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3 好きな漫画はマ○レードボーイと○近所物語
「オドレが松山碇やな?」
「は、はいっ!そうです!」
震え上がりながら碇がそう答えると、
千田先輩はゆっくりとそちらへ歩み寄って行き、
碇の前の席にドカッと横向きに腰掛けて足を組んだ。
そして千田先輩は怖い顔から一転して優しい顔になり、
(それはそれで怖いが)
碇の肩をポンポン叩きながらこう言った。
「そないに怖がらんでもええがな。
俺らは君にちょっと話があるさかいに、ここに来ただけなんやから」
「は、はぁ………………」
若干落ち着いた様子で頷く碇。
成程、まずは相手の警戒心を少しでも和らげる事から始めるんやな。
それやったら最初にあんなにビビらす必要もない気がするけど。
まあそれはともかく、千田先輩は親しみを込めた口調で続けた。
「俺は野球部で二年の千田銅次郎。
好きな漫画は『マ○レードボーイ』と『○近所物語』や。よろしく」
あんさん少女マンガが好きなんでっか⁉
と俺はよっぽどツッコミたかったが、
碇はその事については何も言わず、目を丸くしてこう言った。




