3 新聞部員がやって来た
「張高野球部の諸君!おっはよーっ!」
という、やたらハイテンションでカン高い声が入口の方から聞こえたかと思うと、
その直後に「パァン!」というパーティークラッカーの音が、
やかましく鳴り響いた。
一体何事かとそっちの方に振り向くと、
栗色の髪をポニーテールにした一人の女子生徒が、
満面の笑みを浮かべて立っている。
その人物を見て、俺は思わず口走った。
「誰?」
するとその女子生徒はすかさず口を開いた。
「あたしは新聞部二年の鹿島栞!
今日は創部以来の対外試合百連敗を決めた張高野球部を取材しに来ました!
あ!そういう君は昨日グランドで目一杯叫んでた新入部員君やね⁉
あれはなかなかカッコ良かったよ!これからよろしくね!」
そこまで一気にまくしたてられた俺は、
「は、はぁ………………」
と返すのが精一杯やった。
何ちゅうハイテンションなお人や。
お通夜みたいやったこの部屋の空気がいっぺんに変わったやないか。
というても、他の人らは暗いまんまやけど。
そんな中鹿島さんは、キビキビとした足取りでキャプテンの元へ歩いて行った。
「やっほーヤマちゃん!取材に来たよ!」
元気一杯に言う鹿島さんに対し、キャプテンはげんなりとした表情でこう返した。
「お前の取材なんか受けとうない。とっととここから出て行ってくれ」
キャプテンと鹿島さんは元々知り合いなんやろうか?
見た所キャプテンは鹿島さんの事を、
えらいうっとうしがってるみたいやけど。
しかし鹿島さんはそんなキャプテンの態度に何ら怯む事なく、
テンション全開でこう続けた。
「んもぉ、相変わらずイケズやなあヤマちゃんは。
そんな事やと女の子にモテへんで?あ、元々モテへんって?
あははー、そいじゃあ早速取材に移るわな」
「移るな!」
鹿島さんの超が付く程のマイペースぶりに、
さすがのキャプテンも声を荒げる。
しかし鹿島さんはペンとメモ帳を取り出し、構わず取材を開始した。
「えーと、そいじゃあとりあえず、創部以来の対外試合百連敗を、
しかも小学生の低学年チームを相手に達成した率直な感想を聞かせてください」
マスコミの人はあれくらいずうずうしくないと務まらんのやろうか?
それに対してキャプテンは率直な感想を言った。
「ほっとけ!」
そらそうやわな。
しかし鹿島さんはキャプテンの言葉をメモしながら尚も続ける。
「なるほど、『ほっとけ』っと。
で、次の対戦相手はもう決まっているんですか?」
「まだや!ていうかさっき部員が二人辞めてもうたから、
試合も出来へん状態や!」
とキャプテン。
すると鹿島さんは、妙にニヤついた笑みを浮かべた。
「何をニヤついとんねん?
ウチの部がボロボロなんがそんなに嬉しいんか?
嫌な女やなホンマに!」
「へぇ~、あたしにそんな事言うんや~。
せ~っかくヤマちゃん達に耳寄りな情報を持って来てあげたのに~」




