5 伊予美の前ではやっぱり緊張する
昼休み後の五時間目の授業が終わり、俺は足早に教室を出た。
向かう先は一年一組の教室。
目的の人物は、伊予美、じゃなくて、
元尖志川中学のセカンドやった、小暮。
守備が上手くてバッティングもしぶとく、
敵に回すと何とも厄介な奴やった。
しかし、それ以外の事は何も知らない。
あいつも強豪校で充分レギュラーを張れる実力があるはずやのに、
何でこんな弱小校に入学してるんや?
まさかあいつも碇と一緒で、野球を辞めてしもうたんやろうか?
まあそれも、もうすぐ分かるんやろうけど。
とか考えてる間に、俺は一年一組の教室の前に辿り付いた。
入口の所でひとつ深呼吸する俺。
他所のクラスの教室に入るのって、結構緊張してしまうんよね。
知り合いも殆ど居らんし。
そんな事を考えていると、中から入口の引き戸がガラッと開けられ、
そこから一人の女子生徒が姿を現した。
そして何と、その女子生徒は伊予美やった。
「あ、昌也君や~」
俺に気づいた伊予美は、いつもののんびりした口調でそう言った。
「や、やあ」
それに対し、ぎこちない笑みを浮かべる俺。
う~む、付き合いは短くないはずやのに、
彼女を前にすると、どうしても緊張してしまう。
そんな俺の心中なんか全然知らんであろう伊予美は、ニパッと笑って続けた。
「同じ学校に入学出来たのに、別々のクラスになってもうたねえ」
「そ、そうね」
そ、それは、一緒のクラスになれなくて残念という意味やろうか?
その辺り、詳しく知りたいぜ伊予美サン。
「ところで、ウチのクラスに何か用?」
どうやら残念という気持ちは露もない様や。
いやいや、今はそれが本題やない。
俺は伊予美に言った。




