4 耳より情報
「耳寄りな情報って、何やねん?」
「聞きたい?」
「そこまで言うたんなら教えろや」
「え~?それが人に教えを請う態度なん~?」
「何やねん⁉一体どうしろっちゅうねん⁉」
「お手」
「何がや⁉」
「とりあえずヤマちゃんがあたしにお手してくれたら、
教えてあげてもええよ~?」
「な⁉お、お前なぁ!」
キャプテンと鹿島さんは、すっかり戦闘態勢に入ってしまった。
というより、鹿島さんが一方的にキャプテンをおちょくってると言うた方が正確か。
それにしても鹿島さんは、一体ここに何しに来たんやろう?
と素朴な疑問を感じていると、俺の右手前に居た部員さんが、
俺の事をチョイチョイと手招きしていた。
やたら黒くてツヤのある髪を、
耳が隠れるくらいまで伸ばしているこの人は、
前髪も目が隠れるくらいまで伸ばしていて、
なんとも表情が読み取りにくい人やった。
その人の所に、俺は腰を屈めて少し顔を近づけた。
するとその人が、声を潜めて話しかけてきた。
「僕の名前は向井富一、二年。ポジションはレフト。趣味は野球。
昨日の君の熱い叫びには感動したよ、これからよろしく」
「あ、ど、どうもよろしくお願いします」
ペコリと俺が頭を下げると、向井先輩は声を潜めたまま続けた。
「入部早々騒がしくしてごめんね?
鹿島さんが来ると、いつもキャプテンとあんな感じになっちゃうんだよ」
「完全にキャプテンをおちょくってますよね。
彼女はここに喧嘩を売りに来たんですか?」
「いや、むしろ逆。彼女はキャプテンに、構ってもらいたくて来てるんだよ」
「へ?」
「彼女はキャプテンの事が好きだからね」
「え?そうなんですか?
え、でもそんな事、新入部員の俺に言っちゃっていいんですか?」
「ここの皆も知ってるからね。知らないのはキャプテンと、鹿島さん本人だけ」
「自分でも気づいてないってやつですか?」
「だろうね。こういうのも『恋は盲目』って言うのかな」
「ですかね?」
「それにしても、鹿島さんが持ってきてくれた耳よりな情報ってのが気になるね。
ちょっと訊いてみようか」
独り言の様にそう呟いた向井先輩は、
鹿島さんに向かって声を普通の大きさに戻して訊いた。
「ねえ鹿島さん、耳寄りな情報って、一体何なの?」
そんな風に訊いて、簡単に教えてくれるんかいな?
と思っていると、
「今年この学校に、中学時代に全国大会に出場した子が、
三人くらい入学したらしいねん」
鹿島さんはあっさり教えてくれた。




