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ハリガネベイスボウラーズ!  作者: 椎家 友妻
第一話 ゼロからのプレーボール
16/99

14 結果発表と、昌也の啖呵

 そして、それから約二時間後、

球審の『ゲームセット!』のコールを以て試合は終了し、

グランドは、周りのギャラリーの歓声に包まれた。

その歓声は全て、張高野球部ナインに向けられたものやった。

そして沸き起こる張高コール。

 「ハ・リ・高!ハ・リ・高!」

 更にそこに拍手も混ざり、グランドはもはや騒然となっていた。

それではそろそろ、気になる試合結果をお知らせしよう。

 張金高校野球部対、みちのくベースボールクラブ(相手チームの名前)の試合は、

 八対六で、張金高校野球部が・・・・・・


 負けちゃいました!

 

 『わぁああああっ!』

 再び沸き起こる大歓声。

そう、この歓声は、張高野球部が小学生チームを相手に、

創部以来の百連敗を達成してしまった事へのそれやった。

バッターボックスの中では、

皮肉にも最後のバッターとなってしまったキャプテンが、

がっくりと(ひざ)をついて項垂(うなだ)れている。

そしてほかの張高ナインも、ベンチの中で悔しそうに頭を抱えていた。

 そんな中、校舎三階の窓から垂れ幕が下りてきて、そこにこう書かれていた。

 『祝!張高野球部百連敗!』

 馬鹿にされとる。

完全に馬鹿にされとる。

周りのギャラリー達も、試合に敗れた張高ナインの面々を前に、

ゲラゲラと笑っていた。

 まあ確かに、小学生の、

しかも低学年のチームに高校生のチームが負けたっちゅうのは、

笑われてもしゃあないのかも知らん。

しかしそんな中、俺の心の中では怒りの炎がフツフツと燃え上がっていた。

 だって腹が立つやないか。

相手が何処であれ、、試合に負けてヘコんでるんやで?

勿論ワザと負けた訳でもない。

小学生の低学年相手に、メッチャ本気で戦って負けたのや。

それを、同じ高校の生徒が、本来味方のはずの人間が、

笑い倒すとはどういう事じゃいっ⁉


「笑うなぁっ!」


グランドに、ギャラリーの歓声を(しの)ぐ叫び声が響き、

その直後にグランドは、一転してシィンと静まり返った。

叫び声を上げたのは俺。

気がつけばグランドの真ん中に走り出て、

ギャラリーに向かってそう叫んでいた。

それ程に今の俺は怒りに燃えていた。

そして怒ったついでに、こう口走った。

 「お前らそうやって笑い倒してるけどな!

俺はこのチームで甲子園を目指すんじゃ!

そして絶対甲子園に出たるからな!」

 と、そこまで言った所で、俺はようやくハッと我に返った。

一方俺の啖呵(たんか)が余程効いたのか、ギャラリー達は誰一人口を開かなかった。

と、思ったら、

 「ぎゃーっはっは!」

 と、さっきよりもデカイ声で笑い出した。

 「あのへぼチームで甲子園出場やって!」

 「あいつ新入部員か?

もしかして、まだ野球のルールも知らんのとちゃうか?」

 「ハッタリをかますのにも限度っちゅうモンがあるで!」

 笑い声の中から浴びせられる侮辱の言葉。

(はらわた)が煮えくり返るのを通り越し、それが蒸発する程に悔しい。

せやけど今は、両拳を握り、唇を噛み締め、

ただひたすらに耐えるしかなかった。

これ以上言い返すには、実際に結果を出すしかないんや。

 絶対に見返したる。見とれよお前ら。

 今回の試合に俺は出場せんかったけど、

負けた悔しさは,キャプテン達となんら変わりはない。

俺ももう、張高野球部の一員なんや。

このチームに入ったからには、必ずこのチームで甲子園に出場してみせる。

俺らを笑いモンにしたあいつらを見返す為、

そして、伊予美を甲子園に連れて行く為。

 中学時代の実績なんか関係ない、

全くのゼロからのスタートやけど、

俺はこのチームで甲子園に行くと決意した!



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