っていこう。

しかし今のバッターのバッティング。

ボールゾーンやったのに、あんなに速い打球を飛ばしおるとは。

しかも、シュートボールでバットの芯を外したはずやのに。

もしあれがストレートやったら、外野まで持っていかれたんやろうか。

何にせよ、気の抜かれへん打線や。

 そんな矢沙暮高校の二番バッターは、セカンド、吉山(よしやま)

小柄で細身、パワーはなさそうやけど、足が速そうな感じがするな。

こいつも左打者やし、

三遊間にゴロを転がされると内安打にされる確立が高そうやから、

この打席は外の変化球でカウントを稼いで、

内角のストレートで凡フライを打たせたいところやな。

なので初球は、外のカーブのサインを出した。

 碇はそれに頷き、吉山に対する第一球を投げ込んだ。

外角へのカーブ。

吉山はこれを見逃した。

判定はストライク。

よし、じゃあ次は外のボールくさいところにストレート。

それに手を出してファールにしてくれるとありがたい。

俺はまた外へミットを構え、俺のサインを受けた碇は、

振りかぶってストレートを投げ込んだ。

ボールひとつくらい中に入ったか?

と思ったその時、吉山はその球をバントした。

 セーフティーバント!

 バントされた球は、勢いが完全になくなった状態でピッチャー前に転がった!

吉山はバットにボールが当たるか当たらないかのところで

既に一塁に向かって走り出していた!

予想通り足が速い!

そんな中碇はピッチャーマウンドから降り、

猛然と球に向かってダッシュしてきた!

吉山はあと五、六歩で一塁ベースに届きそうや!

このタイミングやと内安打か⁉

しかし碇は地面に転がった球を素手で掴み、

振り向きザマに一塁でミットを構える千田先輩をめがけ、

素早い送球を送った!

文字通り矢の様な送球が飛び、吉山がベースを駆け抜けるのとほぼ同時に、

碇の送球が千田先輩のミットに飛び込んだ!

判定は⁉

 「アウトォッ!」

 一塁塁審のおっちゃんは、右手を振り上げてそう叫んだ。

 まさに紙一重というプレーやった。

あんな足の速いランナーを出したらかなり厄介なところやった。

今のは碇の守備(フィール)動作(ディング)で取れたアウトやったな。

それにしても碇の奴、自分では意識してないかも知らんけど、

今の送球、さっきバッターに対して投げたストレートより速かったぞ。

そんだけ速い球投げれるんなら、俺に対しても投げて来いっちゅうねん。

 まあでもこれでツーアウト。

この回はこのまま三者凡退で終わりたいところや。

 「よっしゃツーアウトォッ!」

 右手の人差し指と小指を立てて俺が皆に呼びかけていると、

右のバッターボックスに、俺より一回り以上デカイ男が、ヌッと現れた。

三番キャッチャー、()()

見た目の迫力はウチの千田先輩にも全く劣らない。

しかも両腕はムキムキの筋肉に覆われていて、

見るからにパワーヒッターという感じや。

こういう打者に甘い球は禁物。

下手をすれば、あの馬鹿高い外野のネットフェンス

(四階の建物くらいあるやろうか?)

の上まで飛ばされそうやしな。

ここはうまくボール球を振らせて打ち取りたいところや。

という訳で、初球は打者の手元でストンと落ちるフォークボールでいく。

ホームベースの上でワンバウンドするくらいがええ。

 俺は碇にフォークのサインを出した。

碇は頷いて投球動作に入る。

するとバッターの佐吾は、バットのグリップにグッと両手の力を込めた。

こりゃあ打つ気満々やな。

少々のワンバウンドボールでも、思いっきり振ってくれそうや。

 そんな中碇は、佐吾に対する第一球を投げた。

球は真っ直ぐど真ん中のストライクゾーンに向かって飛んでくる。

それをめがけて佐吾はバットスイングを開始した。

しかし碇が投げたのはフォークボール。

ホームベースの手前で地面スレスレまで落下し、

その上を、佐吾のバットが物凄いスピードで空を切った。

 まずは初球をうまく振らせることが出来た。

それにしても何ちゅうスイングスピードや。

たとえ空振りでも、アレだけのスイングをされるとかなり怖いな。

碇のコントロールも安定してるし、ここはあと二球フォークを続けるか。

 俺はその後の二球もフォークを要求し、

佐吾はそのいずれもフルスイングで空振りをした。

三球目の球なんか、完全にワンバウンドボールやったけど、

それでも佐吾は何のためらいもなくバットを振りぬいた。

 全く何も考えずにバットを振り回してんのか、

それともストレート一本に決め付けて振ったのかは知らんけど、

このバッターにはフォークがかなり有効みたいやな。

 これで理想通りの三者凡退。

一回の表裏は、一対〇で張金高校がリードを奪った。

 しかし試合はまだまだ始まったばかり。

ホンマの戦いはこれからや!




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