2 選手宣誓の悪い例
ホームベース付近に設置された舞台に、選手代表の高校球児が上がり、
右手を上げ、選手宣誓を始めようとした。
しかし余程緊張してるんかして、
なかなか最初の言葉が言い出されへんみたいやった。
もしかして、あまりの緊張で、宣誓の言葉が全部飛んでしもうたんちゃうか?
と、ちょっと心配になっていると、ようやく思い出したかの様に、
その球児は力一杯の第一声を発した。
「おぃっす! 」
お前はドリフのチョーさんか。
しかしそいつは全く構う事なく続けた。
「先生に、宣誓!」
そういうダジャレはええから。
「カメハメハ大王!あ、違った。ワレワレハ!」
絶対ワザとやろそれ。
大王まで言うてしもうとるやないか。
「スポーツマンシップにうっとり!」
則れよ。
「正々堂々と闘う事を―――――――――」
ちゃんとせぇよマッタク。
「誓ったっても、ええけど?」
いや誓えよ!
何で思いっきり上から物言うとんねん⁉
高校球児はもっと謙虚な姿勢を見せんとあかんやろ⁉
何をムチャクチャな宣誓をやっとるんじゃ⁉
俺が心の中で怒りに震えていると、
俺の前に立ってプラカードを持っていたお姉さんが、
やにわにそれを俺の方にひっくりかえした。
普通ならそこには、出場校の名前が記されているはずやけど、
そのプラカードにウチの学校名は書かれてなくて、
代わりにこう書かれていた。
『ドッキリ、大成功!』
え~っ⁉
これって全部、ドッキリやったんかーっ!