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ハリガネベイスボウラーズ!  作者: 椎家 友妻
第四話 エース復活?
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63/99

8 ぽすぅっ

碇の右手から放たれたボールは、超が付くくらいのスローボールやった。

スピードも勢いも変化もなく、

ただ山なりの軌道を描いて俺のミットに向かって飛んでくる。

例えて言うなら、

野球なんか一度もやった事のないようなアイドルの女の子が、

プロ野球の始球式なんかで投げるボールや。

まあ碇のボールは一応ノーバウンドで俺のミットに入ったけど、

その音も、『ぽすぅっ』という何とも情けない音やった。

これやったらむしろ、

さっきキャッチボールをしてた時の方がまだ速いくらいやった。

 う~む、これが今の時点での精一杯の球やとしたら、

これは思ったより重症やな。

いや、この場合は前向きに、

座ったキャッチャー相手にボールを投げられただけでも、

ヨシとするべきか。

 そんな中、その辺の碇の事情を承知している先輩達は、

口々にフォローの言葉を碇に言った。

 「凄いやん!今、ちゃんとボールが前に飛んどったで!」

 「ホンマホンマ!予想以上に速かったし!

今ので百六十キロくらい出とったんとちゃう?」

 「そうやな!今のはボールが速すぎて逆に遅く見えたんやな!」

 出来ればもう少しマシなフォローをして欲しかった。

俺がとりあえず碇の元へ駆け寄ると、

碇は俯きながら申し訳なさそうに言った。

 「ゴメン正野君………今は、これが精一杯なんだ…………」

 「ああ、まあええがな。

とりあえずはキャッチャーに向かってボールを投げられたんやし。

あとは数をこなして、

時間をかけて本来の球が投げられる様になったらええがな」

 「………うん、ありがとう」

 碇はそう言って頷いたが、

その背後で、ライトで市長の息子の山下先輩が、

不安げな声でこう呟いた。

 「でも、試合まであと、三日しかないんだよねえ………」

 あと三日。

その残された時間は、今の俺達にとってあまりにも短い時間やった。



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