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ハリガネベイスボウラーズ!  作者: 椎家 友妻
第五話 決戦!矢沙暮高校!前半戦
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2 碇のオネダリ

それにしても碇の奴は何処に()るんやろう?

いつもやったら頼みもせんのにつきまとってくるくせに。

と思いながら周りをキョロキョロ見回すと、

碇はベンチの奥に一人で座っていた。

俺はその碇の元へ歩み寄り、声をかけた。

 「よう、調子はどうや?」

 「あ、正野君。うん、調子は、いいと思うよ」と碇。

その言葉通り、碇はさほど緊張した様子もなく、

体調の方もまずまず良さそうやった。

でも問題は、その調子のよさを、投球の方に出せるかどうか。

例えどんなに凄い能力を持っていたとしても、

それを発揮するのを怖がって、半分もその能力を出されへんとしたら、

それは無いのと同じや。

そしてその能力を上手く引き出してやるのが俺の役目。

なので俺は碇に、あえて少し厳しい口調でこう言った。

 「ハッキリ言うて、今日の試合で勝てるかどうかは、

お前一人にかかっていると言うても過言やないからな」

 「そ、そんな事ないよ」

 「いーや、ある。今から対戦する矢沙暮高校は、

メンバーが多少入れ替わったとはいえ、

去年の大阪大会でベスト8に残った強豪。

その実力は伊達(だて)やないはずや。

ウチの先輩達には悪いけど、今の実力では、全く歯が立たん相手やろう。

正直俺も不安や。

いくら中学でそこそこの成績を残したとはいえ、

それが高校生相手に通用するかどうかは分かれへん。

でもそんな中、ウチのチームで唯一相手チームより勝っているのがピッチャー。

つまり、お前や」

 「そ、そんな事、ない……」

 「いーや!ある!この前お前が河川敷で投げとったあのボール。

あれがあれば、相手が大阪ベスト8、いや、全国のベスト8でも通用するはずや!」

 「そ、そんな事………………」

 「あるっちゅうに!俺を信じろ!

お前は今の時点でも充分甲子園で通用する投手や!

ただし、その力を百パーセント発揮できたらの話やけどな!」

 「う、でも僕、もうあの頃みたいな球は………………」

 「やかましい!とにかく今日は絶対に勝たなあかんのや!

このグランドをあいつらに渡さん為、

そして、このチームで本気で甲子園を目指す為!」

 「わ、分かったよ………………」

 「ようやく分かってくれたか」

 「じ、じゃあ、もしこの試合で勝ったら………………」

 「おう、勝ったら、何や?」

 「僕と………その………デート………してくれる?」

 「………でぇと?………男の俺と、男のお前が………」

 「そ、そうすれば僕、試合で本来の力が発揮出来るような気がする!」

 碇は真剣そのものの眼差しでそう言った。

さてどうしよう。まさかこんな事を言い出すとは………

いや、でもデートと言うても、

つまりは何処かに一緒に遊びに行くってだけなんやし、

その組み合わせが男同士になったところで、何も問題はないはずや。

要するに男のツレと遊びに行くだけなんやから。

まあ、こいつのやる気が出るんなら、それくらい別にええか。

投手のやる気を引き出すのも、捕手の務めでもあるんやし。

ただし、俺は決してそっち側の人間ではないからな。

それだけはここで断言しておく。

その事を踏まえた上で、俺は碇にこう言った。

 「わ、分かった。もしこの試合で勝てたら、どっか一緒に遊びに行こうか」

 「ホントに⁉やったぁっ!よぉし!頑張るぞぉっ!」

 碇は気合満々でガッツポーズをした。

それに対して俺は、この試合、別に負けてもええかなと、

少しだけ思い始めていた。まあ、冗談やけど。

 そんな中、いよいよ試合開始の時間となった。

 さあ、張金高校対矢沙暮高校、勝つのは、DOTCH(ドッチ)




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