13 感動のシーン
「碇………………」
葉瀬君は呟く様に言い、ゆっくりと碇の傍に歩み寄った。
そして碇の隣にしゃがみこみ、泣き震えるその肩に、
そっと手を置いた。
そして、とても優しい声で言った。
「碇、もう泣くなって。俺、お前の事を恨んだりしてないから」
「うぅ………………で、でも………………」
「いいんだよ、もう何もかも終わった事だ。
僕はな、碇。
お前にこんな所で立ち止まって欲しくないんだ。
こんな事で野球を辞めて欲しくないんだ。
これからも野球、続けて欲しいんだよ。
僕の為にも、な」
「う………う…………葉瀬君の、為…………」
「そうだよ。僕はな、お前の才能の凄さを誰よりも知ってる。
高校に入っても、
全国でトップクラスにのピッチャーになるって確信してるんだよ。
そんなお前は、僕の自慢であり、誇りなんだ。
だから、お前が野球を続けてくれる事が、
僕にとっては何より嬉しいんだよ」
「は、葉瀬君………………」
「碇………………」
互いの名を呼んで見詰め合う二人。
そして二人でガシッと抱き合った。
うんうん、ええシーンやね。
まさに男の友情って感じやな。
こういう熱い展開、わしゃあ好きでっせ。
と、心の中で拍手を送っていると、
熱い抱擁を終えた二人は、ゆっくりと体を離した。
さて、とりあえず一件落着かな?
と思ったら、葉瀬君は碇に、
「ところで」
と言った。




